妊婦健康診査、産婦健康診査における妊産婦支援の総合的評価に関する研究

文献情報

文献番号
202327004A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦健康診査、産婦健康診査における妊産婦支援の総合的評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21DA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター )
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 中井 章人(公益社団法人日本産婦人科医会)
  • 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 佐藤 昌司(大分県立病院総合周産期母子医療センター)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 金川 武司(国立循環器病研究センター 産婦人科)
  • 味村 和哉(大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 日高 庸博(福岡市立こども病院 産科)
  • 藤原 武男(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学)
  • 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科学講座)
  • 三代澤 幸秀(信州大学 医学部)
  • 林 昌子(山口 昌子)(日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の周産期死亡率や妊産婦死亡率は世界のトップ水準にある。その大きな要因は妊婦健康診査(妊健)である。近年は、社会的ハイリスク妊娠(SHP)やメンタルヘルス(MH)に問題を抱える妊産婦が増加傾向にあり、自殺や児童虐待発生の要因となり社会的な問題となっている。光田班において、SHPを把握するためのアセスメントシート(SLIM尺度)を確立した。本研究では、SHPやMHに問題を抱える妊産婦だけではなく、全ての妊産婦への支援に資する実証的基礎データを得ることを目的とした。
研究方法
研究Ⅰ: 妊娠出産に関わる社会的・精神的支援に係る人員と労力の評価
研究Ⅱ: 合併症妊娠、異常妊娠・分娩、NICU入院等における妊産婦健康診査体制構築
研究Ⅲ: 妊娠および出産における経済的負担に関する調査
研究Ⅳ: 分娩取扱い施設における社会的ハイリスク妊婦の把握に関する調査
研究Ⅴ: IT動画(シリアスゲーム)によるハイリスク妊婦支援における多職種連携の推進
研究Ⅵ: 精神科医療、精神保健との持続可能な連携支援体制構築
研究Ⅶ: 妊産婦死亡登録事業からの自殺分析・提言と メンタルヘルス講習会企画
研究Ⅷ: MHケアのための研修会の開催
研究Ⅸ: 精神疾患合併妊婦の診療実態に関するアンケート調査
研究Ⅹ: 『わが国の妊産婦健康診査における課題と将来への展望』を目的とした座談会実施と冊子作成
研究Ⅺ: 研究班HP“社会的ハイリスクの妊産婦と子育て支援ナビ”の開設
結果と考察
Ⅰ:解析対象4,969人よりSLIM尺度の分布は、低群70%、中群26%、高群4%であった。妊婦毎の保健指導、必要とした人員数、時間は、いずれも高群は、低群および中群に比較して有意に高く、現時点では、人的労力は施設間格差が大きいが、マルチレベル解析の結果、中群は低群に比べ3,600円、高群は13,821円多くかかることが明らかになった 。
Ⅱ: 解析対象1,187例よりSLIM尺度の分布は、低群69%、中群26%、高群5%であった。母子保健指導、カンファレンスに要した時間は高群において低群、中群より有意に長く、出席人数に有意差はなかった。人件費は高群において低群、中群より有意に高額であった。また、マルチレベル解析の結果は、中群は低群に比べ1,424円、高群は7,684円多くかかることが明らかになった。
Ⅲ:都道府県毎の妊健並びに出産費用の自己負担額と合計特殊出生率は負の相関を認めた。しかし、平均所得、物価指数、子供を持つ意欲で調整すると、有意な相関はなくなった。
Ⅳ: 行政とのやり取りに係る項目の比較では、SHPの把握および行政との連携ができている施設で、より円滑にやり取りができていることが示され、分娩数の多い都道府県では、助産師の数が多いほどSHPの把握と行政と連携ができている施設の割合が高かった。
Ⅴ: R5年12月時点でiOS 290ダウンロード、Android 56 ダウンロードされた。終了後アンケートでは保健師が最も多く52.4%であった。回答者の95%が書籍とゲームの併用が最も有効とした。
Ⅵ: 大阪府内の精神科66施設、分娩取扱53施設から回答を得た。当日受け入れが可能な精神科は18%にとどまった。分娩取扱機関におけるMH評価方法は「エジンバラ産後うつ病質問票」が94%の施設で実施されていた。母子保健主管課の9割以上が精神疾患合併妊産婦、MH不調妊産婦を支援していたが、心理職(40%)、精神保健福祉士(29%)はやや少なかった。
Ⅶ: 妊産婦死亡原因は、直近3年間は自殺が産科危機的出血を超え、死因のトップになっている。自殺事例の原因分析では、妊娠前に精神疾患を罹患していない妊産婦からも自殺者がいることが判明した。
Ⅷ: 産婦健診において質問票を使ったMHケアを行っている産科医療機関は90%を超えるまでになっている。しかし、多職種連携や組織の体制整備という点では限界があることが示された。
Ⅸ: MH不調・精神疾患合併妊婦数は全分娩数の4.9%、精神疾患診断例は3.5%であった。妊娠中に精神科への紹介数は全分娩数の1.2%で、うち15%は転院になっていた。
Ⅹ:健康格差、SHPの定義、ドイツの少子化対策、ネウボラ、子育て世代包括支援センター、WHOの健康の定義、母子のための地域包括ケア病棟、SLIM尺度等をキーワードとして議論した。
Ⅺ:本HP(https://www.ninpu-shien.jp/)は、医療従事者、行政関係者、福祉関係者などが対象とし、SLIM 尺度などのアセスメントツールおよびSHPに関連する最新の研究成果や手引きも掲載した。
結論
母子保健指導という人的労力は、SLIM尺度の重症度に従って有意に多いことが示された。より有用な妊健を提供するためには、施設間格差を少なくするためにも標準化されたコンテンツ導入が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
その他
その他
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
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公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202327004B
報告書区分
総合
研究課題名
妊婦健康診査、産婦健康診査における妊産婦支援の総合的評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21DA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター )
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 中井 章人(公益社団法人日本産婦人科医会)
  • 佐藤 昌司(大分県立病院総合周産期母子医療センター)
  • 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 金川 武司(国立循環器病研究センター 産婦人科)
  • 味村 和哉(大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 日高 庸博(福岡市立こども病院 産科)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 藤原 武男(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学)
  • 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科学講座)
  • 三代澤 幸秀(信州大学 医学部)
  • 林 昌子(山口 昌子)(日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の周産期死亡率や妊産婦死亡率は世界のトップ水準にある。その大きな要因は妊婦健康診査(妊健)である。近年は、社会的ハイリスク妊娠(SHP)やメンタルヘルス(MH)に問題を抱える妊産婦が増加傾向にあり、自殺や児童虐待発生の要因となり社会的な問題となっている。光田班において、SHPを把握するためのアセスメントシート(SLIM尺度)を確立した。本研究では、SHPやMHに問題を抱える妊産婦だけではなく、全ての妊産婦への支援に資する実証的基礎データを得ることを目的とした。
研究方法
研究Ⅰ: 妊娠出産に関わる社会的・精神的支援に係る人員と労力の評価
研究Ⅱ: 合併症妊娠、異常妊娠・分娩、NICU入院等における妊産婦健康診査体制構築
研究Ⅲ: 妊娠および出産における経済的負担に関する調査
研究Ⅳ: 分娩取扱い施設における社会的ハイリスク妊婦の把握に関する調査
研究Ⅴ: IT動画(シリアスゲーム)によるハイリスク妊婦支援における多職種連携の推進
研究Ⅵ: 精神科医療、精神保健との持続可能な連携支援体制構築
研究Ⅶ: 妊産婦死亡登録事業からの自殺分析・提言と メンタルヘルス講習会企画
研究Ⅷ: MHケアのための研修会の開催
研究Ⅸ: 精神疾患合併妊婦の診療実態に関するアンケート調査
研究Ⅹ: 『わが国の妊産婦健康診査における課題と将来への展望』を目的とした座談会実施と冊子作成
研究Ⅺ: 研究班HP“社会的ハイリスクの妊産婦と子育て支援ナビ”の開設
結果と考察
光田班全体を通して従来指摘されてきたこと、想像されてきたことを実証的に示すことが出来たと考える。妊婦健康診査において、“社会的ハイリスク妊娠”を把握し、支援することはすでに始まっている。しかし、社会的ハイリスク妊娠への施設毎の試行錯誤は始まっているが、標準体制構築が道半ばである。メンタルヘルスに関しての支援は未だ課題が多くあり、早急な体制構築が望まれている現状を示すことが出来た。
本研究班の成果も交え【今後の社会的ハイリスク妊娠・メンタルヘルス不調妊産婦支援への提言】を示す。
提言1:母児にとって、ハイリスク妊娠であることを認識する
1)医学的ハイリスク妊娠と同じく、異常妊娠の頻度が上昇し、加えて妊産婦の自死、子育て困難・児童虐待等の発生が見られる。
2)社会的リスクの高さに応じて、その対応に人的コストがかかっている。
3)周産期医療・母子保健事業の支援対象として認識すべきである。

提言2:妊産婦健康診査における予防的妊産婦・子育て支援体制構築が必要である
1)妊婦健康診査・産婦健康診査において医学的ハイリスク妊娠のみならず社会的ハイリスク妊娠・メンタルヘルス不調妊産婦把握する体制構築をする必要がある。
2)医療機関で、社会的ハイリスク妊娠・メンタルヘルス不調妊産婦を簡便に把握するツールとして、SLIM尺度を提案する。
3)社会的ハイリスク妊娠・メンタルヘルス不調妊産婦に起因する母児の予後不良転帰は、早期把握・適正支援によって予防できる可能性がある 。

提言3:医療・保健・福祉による多機関・多職種連携をはかる必要がある
1)各職種の連携が不十分であると、出生後早期からの母児支援に切れ目が生じ、介入遅延・介入不足が起こりやすい。
2)各職種が妊娠初期、時にはプレコンセプションケアによる予防的連携支援をすることで、良好な母児転帰の増加を望むことが可能になる。
3)各職種による有機的、継続的な連携支援遂行のためには、各々のスキルアップと適正な人員配置が必要である。
結論
社会的ハイリスク妊娠はメンタルヘルス不調を伴うことが多く、母児の予後を左右する要因となっている。こうした状況下を加味した母子保健支援体制構築には、医療側・行政側に課題は多い。社会的ハイリスク妊娠、特定妊婦だけではなくローリスク妊娠、医学的ハイリスクも含んだ次世代の妊婦健康診査体制作り(必要な職種、人員、経済的支援等)のための実証的基礎データが得られた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
その他
その他
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202327004C

収支報告書

文献番号
202327004Z