文献情報
文献番号
202327008A
報告書区分
総括
研究課題名
不妊治療における情報提供の方策等の確立に向けた研究
課題番号
22DA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
前田 恵理(北海道大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 大須賀 穣(国立大学法人 東京大学 医学部附属病院)
- 寺田 幸弘(秋田大学医学系研究科機能展開医学系産婦人科学講座)
- 辻村 晃(順天堂大学医学部附属浦安病院 泌尿器科)
- 永野 妙子(東邦大学 医学部)
- 小門 穂(神戸薬科大学 薬学部)
- 左 勝則(チャア スンチ)(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,350,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
令和4年度からの不妊治療に対する医療保険の適用範囲の拡大に際しては、中央社会保険医療協議会にて「不妊治療の情報提供の在り方について検討すること」との指摘がなされた。本研究では、患者の安全・安心を真に確保するための情報開示のあり方について、当事者、医療機関、自治体等、様々な立場の方により構成される研究班にて、国内外の調査を踏まえて議論・検討を行い、提言を取りまとめる。
研究方法
昨年度までの海外調査(英国、スウェーデン、韓国)に加えて、今年度は海外調査として米国、オーストラリア、フランスの情報開示の現状、開示・非開示に至るまでの背景や議論、効果、課題等について文献調査および関係者へのインタビュー調査を行った。国内調査では、昨年度までの不妊治療中の女性と生殖補助医療機関を対象とした質問紙調査に加えて、今年度は国内の他分野における医療の質評価や情報開示の関係者に対するインタビュー調査を実施した。
結果と考察
これまでの調査から、生殖補助医療実施医療機関の治療成績の開示は、医療の質の向上や、患者の医療機関選択に有用であり、患者の医療機関に対する信頼やエンパワメントにつながる可能性があること、8割以上の患者が治療成績の開示を必要と考えており、半数以上の治療施設が開示に前向きであること等が示された。一方で、治療成績には、治療技術だけでなく、患者の個別的要因が大きく反映され、各施設の患者背景が異なる中で、治療成績を単純な数値で開示することは、医療機関側が予後不良な患者の診療を好まなくなる、治療登録が不正確になる、見かけの成績が高い施設に患者が集中する等の混乱等を招く可能性も示された。現行制度で医療機関別の治療成績の開示を行う場合には、医療機関による自己申告の治療成績、または、後向き登録かつ監査のない日本産科婦人科学会による生殖データベースを情報源とすることになり、成績開示を適切に実施することは難しい。したがって、前向き登録や生殖医療の公的管理運営機関による監査等を備えた、質の高い症例登録制を整備すること、有用かつ実現可能な登録項目を設定すること、生殖医療の公的管理運営機関による助言・指導体制を整えること、総合的見地からの医療機関選択を可能とする情報提供の仕組みを整備することを実現し、医療機関別の治療成績を開示することが望ましいと考えられた。上記の整備に要する期間中も、治療成績の開示がもたらす利益については一定程度確保するため、安全性確保に関する指標については先行して開示することや、医療機関がホームページ上等で独自に開示する治療成績に関する指針や、医療機関選択に関する教育コンテンツの作成を行うなど患者の医療機関選択を支援する必要がある。
結論
本研究班で取りまとめた、生殖補助医療実施医療機関の情報提供の方策に関する提案は、こども家庭庁による不妊治療実施医療機関の情報提供様式にも令和6年度より反映される。
公開日・更新日
公開日
2024-08-05
更新日
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