文献情報
文献番号
200936165A
報告書区分
総括
研究課題名
レット症候群の診断と予防・治療法確立のための臨床および生物科学の集学的研究
課題番号
H21-難治・一般-110
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 雅之(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第2部)
研究分担者(所属機関)
- 野村 芳子(瀬川小児神経学クリニック)
- 栗政 明弘(鳥取大学大学院医学系研究科 遺伝子医療学講座)
- 堀家 慎一(金沢大学フロンティアサイエンス機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
レット症候群(RTT)の全国疫学調査はいままでになく、臨床実態は不明な点が多い。また、RTTの原因遺伝子メチル化CpG結合タンパク2(MECP2)の複雑な分子機構と診断の困難さなどにより臨床研究が進んでいない。本研究では、RTTの臨床実態調査とそれに基づいた診断・治療・療育マニュアルを作成し、生体試料の収集と研究基盤の構築、モデルマウスの研究などによりRTT研究を行なう。
研究方法
(1)全国の医療・療育機関へRTT患者の質問調査を行った。(2)脳内ペプチドGをRIA法により、研究参加の同意を得られた患者検体を用いて、症状との関連性を調べた。(3)患者由来変異MECP2によるヘテロクロマチン像の相違と重症度の関連性を検討した。(4) SH-SY5Y細胞で15q上のMECP2結合部位の解析をした。(5)Mecp2発現制御遺伝子改変マウスを作製した。
結果と考察
(1)臨床実態調査:有効回答は677施設(66.4%)で、RTT患者数(含疑い例)1030人、有病率0.008%(20歳以下女性)と推定された。これは欧米諸国と比べて低く、その原因は今後の調査の詳細な解析で明らかにする。また、今回の調査から患者分布の地域差が大きいことが分かった。本邦の診断基準を作成し、啓蒙と普及の必要がある。(2)RTTの生物マーカーの検索: RTTでは血中Gが低値であった。GRLの症状の重症度との関連を解析中である。(3)変異MECP2のヘテロクロマチン機構の解析:ヘテロクロマチン構造の相違と症状の重症度との相関を見出した。(4)ヒト神経細胞SH-SY5Yで15qに特異的なMECP2結合部位を同定した。これは、他のRTT類縁疾患の病態解明にもつながる研究である。(5)Mecp2発現制御遺伝子改変マウスを作製し、次年度には解析に用いることが可能である。
結論
本研究において、レット症候群の全国疫学調査が始まった。一次調査では、患者総数1030名、有病率0.008%(推定値)が得られた。また、患者分布の地域差が大きいことが分かった。診断基準の普及と診断の標準化が必要である。基礎研究の進展は、複雑な病態解明のみならず、治療法の開発に役立ち、今後の展開が期待できる。
公開日・更新日
公開日
2010-04-01
更新日
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