文献情報
文献番号
202327024A
報告書区分
総括
研究課題名
地方公共団体の児童虐待死事例の検証結果における再発防止策等の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1501
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
増沢 高(社会福祉法人横浜博萌会 子どもの虹情報研修センター )
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 浩之(立正大学 社会福祉学部)
- 伊藤 嘉余子(大阪公立大学 現代システム科学研究科)
- 井出 智博(北海道大学大学院 教育学研究院)
- 満下 健太(静岡大学 未来創成本部)
- 白井 祐浩(志學館大学 人間関係学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 満下健太
早稲田大学(令和5年4月1日~令和5年7月31日)→静岡大学(令和5年8月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
地方公共団体が行った虐待による死亡事例に関する検証報告書には、死亡に至った課題や取り組みの改善策等の提言が示されているが、長年に渡って繰り返し指摘させる課題や提言がある。本研究は、それらが指摘され続けている理由や解決できない障壁を明らかにし、地域の児童虐待防止対応における有効な改善策を見出すことを目的とする。
本研究は、以下の3段階で進める。
第1段階:国および地方公共団体による死亡事例に関する検証報告書や死亡事例に関する先行研究等の分析を通して、対応上の課題等を整理する。
第2段階:児童相談所と市町村の実務経験者(10年以上)に半構造化面接を行い、現状課題と改善が進まない背景要因と解決策について仮説を見出す。
第3段階:第2段階を踏まえて児童相談所と市町村に質問紙調査を行い、背景要因を明らかにし、解決策を提示する。
本年度は、第1段階の研究を行った。
本研究は、以下の3段階で進める。
第1段階:国および地方公共団体による死亡事例に関する検証報告書や死亡事例に関する先行研究等の分析を通して、対応上の課題等を整理する。
第2段階:児童相談所と市町村の実務経験者(10年以上)に半構造化面接を行い、現状課題と改善が進まない背景要因と解決策について仮説を見出す。
第3段階:第2段階を踏まえて児童相談所と市町村に質問紙調査を行い、背景要因を明らかにし、解決策を提示する。
本年度は、第1段階の研究を行った。
研究方法
テーマ1:、国の検証委員会の報告書および児童相談所虐待による死亡に関する研究等(J-Stage、COREを用いたキーワード検索、JaSPCAN学術雑誌、子どもの虹情報研修センター研究報告書等)を分析する。とりわけ、これらの報告、研究の中で述べられている課題や提言等に焦点を当てて分析した。
テーマ2:イギリスおよびアメリカの児童虐待死亡事例を検証した文献について、Scopusを用いて検索、収集し、英米各国の児童虐待死亡事例の背景や特徴を把握するとともに、共通して、あるいは繰り返し指摘されている内容を分析、整理した。
テーマ3:2008年度から2022年度までに報告された地方公共団体による児童虐待死亡事例検討報告書を対象にした包括的な分析を行った。第1研究として,これらの検証報告書について,虐待種別や関与した機関,加害者の年齢や立場,被害児童の年齢や性別等をコード化し,量的分析を実施し,第2研究として,死亡例で多数を占める「新生児死亡事例」を取り上げ、テキストマイニングによる分析を行い,特徴的な課題や提言を抽出,整理した。さらに,第3研究では一時保護や施設,里親家庭などでの保護歴がある事例に焦点を当て、量的分析と質的分析を組み合わせ,量的分析からその特徴を描き出し,課題や提言の内容を抽出し,未然防止のための方策について検討した。
テーマ2:イギリスおよびアメリカの児童虐待死亡事例を検証した文献について、Scopusを用いて検索、収集し、英米各国の児童虐待死亡事例の背景や特徴を把握するとともに、共通して、あるいは繰り返し指摘されている内容を分析、整理した。
テーマ3:2008年度から2022年度までに報告された地方公共団体による児童虐待死亡事例検討報告書を対象にした包括的な分析を行った。第1研究として,これらの検証報告書について,虐待種別や関与した機関,加害者の年齢や立場,被害児童の年齢や性別等をコード化し,量的分析を実施し,第2研究として,死亡例で多数を占める「新生児死亡事例」を取り上げ、テキストマイニングによる分析を行い,特徴的な課題や提言を抽出,整理した。さらに,第3研究では一時保護や施設,里親家庭などでの保護歴がある事例に焦点を当て、量的分析と質的分析を組み合わせ,量的分析からその特徴を描き出し,課題や提言の内容を抽出し,未然防止のための方策について検討した。
結果と考察
テーマ1:【結果】死亡に至るケースの展開として「孤立と孤独を深めていくプロセス」が明らかになり、このプロセスを断ち切る保護要件として作用すべきが「途切れない支援が進んでいくプロセス」である。しかしこのプロセスが十分機能せずにいる現状が明らかとなった。これを解決するためには「組織の修正力(リスク状況を見極めた介入の選択プロセス)」が必要で、具体的には各支援機関が「支援方針の固定化・形骸化」を防ぎ、「支援方針の変更を進めていく」修正的アセスメントとそれに基づく方針変更の柔軟さを組織が兼ね備えることであることが推察された。
テーマ2:【結果】;英米の児童虐待死亡事例の検証では、子どもの特性(障害や疾病の有無等)よりも、保護者(加害親)の特性について詳細に分析していることが明らかになった。また、児童虐待とDVとの強い相関が明らかになるとともに、アルコールや薬物依存などの問題を抱える養育者による虐待死亡事例の多さから、多機関連携の重要性が明らかになった。 さらに、日本よりもネグレクトや身体的虐待の分類が細分化されており、日本における児童虐待の見直しの必要性も示唆された。
テーマ3【結果】:検証報告書のコーディングを行い,その集計と分析を行なった結果,事例のパターンや傾向に関して一定の知見を得ることができた(第1研究)。新生児死亡事例に関する検証報告について、テキストマイニングの結果をもとに「課題」と「提言」に示された内容を比較してみると,医療機関や児童相談所等、関係機関間の情報共有や連携,協働、継続的な支援、家族全体に目を向けたアセスメント、学校における予防教育等多くの項目が「提言」の中にも含められている一方、児童相談所におけるリスクの認識という課題については「提言」の中に顕著にその内容を見ることはできなかった(第2研究)。過去に一時保護や施設入所等の保護歴があった子どもの死亡については、虐待発生の背景要因である家族,特に父親の暴力性や母親の育児負担に関するリスクアセスメントと,すでにかかわりがある関係機関が役割分担をしながら関わり続ける支援の進行管理,そして地域の関係機関が領域横断的に情報共有をしつつ連携協働の促進が虐待死の未然防止に向けた重要な方策となることが示唆された(第3研究)。
テーマ2:【結果】;英米の児童虐待死亡事例の検証では、子どもの特性(障害や疾病の有無等)よりも、保護者(加害親)の特性について詳細に分析していることが明らかになった。また、児童虐待とDVとの強い相関が明らかになるとともに、アルコールや薬物依存などの問題を抱える養育者による虐待死亡事例の多さから、多機関連携の重要性が明らかになった。 さらに、日本よりもネグレクトや身体的虐待の分類が細分化されており、日本における児童虐待の見直しの必要性も示唆された。
テーマ3【結果】:検証報告書のコーディングを行い,その集計と分析を行なった結果,事例のパターンや傾向に関して一定の知見を得ることができた(第1研究)。新生児死亡事例に関する検証報告について、テキストマイニングの結果をもとに「課題」と「提言」に示された内容を比較してみると,医療機関や児童相談所等、関係機関間の情報共有や連携,協働、継続的な支援、家族全体に目を向けたアセスメント、学校における予防教育等多くの項目が「提言」の中にも含められている一方、児童相談所におけるリスクの認識という課題については「提言」の中に顕著にその内容を見ることはできなかった(第2研究)。過去に一時保護や施設入所等の保護歴があった子どもの死亡については、虐待発生の背景要因である家族,特に父親の暴力性や母親の育児負担に関するリスクアセスメントと,すでにかかわりがある関係機関が役割分担をしながら関わり続ける支援の進行管理,そして地域の関係機関が領域横断的に情報共有をしつつ連携協働の促進が虐待死の未然防止に向けた重要な方策となることが示唆された(第3研究)。
結論
繰り返し指摘される課題の共通テーマとして、家族の孤立化と支援の継続性が絶たれる過程があり、その背景に硬直化した組織的問題の存在が推察された。この点についてより深い検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2024-08-01
更新日
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