児童養護施設等や里親家庭における養育の不調の要因分析に資する研究

文献情報

文献番号
202327023A
報告書区分
総括
研究課題名
児童養護施設等や里親家庭における養育の不調の要因分析に資する研究
課題番号
23DA1401
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
引土 達雄(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 上鹿渡 和宏(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 三輪 清子(明治学院大学 社会学部)
  • 山口 敬子(京都府立大学 公共政策学部)
  • 塩谷 隼平(東洋学園大学 人間科学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
里親・ファミリーホーム・地域小規模児童養護施設の養育者、児童相談所・フォスタリング機関の支援機関を対象とした調査を行い、基礎データを得ることにより、統合した社会的養育システムの観点から、適切なアセスメント、養育環境の選択、必要な支援について課題を整理し、改善のあり方について検討を行うことを目的とする。
研究方法
Konjin et al., (2018)を参考に、研究班の研究者がそれまでの支援やインタビュー調査の経験から議論を重ね、質問の内容を検討し、「委託時や養育不調による委託解除時の状況」、「子どもの心身の特性や行動上の問題」、「養育上の課題」、「支援の課題」の4つに分けて質問項目を作成した。調査依頼は里親のみ各自治体より郵送し、回答方法は質問紙への自記式もしくはオンラインフォーム(成育RedCapシステム)で行った。ファミリーホーム、地域小規模児童養護施設はオンラインフォーム(成育RedCapシステム)にて行った。児童相談所とフォスタリング機関は、エクセルファイルにて質問票を作成し、パスワードを使用しメールにて調査を行った。2024年2~3月に調査を行った。
結果と考察
里親養育不調により委託解除となった理由としては、「他害以外の子どもの問題行動」、「里親家庭内や学校での他害、器物破損行為」、「自傷・自殺行為」と、子どもの行動上の問題の記載が多かった。ファミリーホームにおいても、「他害以外の子どもの問題行動」や「ファミリーホーム内や学校での他害や器物破損行為」に多くの回答が認められた。地域小規模児童養護施設においては、「施設への不適応(ルールが守れない、生活の乱れなど)」、「職員への暴言・暴力」が多く認められていた。以上から、いずれの養育者も、子どもの養育上の問題への対応が難しくなり、委託解除になることが多いことが示唆される。子ども達は、それぞれの生立ちや実家族との事情があり、発達やアタッチメントの問題を抱えている子どもも多いと考えられる。ファミリーホームや地域小規模児童養護施設、また、多くの子どもが委託されている里親の場合、単に該当児童の問題行動が手に負えないという理由だけではなく、常に複数の委託児童を養育しているため、子ども同士の関係性や精神的不調など複数の要因が合わさり、それらの問題が悪循環的に悪化していくことが推察される。その中で、養育の場を維持していく上で、委託解除の選択肢を取らざるを得ない場合もあったのだと考えられる。心理療法や医療的介入など治療的な介入とともに、委託時や委託後の経年のタイミングにあった効果的なアセスメントと介入について考えていく必要がある。その子ども達を養育することの困難さは計り知れず、子ども同士の力動も考慮したコンサルテーションなどの機能をどのように外部に作るかが課題であるかもしれない。また、委託解除となった子どもへのケアをする場について検討される必要がある。
結論
里親・ファミリーホーム・地域小規模児童養護施設の養育者の回答から、養育不調による委託・措置解除の要因として、委託や措置されていた子どもの「情緒不安定、行動上の問題の状況」が多いことが示唆された。
そのような事例については、子どものニーズに合った生活、実家庭との関係、学校生活などに関する心理社会的な介入とともに、心理療法や医療的介入など治療的な介入委託時や委託後の経年のタイミングにあった効果的なアセスメントと介入について考えていく必要がある。
 今後、「委託時や養育不調による委託解除時の状況」、「子どもの心身の特性や行動上の問題」、「養育上の課題」、「支援の課題」の視点から、調査内容への分析を行っていく。
来年度はヒアリング調査を実施し、質問紙では拾いきれない現場の生の声を集積していく。その上で、改善策や予防策を案出していくことが重要であると考えられる。
 施設・里親等の養育者、フォスタリング機関、当事者について調査を集積し、不調の要因となる事項やプロセスをより幅広い視点から明らかにし、統合した社会的養育システムの観点から、適切なアセスメント、養育環境の選択、必要な支援について課題を整理し改善のあり方について示し、手引を作成する。

公開日・更新日

公開日
2024-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

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公開日
2024-08-02
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-

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収支報告書

文献番号
202327023Z