F-SOAIPを用いた特別な支援の必要な保護者対応の記録システムの開発

文献情報

文献番号
202327005A
報告書区分
総括
研究課題名
F-SOAIPを用いた特別な支援の必要な保護者対応の記録システムの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
21AA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
上田 敏丈(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院人間文化研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、保育所において、特に配慮や支援の必要な保護者への対応を保育士が行う上で、どのような支援体制の構築が可能となるのかを明らかにすることである。
 保護者への支援について、保育士の役割が大きなことはこれまでも重要視されてきている一方、でそれに対する保育士の困難感については、これまでの先行研究においても報告されてきた(岸本・武藤 2019など)。保護者にどのように接すればよいのか、どうすれば過不足なく支援できるのかということは保育士の大きな関心事項であり、関連する書籍も多数出版されている(例えば、西館・徳田 2014など)。そして、このような困難さが保育士としての離職につながっていることも想定されよう。
 従って、配慮や支援の必要な保護者に対して、どのように保育士が対応し、支援プロセスを構築しているのか、また課題はどこにあり、どのような組織的体制の構築が可能であるのかを明らかにすることが喫緊の課題である。
 そのために、特に本年度は、次の具体的な課題を明らかにする。
特に令和5年度では、これまでの二年間の研究成果を踏まえつつ、以下のように研究を進めた。
1)専門家が保育相談をおこなううえでの必要なポイントを明らかにすること(分担報告1)。
2)F-SOAIP記録システムに基づく保育者の意識変容(分担報告2)。
3)F-SOAIP記録システムのホームページ及びリーフレットの作成(分担報告3)
研究方法
本研究を行うにあたり、インタビュー・アンケート調査については、研究者間で項目の精選・確認を行い、筆頭著者の所属する大学において、倫理審査委員会の承認を得ている。また、実際に調査を行う際には、配布先の所属機関との事前協議の上、内諾を頂き、拒否・無回答しても何の不利益もないことを確認した上で、依頼を行った。インタビュー調査については、事前に研究内容の説明を行い、書面にて同意を得た。
 個別の研究協力者の概要については、分担報告書等に記載されている。
結果と考察
⑴専門家が保育相談をおこなううえでの必要なポイントを明らかにすること
巡回相談をしている方と関係発達論的観点から巡回相談をしている筆者らとが語り合った内容を検討することを通して、巡回相談をする上で専門家間にどのような観点があるのかを明らかにする。
研究協力者は、ある地域で言語聴覚士をしている田中さん(仮名)である。結果として、浮かび上がってきた観点として、子どもが実感をもって行動しているところに目を向けていこうとする志向性、および、課題の解決に囚われすぎず、子どもが今の状況をどのように理解して、その持てる力の中でどのように動こうとしているのかを保育士や保護者と共有していくことが、2人の語りの共通項として浮かび上がってきた。
⑵F-SOAIP記録システムに基づく保育者の意識変容
本研究では、項目形式の記録法の一つであるF-SOAIP を、保育所における保育記録へ援用したことによる、保育者の意識の変容を明らかにする。約1 年間、F-SOAIP を用いて保育記録を書いてきた保育者12 名にインタビューを行い、インタビュー・データをうえの式質的分析法を用いて分析した。その結果、①保育者個人の記録の連続性「流れ」への意識の変容、②保育者間の記録の連続性「つながり」への意識の変容、③大切なことの実感と再認識によるダブルループ学習への変容、という保育者の意識の変容が見出された。
⑶F-SOAIP記録システムのホームページ及びリーフレットの作成
 本研究では、作成した配慮や支援の必要な保護者の情報を共有するツールについて実際に使用した園長の聞き取り調査からその評価とさらなる展開の可能性を明らかにすることである。
 本システムを使用している園から、特に使用頻度の高い2園の園長から、フィードバックを得た。インタビューは、2023年10月及び11月に実施した。
 インタビューの結果、特に配慮の必要な保護者への保護者支援をおこなううえで、初動対応の位置づけとして、相談支援機能が求められること、また、記録システムによる記録が蓄積されるに従い、分量が多くなるために、特定の幼児や場面に対する要約機能が求められることが明らかになった。
結論
 以上のことから、F-SOAIP記録システムが、特別な配慮を必要とする保護者だけではなく、それらの幼児の記録に対しても有効に機能していることが示された。また、今後、さらに効果的に活用していくための展開の方向性も示され、システムの安定的稼働と、今後の機能改善も含めて実施していく。

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202327005B
報告書区分
総合
研究課題名
F-SOAIPを用いた特別な支援の必要な保護者対応の記録システムの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
21AA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
上田 敏丈(公立大学法人 名古屋市立大学 大学院人間文化研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的:本研究は、保育所において、特に特別な支援・配慮の必要な保護者への対応を保育士が行う上で、①どのような支援プロセスによって適切な子育て環境構築が可能となったのか、②保育所内での他保育士及び他職種間と保護者に関する情報共有のツール開発、③ ①②の知見を踏まえて、F-SOAIPによる保護者対応の記録の蓄積と活用の実態調査という目的を検討する。
 以下、①支援プロセス可視化、②情報共有ツールの開発、③記録の蓄積と活用及び評価という3つの研究目的に合わせて、それぞれの年度ごとに概要をまとめる。
研究方法
本研究を行うにあたり、インタビュー・アンケート調査については、研究者間で項目の精選・確認を行い、筆頭著者の所属する大学において、倫理審査委員会の承認を得ている。また、実際に調査を行う際には、配布先の所属機関との事前協議の上、内諾を頂き、拒否・無回答しても何の不利益もないことを確認した上で、依頼を行った。インタビュー調査については、事前に研究内容の説明を行い、書面にて同意を得た。
 個別の研究協力者の概要については、分担報告書等に記載されている。
結果と考察
本研究の3つの研究目的ごとに知見をまとめる。
①支援プロセスの可視化
 国内及び諸外国の文献検討をふまえ、保育士及び利用支援員、相談支援員へのインタビュー調査をおこなった。その結果、初期対応の課題から、長期化すること、同時に消極的な解決にいたることが可視化された。またこのようなケースは、まれであるものの、経験すると離職意識が高まることから「ワン・ケース・クライシス」と呼び対応が求められることが明らかになった。
②情報共有ツールの開発
 福祉領域で活用されているF-SOAIPが保育の領域においても、援用可能であることを明らかにし、そのうえで情報共有ツールの開発をおこなった。
③記録の蓄積と活用
 F-SOAIPに基づく記録を蓄積していくことで、保育者の意識変容が認められることが明らかになった。また、使用頻度の高い園からのフィードバックを受けて、相談や要約といった機能が必要であることも認められた。
結論
以上のことから、F-SOAIP記録システムが、特別な配慮を必要とする保護者だけではなく、それらの幼児の記録に対しても有効に機能していることが示された。
 F-SOAIPの項目別に入力するシステムの有効性と展開の可能性が示された。本知見を活用していくことで、F-SOAIPに基づく記録記入法が広がり、情報共有の敷居を下げることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-07-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202327005C

収支報告書

文献番号
202327005Z