文献情報
文献番号
200936164A
報告書区分
総括
研究課題名
脊髄障害性疼痛症候群の実態の把握と病態の解明に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-109
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
牛田 享宏(愛知医科大学・医学部 学際的痛みセンター)
研究分担者(所属機関)
- 戸山 芳昭(慶應義塾大学 医学部 )
- 菊地 臣一(福島県立医科大学 医学部)
- 谷 俊一(高知大学 医学部 )
- 田口 敏彦(山口大学 医学部 )
- 山下 敏彦(札幌医科大学 医学部 )
- 柴田 政彦(大阪大学大学院 医学系研究科 )
- 竹下 克志(東京大学 医学部 )
- 中村 雅也(慶応義塾大学 医学部 )
- 内田 研造(福井大学 医学部)
- 井上 和秀(九州大学大学院 薬学研究院)
- 野口 光一(兵庫医科大学 医学部)
- 上野 雄文(国際医療福祉大学 保健医療学部)
- 高安 正和(愛知医科大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
脊髄障害性疼痛症候群は強い痛みの為、重度のADL障害を引き起こす治療抵抗性の難治性疼痛である。後縦靭帯骨化症や脊髄空洞症などの難病や頚椎症性脊髄症、脊髄損傷後など脊髄の障害をきたす様々な疾患に伴って発症するが、その病態は未だ解明されておらず、有効な治療法やその指針も開発されていない。そこで本研究では脊髄障害性疼痛症候群の実数の把握に取り組むと同時に、臨床面から脊髄障害性疼痛の患者の実態を明らかにし、現時点での診療ガイドラインの作成や将来的な治療法の開発に結びつけるための研究を行っていく。
研究方法
疫学調査は、取り込み基準、障害度のグレード分類を作成し、1)全国の整形外科および脳神経外科研修施設を過去1年間に受診した患者のうち、基準に合致する患者のグレード分類、行われた治療の内容等のアンケート調査、2)人口が1万人程度の琴平町で住民アンケート調査を行った。また原因疾病別調査として、圧迫性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄損傷など、本症候群を発症する患者について痛みや生活障害度の調査を行った。トランスレーショナルな研究は、脊髄fMRIの開発、脊髄挫滅モデル動物および脊髄神経根損傷モデル動物を用いての本症候群の病態と治療に関わる研究を行った。
結果と考察
圧迫性脊髄症に起因して本症候群を発症し、ADL障害を引き起こしている患者が最も多いこと、治療薬は抗てんかん剤が他の薬剤よりも有効性が高いことが全国アンケートから明らかとなった。また、各疾患別の調査では従来考えられていた以上に痛みに苛まされ、QOL低下を来している症例が多いことが明らかとなった。健常者での脊髄fMRI研究では、脊髄の神経活動を捉えることができたが、臨床応用するためには更なる研究が必要と考えられた。モデル動物での研究ではセロトニン受容体の変化やグリア細胞における遺伝子発現の変化が起こっていることが明らかにされた。今後はこれまでの基礎的研究の成果を考察しつつ、患者の症状を詳細に多面的に検討し、痛みや症状のタイプに応じてどの様な治療が有効であるかについて研究を進める必要があると考えられた。
結論
本研究では、圧迫性脊髄症などによって本症候群を発症している患者が多いこと、痛みに有効な薬剤もNSAIDよりも抗てんかん剤の有効性が高いことが明らかとなった。今後は多彩な本症候群の症状を詳細に調査・分析し、病態タイプを分類していくことで診療ガイドラインの作成に取り組んでいく。
公開日・更新日
公開日
2010-06-07
更新日
-