発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等、配慮・支援の必要な妊産婦への支援を推進するための研究

文献情報

文献番号
202327014A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等、配慮・支援の必要な妊産婦への支援を推進するための研究
課題番号
23DA0501
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 拓代(公益社団法人母子保健推進会議 )
研究分担者(所属機関)
  • 帯包 エリカ(北里 エリカ)(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
13,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 妊娠・出産・育児は、女性にとってパートナーとの新たな生活に加え、心身の変化やさまざまな課題等が日々発生する。これらの状況に加え、特に発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等の妊産婦は、自らはもちろんのこと、パートナーや親族においても、妊娠・出産・育児の予測が不十分な場合や、支援が必要であると認識していない場合では、支援の隙間に陥り不適切な育児が起こりかねない可能性が高い。一時点での背景の把握とリスクの評価だけではなく、将来を見据えた信頼関係の構築を行い、支援の経過の中で妊娠・出産・育児に係るリスクの評価を行う必要がある。
 配慮・支援の必要な妊産婦等に対して、妊娠期、子育て期(乳幼児期)それぞれの時期に活用することのできる、リスク評価の標準化に向けたアセスメントシート、支援の対象者に配布するリーフレット類、支援の手引きといった支援ツールを作成し、支援を均てん化することを目的とする。
研究方法
1.母子保健における特に支援を必要とするこども・家庭・妊産婦の的確な把握を目指すリスクアセスメントシートの実装研究
 リスクアセスメントシートの研修会資材作成、自治体の試験導入、リスクアセスメントデータを用いた地域診断を行った。

2.全国市区町村に対する調査
 全国市区町村に、継続的支援が必要な妊産婦や親子の把握や支援内容等、リーフレット等に関して調査を行った。

3.発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等、配慮・支援の必要な妊産婦へのリーフレット等の収集
 2.の調査において把握したリーフレット等の収集、文献からこれらの検索及び情報の収集を行った。

4.自治体における妊産婦及び乳幼児の家庭への支援に関する事例検討会
 都道府県型保健所の協力を得て、2自治体で定期的事例検討会を行った。

5.フィンランドのこども家庭センターに準じた取り組みの把握
 ネウボラ(相談の場の意味)と保健福祉医療サービスを統合したサービスとケアが提供されており、視察を行った。
結果と考察
1.に関して、自治体での母子保健事業でのリスクアセスメントシートの実装、リスクアセスメントデータを活用した地域の傾向分析にむけたデータ収集・分析等を行った。明らかになった知見に基づき、ツールの更なる改善につなげていく。

2.に関して、10カテゴリーで支援している妊産婦、親子を尋ねたが、70~100%が把握されていた。令和3年度から4年度に感覚で「大きく増加」したと感じるのは「言葉が通じにくい外国人の妊産婦・親」で、「増加」したのは「メンタルヘルスが気になる関係性構築が難しい妊産婦」、「子どもに対して育てにくさを感じている親」、「生活上に何らかの困難を抱えている妊産婦・親」であった。気にかかる妊産婦・親の支援で児童福祉との連携が必要となった場合の課題は、「リスク内容の認識に差がある」、「情報共有のルール・仕組みが不明確」が多く、すべての支援が必要な妊産婦や親子についての自治体内課題は、「支援のための地域資源の不足」が多く、次いで「マニュアルや手引き等がなく職員で対応が異なる」、「組織内スーパーバイザーがおらず不安」、「支援するためのツール(リーフレット等)が不足している」であった。支援に必要なリーフレット等は74.6%が作成しておらず、外国の方向けのものは15.0%があるものの、知的障害者、精神障害者、発達障害者向けの内容はほとんど作られていなかった。今後はリーフレット等のツールを作成していく。

3.では、1.の市区町村調査において自治体で作成しているリーフレット等を収集するとともに、医学中央雑誌からリーフレット作成に資する文献を収集した。71自治体から提供があり、文献検索ではキーワードを「気になる妊産婦」「気になる子ども」「育てにくさを感じている親」として収集し、内容を精査しリーフレット等の作成にいかしていく。

4.では、県型保健所等の協力を得て北海道富良野市、沖縄県沖縄市で市町村母子保健職員等による事例検討会を行い、母子保健分野として児童福祉との連携が必要になる前の、支援が必要な妊産婦及び乳幼児として把握した全ケースの検討を毎月行った。支援のアドバイスや台帳による進行管理を行ったが、効果的ととらえられていた。

5.については、ネウボラ(相談の場の意味)による妊娠期からの伴走支援の取り組みが行われており、2023年1月から新しい、保健福祉医療サービスを統合し切れ目ない他職種連携によるサービスとケアが提供されている。このこども家庭センターに準じた取組の視察から、本研究について反映をはかる。

結論
ポピュレーションアプローチによる困難が起こる前の支援は、長期的な視点が必要な予防機能であり、母子保健機能として重要である。今後、支援に有用なリーフレット等のツールを作成し、また効果的な支援を展開する支援マニュアル等の作成を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202327014Z