文献情報
文献番号
202327026A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児の障害児サービス利用に係る医療受診の現状把握及び発達支援の必要性の判定のためのアセスメント方法の確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1701
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
内山 登紀夫(福島学院大学 )
研究分担者(所属機関)
- 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
- 宇野 洋太(大正大学 カウンセリング研究所)
- 稲田 尚子(大正大学 臨床心理学部)
- 川島 慶子(福島学院大学 福島子どもと親のメンタルヘルス情報・支援センター)
- 下野 九理子(大阪大学 大学院連合小児発達学研究科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
発達障害の支援においては地域資源の活用を前提に発達障害児と保護者の支援ニーズを適切に評価し、障害児サービスの受給決定を行うことが必要である。受給の条件として医師の診断書提出を求めている自治体も一定数あり、受診待機の要因の一つになっている可能性もある。障害児サービスの受給決定の基準は地域、自治体により多様である。
発達障害の子どもは生来性の認知障害のために障害特性に配慮した育て方や教育、すなわち合理的配慮の提供が必要である。発達障害の子どもの発達支援は、障害特性や子どもの置かれた環境から生じうる不利益をアセスメントし、障害特性から生じうる子どもの負担を最小限にし、子どもと、その養育者のウェルビーイングを高め、子どもの社会的包摂を目指すことである。
本研究では、(1)発達障害児が障害児サービスを利用するに際しての受給決定の要件の実態を明らかにすること、(2)受給決定を担当する自治体職員などが、発達障害児が障害児サービスを利用する必要性を判定できるアセスメント方法の開発、(3)自治体が発達障害児の障害児サービスの必要性を適切にアセスメントするための手引きを作成することを目的とする。
我々はこれまで行った二つの厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(令和2年度)「障害児支援の質の向上を図るための各種支援プログラムの効果検証のための研究」及び「障害児相談支援における基礎知識の可視化のための研究」を実施してきた。その結果、子どもの障害特性や適応行動をどのように相談支援専門員がアセスメントするかの具体的方法を障害児相談支援サポートブックで提案した。
本研究では、これらの研究成果を踏まえ、障害児サービスのニーズ判定のためのアセスメントとして、課題の趣旨に応じて受給者証発行を担当する自治体職員等が子どもの障害特性・適応行動に加えて地域および家族のアセスメントを包括的かつ簡便に実施できる方法を開発する点にある。
発達障害の子どもは生来性の認知障害のために障害特性に配慮した育て方や教育、すなわち合理的配慮の提供が必要である。発達障害の子どもの発達支援は、障害特性や子どもの置かれた環境から生じうる不利益をアセスメントし、障害特性から生じうる子どもの負担を最小限にし、子どもと、その養育者のウェルビーイングを高め、子どもの社会的包摂を目指すことである。
本研究では、(1)発達障害児が障害児サービスを利用するに際しての受給決定の要件の実態を明らかにすること、(2)受給決定を担当する自治体職員などが、発達障害児が障害児サービスを利用する必要性を判定できるアセスメント方法の開発、(3)自治体が発達障害児の障害児サービスの必要性を適切にアセスメントするための手引きを作成することを目的とする。
我々はこれまで行った二つの厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(令和2年度)「障害児支援の質の向上を図るための各種支援プログラムの効果検証のための研究」及び「障害児相談支援における基礎知識の可視化のための研究」を実施してきた。その結果、子どもの障害特性や適応行動をどのように相談支援専門員がアセスメントするかの具体的方法を障害児相談支援サポートブックで提案した。
本研究では、これらの研究成果を踏まえ、障害児サービスのニーズ判定のためのアセスメントとして、課題の趣旨に応じて受給者証発行を担当する自治体職員等が子どもの障害特性・適応行動に加えて地域および家族のアセスメントを包括的かつ簡便に実施できる方法を開発する点にある。
研究方法
1)インタビュー調査
自治体調査:人口規模で4つのカテゴリーに分け、バランスが等しくなるよう、縁故法にて協力自治体を募集。参加した自治体は12。
事業所調査:児童発達支援センター、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所、相談支援事業所を対象として縁故法により募集。参加した事業所は17。
利用者調査:障害児通所支援サービスを利用する保護者および/または本人。参加した利用者は9名。
インタビューとその内容:半構造化面接で実施され、受給者証発行までの一般的プロセスと平均期間、支給日数の判断基準、受給者証発行プロセスの良い面と課題、受給者証発行に関して医療機関に期待すること、研究班作成のマニュアルに記載してほしいこと、などについて尋ねた。
2)自治体へのWeb調査
e-Statより抽出した日本全国の対象自治体(東京都区部を含む)1,741について、地方公共団体の区分に沿って、①政令市及び特別区、②人口20万人以上の中核市、③人口20万人未満の市、④郡部の町村に分け、41の自治体から回答が得られた(回収率21.8%)。
3)利用者へのWeb調査
対象は令和4年以降に受給者証を初めて発行され、障害児通所支援サービスの利用を開始した発達障害のある当事者またはその保護者とした。
ソーシャルネットワークサービスを利用して、Webアンケートにて回答を求めた。202名の協力が得られた。
自治体調査:人口規模で4つのカテゴリーに分け、バランスが等しくなるよう、縁故法にて協力自治体を募集。参加した自治体は12。
事業所調査:児童発達支援センター、児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所、相談支援事業所を対象として縁故法により募集。参加した事業所は17。
利用者調査:障害児通所支援サービスを利用する保護者および/または本人。参加した利用者は9名。
インタビューとその内容:半構造化面接で実施され、受給者証発行までの一般的プロセスと平均期間、支給日数の判断基準、受給者証発行プロセスの良い面と課題、受給者証発行に関して医療機関に期待すること、研究班作成のマニュアルに記載してほしいこと、などについて尋ねた。
2)自治体へのWeb調査
e-Statより抽出した日本全国の対象自治体(東京都区部を含む)1,741について、地方公共団体の区分に沿って、①政令市及び特別区、②人口20万人以上の中核市、③人口20万人未満の市、④郡部の町村に分け、41の自治体から回答が得られた(回収率21.8%)。
3)利用者へのWeb調査
対象は令和4年以降に受給者証を初めて発行され、障害児通所支援サービスの利用を開始した発達障害のある当事者またはその保護者とした。
ソーシャルネットワークサービスを利用して、Webアンケートにて回答を求めた。202名の協力が得られた。
結果と考察
本研究班の主な課題は、発達障害児を対象に、医療機関の受診の実態も含めた障害児支援の受給者証の支給決定プロセスの現状把握と課題の抽出、支援決定のための方略の検討である。自治体、利用者(保護者)、障害児通所支援事業所・障害児相談支援事業所・発達支援センター等の事業所を対象にインタビュー調査を実施し、また自治体と利用者に対して全国規模のWebアンケート調査を行った。特に医療機関の診断書の提出の必要性の有無および受給者証発行がどのように行われているかについて検討した。
その結果から、受給者証の支給決定プロセスが混沌としている実態が明らかになった。自治体によって支給日数の決定基準が異なり、専門家による発達支援の必要性のアセスメントがほとんど行われていないことが課題として挙げられた。また、医師による診断・アセスメントが質量ともに担保されず、初診までの待機の時間が長期間に及ぶケースもあり、早期支援の観点から診断前支援が必要と考えられた。
その結果から、受給者証の支給決定プロセスが混沌としている実態が明らかになった。自治体によって支給日数の決定基準が異なり、専門家による発達支援の必要性のアセスメントがほとんど行われていないことが課題として挙げられた。また、医師による診断・アセスメントが質量ともに担保されず、初診までの待機の時間が長期間に及ぶケースもあり、早期支援の観点から診断前支援が必要と考えられた。
結論
今後はこの実態を踏まえ、自治体の全数調査により、各自治体の支給決定プロセスの実態把握を行い、利用者に分かりやすい制度・手続きにしていく必要がある。
とりわけ医療受診をめぐっては、待機期間の長さが社会問題にもなっており、早期支援の観点から診断前支援が必要と考えられた。一方で、医療機関・専門家による診断・アセスメントは、支援と並行して実施されていくべきである。
とりわけ医療受診をめぐっては、待機期間の長さが社会問題にもなっており、早期支援の観点から診断前支援が必要と考えられた。一方で、医療機関・専門家による診断・アセスメントは、支援と並行して実施されていくべきである。
公開日・更新日
公開日
2024-08-02
更新日
-