文献情報
文献番号
202327006A
報告書区分
総括
研究課題名
DV・性暴力被害者の医療と連携した支援体制の構築のための研究
課題番号
22DA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
河野 美江(国立大学法人島根大学 松江保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
- 和田 耕一郎(島根大学 医学部)
- 北仲 千里(広島大学 ハラスメント相談室)
- 渥美 治世(東海大学 医学部)
- 竹谷 健(国立大学法人 島根大学 医学部 小児科学)
- 岩下 義明(島根大学 医学部救急医学講座)
- 京 哲(島根大学医学部 産科婦人科)
- 尾花 和子(埼玉医科大学小児外科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
概要版(繰越課題)
今年度も引き続き、1)性暴力被害者に対する医療支援調査、2) DV・性暴力被害者支援機関との連携調査を行った。いずれの調査も研究代表者の大学の研究倫理委員会で承認を得た。
1)性暴力被害者に対する医療支援調査は、研究1,2を行った。研究1:日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本小児外科学会、日本救急医学会、日本泌尿器科学会、GID(性同一性障害)学会に承諾を得て行ったアンケート調査において、回答が有効であった2,045を分析対象とし、GID学会会員とそれ以外の会員について、各調査項目の回答につき解析を行った。分析には統計ソフトIBM SPSS statistics 26.0 J for Windowsを使用し、有意水準5 %未満を有意な差と判定した。結果:2017年の刑法改正は68.7%で認知されており、GID学会以外に比べ有意に高く、「子ども、男性、性的マイノリティの性暴力被害を学ぶ機会があった割合」、「男性,性的マイノリティの性暴力被害者に接したことのある割合」はGID学会以外に比べて有意に高かった。研究2:研究1のアンケートにおいて、子ども、男性、性的マイノリティの診療経験があると回答した医師のうち、事例の回答について承諾が得られたに医師に2次調査を行った。返信のあった51例中、回答が有効であった35例を分析対象とした。子どもの事例が91%であり、男性、トランスジェンダーは少なかった。診療科は産婦人科が多く、医療機関は無床診療所から500床以上の大学病院まで多岐にわたっていた。研究1、2より性暴力被害者の医療支援について関心のある医師は、性暴力被害者について学ぶ機会や患者に接する機会が多いこと、どの医療機関にいても被害者が訪れる可能性はあることがわかった。
2) DV・性暴力被害者に対する支援機関との連携調査では、昨年度行った研究1: 性暴力相談支援調査、研究2:DV相談支援の実績と医療連携ニーズの調査を分析した。その結果、2021年度中、日本全国で少なくとも8千人を超える性暴力被害者が、性暴力ワンストップセンターで面談し支援を受け、また2万人を超えるDV等被害者が、DV相談機関で面談し、心理、医療、避難、司法支援、住宅、離婚など様々な支援を受けていることがわかった。被害者の多くは女性であるが、男性や子ども、セクシュアル・マイノリティも相談機関に来ており、また、DV相談支援機関でも、特に市区町村で男性やマイノリティ対象の窓口も作られ始めている。これらの被害者支援の中では医師との連携による支援が必要とされている。特に、産婦人科による支援(証拠採取、緊急避妊、妊娠や出産)が性暴力ではクローズアップされてきたが、現場では女性の医師や、シェルター代わりに使える協力病院、そして精神科医等心理の専門家の助言も切実に必要とされていることがわかった。DV支援現場に医師が配置されていることは非常に少なく、医療機関との連携を今後はよりはっきりと目指す必要がある。
来年度は、これらの研究成果をまとめ、性暴力被害者のための医療支援マニュアルと、関係機関の連携のための好事例集を作成する。
1)性暴力被害者に対する医療支援調査は、研究1,2を行った。研究1:日本産科婦人科学会、日本小児科学会、日本小児外科学会、日本救急医学会、日本泌尿器科学会、GID(性同一性障害)学会に承諾を得て行ったアンケート調査において、回答が有効であった2,045を分析対象とし、GID学会会員とそれ以外の会員について、各調査項目の回答につき解析を行った。分析には統計ソフトIBM SPSS statistics 26.0 J for Windowsを使用し、有意水準5 %未満を有意な差と判定した。結果:2017年の刑法改正は68.7%で認知されており、GID学会以外に比べ有意に高く、「子ども、男性、性的マイノリティの性暴力被害を学ぶ機会があった割合」、「男性,性的マイノリティの性暴力被害者に接したことのある割合」はGID学会以外に比べて有意に高かった。研究2:研究1のアンケートにおいて、子ども、男性、性的マイノリティの診療経験があると回答した医師のうち、事例の回答について承諾が得られたに医師に2次調査を行った。返信のあった51例中、回答が有効であった35例を分析対象とした。子どもの事例が91%であり、男性、トランスジェンダーは少なかった。診療科は産婦人科が多く、医療機関は無床診療所から500床以上の大学病院まで多岐にわたっていた。研究1、2より性暴力被害者の医療支援について関心のある医師は、性暴力被害者について学ぶ機会や患者に接する機会が多いこと、どの医療機関にいても被害者が訪れる可能性はあることがわかった。
2) DV・性暴力被害者に対する支援機関との連携調査では、昨年度行った研究1: 性暴力相談支援調査、研究2:DV相談支援の実績と医療連携ニーズの調査を分析した。その結果、2021年度中、日本全国で少なくとも8千人を超える性暴力被害者が、性暴力ワンストップセンターで面談し支援を受け、また2万人を超えるDV等被害者が、DV相談機関で面談し、心理、医療、避難、司法支援、住宅、離婚など様々な支援を受けていることがわかった。被害者の多くは女性であるが、男性や子ども、セクシュアル・マイノリティも相談機関に来ており、また、DV相談支援機関でも、特に市区町村で男性やマイノリティ対象の窓口も作られ始めている。これらの被害者支援の中では医師との連携による支援が必要とされている。特に、産婦人科による支援(証拠採取、緊急避妊、妊娠や出産)が性暴力ではクローズアップされてきたが、現場では女性の医師や、シェルター代わりに使える協力病院、そして精神科医等心理の専門家の助言も切実に必要とされていることがわかった。DV支援現場に医師が配置されていることは非常に少なく、医療機関との連携を今後はよりはっきりと目指す必要がある。
来年度は、これらの研究成果をまとめ、性暴力被害者のための医療支援マニュアルと、関係機関の連携のための好事例集を作成する。
公開日・更新日
公開日
2024-09-03
更新日
-