浄化槽適正処理技術に関する研究

文献情報

文献番号
199700689A
報告書区分
総括
研究課題名
浄化槽適正処理技術に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大森 英昭(財団法人日本環境整備教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 海野肇(東京工業大学)
  • 木曽祥秋(豊橋技術科学大学)
  • 小林高臣(長岡技術科学大学)
  • 長岡裕(武蔵工業大学)
  • 山本和夫(東京大学環境安全研究センター)
  • 山本康次(大阪府立公衆衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小型合併処理浄化槽は、下水道と同等の処理性能を有する生活排水の処理施設として開発・実用化され、急速に普及しつつあるが、水環境の保全に対する社会的要請の高まりから、今まで以上に高度な処理機能を有することが求められてきている。平成2年6月に生活排水対策の推進を目的として水質汚濁防止法が改正されたが、同年12月の生活環境審議会答申「今後の廃棄物対策の在り方について」においても、生活排水対策は廃棄物対策の柱の一つとして、合併処理浄化槽の整備が一層推進されるべきと記され、結果的には、この答申を受けて平成3年10月に抜本的に改正された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の趣旨において、生活排水対策を含め一般廃棄物処理の計画的な取り組みを強化することとされた。
21世紀を迎えるに当たりうるおいのある生活の創造が強く求められているが、小型合併処理浄化槽の普及により、日常生活に伴い発生した汚水は速やかに生活の場から排除し遠ざけるという従来の形から、汚水は発生したその場で処理し、きれいにして環境に返すということが可能となってきている。さらに、処理の高度化を進めることにより、処理水の再利用等水資源の確保・有効利用のみならず、身近なせせらぎの回復等、うるおいのある地域の生活環境の創造にもつながるものと期待されている。
このように合併処理浄化槽に寄せられている要請に応えていくためには、より高度な処理技術の開発を進めることを目標にし、現行の生物処理では分解・除去することが困難な汚濁成分を除去することに加え、大腸菌、ウイルス等の微生物の除去を行い、衛生的な安全性を確保することを目指す必要がある。
以上により、本研究は、新素材として技術革新の著しい膜分離技術に焦点を当てて、これを活用した抜本的な小型の汚水処理技術を研究・開発することも目的とした。
研究方法
し尿処理等各種水処理分野における膜分離技術の実態を踏まえて、生活排水処理分野における膜分離技術の適用可能性に係る研究を通して、必要な技術開発を行った。具体的な研究課題は以下のとおりである。
(1)膜と担持微生物のハイブリッドによる硝化・脱窒反応の高度化に関する研究
好気性反応槽内に多孔質担体を投入した実験装置を用い、BOD/T-Nを種々の値に設定した人工下水による有機物質及び窒素の同時除去特性について検討を行った。
(2)膜分離型小型合併処理浄化槽の維持管理方法に関する研究
膜分離型小型合併処理浄化槽において、透過水量を安定して確保するために重要な膜分離装置の維持管理方法について作業部会を設け具体的な検討を行った。
(3)メッシュろ過による汚泥濃縮に関する研究
重力濃縮とろ過を併用するタイプの濃縮装置を作製し、目開きの異なるメッシュを用いて活性汚泥の分離濃縮特性について検討を行った。
(4)超音波処理装置を実装した小型排水処理装置の開発
種々の分離膜を用いてその膜のファウリング状況を調べ、その膜セルホルダーに超音波を照射し膜ファウリングに関する超音波の効果について検討を行った。
(5)膜分離活性汚泥法における目詰まり過程のモデル化
生物代謝物質である菌体外高分子ポリマーが膜目詰まりおよび反応槽内に与える影響について実験的考察を行い、膜目詰まりモデルの開発を行った。
(6)膜分離活性汚泥法における微生物生態系の解析
微小後生動物の膜分離活性汚泥槽内での汚泥減量への寄与を明らかにするため、膜分離活性汚泥槽内微生物生態系の動力学的解析を行った。
(7)膜分離型小型合併処理浄化槽の実用化に関する研究
平成8年度に決定した、膜分離型小型合併処理浄化槽の設計条件に基づいて作成した実証試験装置を実際の戸建住宅に設置し、実流入条件における処理機能等の検討を行った。
結果と考察
上記研究課題については、それぞれ以下のとおりである。
(1)連続処理リアクターにおいて、多孔質担体担持微生物によって有機物質及び窒素の同時除去反応が進行し、その同時除去効率は流入水のBOD/T-Nによって大きく変化すること並びにこの操作によって発生する懸濁物濃度が極めて小さいことを確認し、好気性反応槽内に多孔質担体を投入することにより安定した窒素除去が行えることがわかった。
(2)維持管理にあたっては、保守点検と清掃の連携を確実に行うことを前提条件とする必要があることがわかった。また、以下の留意する必要があることを明らかにした。
・使用開始直前の点検は必須とし、水透過流束(または透過水量)及びろ過圧力を測定す るとともに、種汚泥を添加する。
・膜の洗浄頻度は6ヶ月に1回とし、原則として透過液側から次亜塩素酸ナトリウム溶液 を注入する方法とする。
なお、処理水の放流を行う前に、薬品洗浄後の排出液中の残留塩素の中和が必要である。(3)いずれの目開きのメッシュでも汚泥濃度が高いほどろ過速度は低下するが、概ね12時間以内に1/5~1/10に汚泥量は減少することが確認された。また、汚泥濃度が高いほど濃縮槽内に保持される汚泥の回収率が高くなる傾向が認められ、重力濃縮とろ過を併用するタイプの濃縮装置の実用化が可能であることがわかった。
(4)超音波をろ過当初から照射した場合には、低周波の共振周波数ではファウリングが起こらず、超音波強度の高い場合ほどファウリング抑制に効果があることがわかった。このことから、超音波を組み合わせた洗浄処理を行うことで、より効率的で簡便なファウリング膜の再生方法が確立できた。
(5)膜目詰まりモデルにより、実験結果と同様の経時的傾向を示すことができた。また、長期間安定した透過流束を保つには、初期透過フラックスを0.1m/日程度に設定することが望ましいことがわかった。
(6)基質、細菌、原生動物、後生動物の食物連鎖を中心にした生態系のモデルについて、増殖、捕食、死滅等に関するパラメータを実験結果および文献値からの推定値による計算を行った結果、捕食者の存在により40%以上の汚泥減量効果が得られた。
(7)流量調整部の容量の不足及び窒素除去性能を担保するための運転条件について、検討を行う必要があった。また、半年~1年程度、薬品洗浄なしで透過水が確保でき、その後の薬品洗浄の結果、運転開始時まで回復することが確認できたが、これにより膜型浄化槽の基本構造及び安定して運転するための条件が明らかとなった。
結論
膜分離活性汚泥法を用いた小型生活排水処理施設を設計するにあたり、反応槽内の微生物特性や膜の透過特性の評価方法について、実験結果および文献値から得られたパラメータを用いたモデルの開発を行った。また、実際の戸建住宅に設置した実験装置を用いた検討結果から、膜型浄化槽の基本構造及び安定して運転するための条件を明らかにするとともに、余剰汚泥量の減量化方法や安定した窒素除去性能を得るための装置の検討を行った。現状では、避けられない問題である膜のファウリングの発生に係る防止する方法や薬品を用いない膜の再生方法として、超音波処理が有効であることを明らかにした。

公開日・更新日

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