成人型分類不能型免疫不全症の実態把握、亜群特定に基づく診断基準策定及び病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200936168A
報告書区分
総括
研究課題名
成人型分類不能型免疫不全症の実態把握、亜群特定に基づく診断基準策定及び病態解明に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-113
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 耕輔(防衛医科大学校)
  • 金兼 弘和(富山大学附属病院)
  • 松本 功(筑波大学大学院)
  • 小原 收((財)かずさDNA研究所)
  • 竹森 利忠(理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター)
  • 田中 敏郎(大阪大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
この研究では主に成人を対象とした分類不能型免疫不全症(以下CVID)の患者数・病像調査を通じて、疾患の実態把握を行い、さらに免疫学的、分子生物学的検討から、疾患概念の整理・疾患本態の解明を目指すことより、診断の確立、診療の向上を図ることを目的とする。
研究方法
まず、大学附属病院・大規模病院の血液内科、膠原病内科、免疫・アレルギー科、感染症科、小児科を中心にCVIDアンケート調査を行う。さらにB細胞、T細胞、抗原提示細胞亜群の多次元表面抗原分析・機能解析、患者B細胞亜群の体系的発現遺伝子解析、免疫担当細胞の生化学的解析、KRECs, TRECs測定(B細胞、T細胞新生能の指標)にて免疫担当細胞の解析を行い、さらに責任遺伝子探索を行う。合併症については自己免疫を中心に整理し、その発生機構を分子生物学的、細胞生物学的に解析する。上記を統合して、現時点での新規診断基準案の策定を試みる。
結果と考察
1159部局に一次アンケートを送付し登録のあった71名に対して、さらに二次アンケートを行った。原発性免疫不全症調査班の把握する情報と合わせ、208名でのデータが集積した。現診断基準にてCVIDに当てはまる患者は9名であった。24名の患者で、免疫学的解析を行い、記憶B細胞あるいは前形質細胞への分化異常とT細胞レパートリーの偏りを共通の現象として抽出した。KRECs, TRECsの低値を示す患者も認めた。既知の責任遺伝子探索では既知の一塩基多型は検出されたものの、タンパク質機能に大きな影響を与えるような変異は見出されなかった。自己免疫疾患は18%の患者で認め、2例ではエフェクター細胞と抑制性細胞の不均衡が認められた。これらのデータを基に参考基準を充実させた暫定的診断基準案を策定した。
結論
CVIDの全国調査が行われ、208名のデータが集積した。詳細なデータ及び、免疫学的解析から、日本版診断基準案を策定し、診断に当たっての参考基準を提示した。既知の遺伝子異常は極めて少ないことが明らかになった。特に40歳以上で自己免疫疾患及び悪性腫瘍の罹患率が高い。臨床データ、免疫学的解析結果から亜群分類が可能になる。さらに候補遺伝子探索を統合する体制が整い、CVIDの成因及び病態解明への道が拓けるものと考えている。

公開日・更新日

公開日
2010-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936168C

成果

専門的・学術的観点からの成果
CVIDに関する初めての体系的な研究が行われた。多くの患者において既知の責任遺伝子が除外され、さらにB細胞・T細胞亜群や、B細胞・T細胞新生能の解析が行われた。この研究からさらに、新しい責任遺伝子探索が行える基盤が形成されたものと考えている。病態に関しては自己免疫疾患の成立機序において、刺激側と抑制側シグナルのバランスから自己免疫と易感染性が共存することを明らかにした。
臨床的観点からの成果
我が国においてCVIDに対しての初めてのアンケート調査が行われ、患者数、担当診療科、主な感染症、自己免疫疾患や悪性腫瘍の合併などの詳細が明らかになった。診断の手引きの送付や、診断や治療相談などにより、より適切な医療の供給に繋がったものと思われる。また今回のアンケート調査や検査により全国の医師との連携が行われるようになった。
ガイドライン等の開発
今までの分類不能型免疫不全症診断基準は、主に除外診断であった。今回、行ったアンケート及び基礎解析結果を元に、除外項目を明確にし、診断に有用な明確な指標を盛り込んだ、実用的な診断基準案を策定した。同基準案はアンケート協力全施設に配布した。
その他行政的観点からの成果
特記すべきことなし。
その他のインパクト
原発性免疫不全症患者の会である「つばさの会」においては今まで小児期の患者(その両親)が主に参加していたが、分類不能型免疫不全症の主たる年齢層である、20代以降の患者さんの参加が増えているとの報告がある。

発表件数

原著論文(和文)
15件
原著論文(英文等)
58件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20