先天性角化不全症の効果的診断法の確立と治療ガイドラインの作成に関する研究

文献情報

文献番号
200936174A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性角化不全症の効果的診断法の確立と治療ガイドラインの作成に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-119
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小島 勢二(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 雅文(名古屋第一赤十字病院 病理部)
  • 小原 明(東邦大学医学部附属大森病院 輸血部)
  • 伊藤 悦朗(弘前大学医学部 小児科学)
  • 高橋 義行(名古屋大学医学部附属病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性角化不全症(DKC)は、皮膚の網状色素沈着、爪の委縮、口腔内の粘膜白斑症をともなう骨髄不全症で、10歳前後までに80%以上の患者にこれらの身体所見を付随した再生不良性貧血{再不貧}を発症する。これまでに、DKCに特徴的な身体所見がみられず、特発再不貧と考えられていた症例から、DKCの原因遺伝子であるTERC、TERT、TINF2の遺伝子変異が報告されている。不全型の多くは、診断に至らず、特発性再不貧として治療されていると考えられる。今回、日本人小児再不貧患者を対象にDKC関連遺伝子の変異の有無、さらに末梢血リンパ球のテロメア長の測定がDKCのスクリーニングに有用であるかを検討した。
研究方法
47人の特発性再生不良性貧血患児、5人のDKC患者の末梢血リンパ球のテロメア長をFlow-FISH法で測定した。また、DKC患児について、6腫のDKC関連遺伝子(DKC1,TERC,TERT,NHP2,NOP10,TINF2)の変異の有無を検討した。
結果と考察
テロメア長を測定した5人のDKC患児では全例で健常人の5%未満と著明な短縮を認めた。テロメア長の測定が可能であった47人の特発性再生不良性貧血患児の1人に著明なテロメア長の短縮がみられ、TINF2遺伝子の変異が確認された。9例について遺伝子検索をおこなったところ、6例について同定可能であり、DKC1の変異を2例、TERTの変異を2例、TERCの変異を1例、TINF2の変異を1例に認めた。TERTの変異を認めた2例とTINF2の変異を認めた1例は、身体的特徴がなく特発性再生不良性貧血と診断されていた。テロメア長の測定は従来サザンブロット法でおこなわれてきたが、Flow FISH法を用いて簡便化が可能であった。スクリーニングで選定された患者検体のみを遺伝子診断の対象とすることで大幅にコストと労力の削減につながった。日本小児血液学会中央診断事業の一環として本研究を実施することで不全型を含め、本症の診断が可能となりわが国における先天性角化不全症の疫学情報が充実することが期待される。
結論
小児再不貧に対する中央診断事業の実施により、75人のうち3人と比較的高頻度に本症が発見された。 特筆すべきは、特発性再不貧患児の中から、リンパ球テロメア長のスクリーニングをおこなうことで本症の発見されたことである。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936174C

成果

専門的・学術的観点からの成果
11例の先天性角化不全症(DKC)患者についてリンパ球テロメア長の測定をおこなった。全例において、著明な短縮を認めた。遺伝子検索では、DKC1の変異を2例、TERCの変異を1例、TINF2の変異を1例に認めた。特発性骨髄不全症候群と診断された96人の小児、120人の成人について本症の原因遺伝子の解析をしたところ、小児コホートからは、2例にTERT遺伝子の変異、成人コホートからはTERC遺伝子(1例)、TERT遺伝子(1例)、TINF2遺伝子(3例)の変異が発見された。
臨床的観点からの成果
小児造血障害疾患の中央診断事業を開始してから24ヶ月で340例の骨髄塗抹標本と骨髄標本がレビューされた。18例が先天性骨髄不全症候群であり、うち3例がDKCと診断された。そのほか、特徴的な身体所見はみられないものの、リンパ球テロメア長の短縮を契機に遺伝子診断をおこない本症と診断された1例がある。
重症DKCに対しては、現時点では造血幹細胞移植が唯一の治療法である。骨髄非破壊的前処置法を導入し、4例とも重症な合併症もなく血液学的な回復がみられ生存中である。
ガイドライン等の開発
本研究の集計結果と国内外の知見をもとに、厚生労働省科学研究費補助金“特発性造血障害に関する調査研究班”と協力して“先天性角化不全症の参照ガイド”を作成し、2011年3月に出版した。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2011年2月5日にホテルサンルートプラザにおいて、他の厚生労働省科学研究費補助金
難治性疾患克服研究事業の各研究班と合同で“先天性造血不全シンポジウム”を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
11件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-