成育基本法を地域格差なく継続的に社会実装するための研究

文献情報

文献番号
202327002A
報告書区分
総括
研究課題名
成育基本法を地域格差なく継続的に社会実装するための研究
課題番号
21DA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 疫学・統計研究部)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 鈴木 孝太(愛知医科大学 医学部衛生学講座)
  • 市川 香織(東京情報大学 看護学部看護学科)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 後藤 あや(福島県立医科大学 総合科学教育研究センター)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 松浦 賢長(福岡県立大学看護学部)
  • 永光 信一郎(福岡大学 医学部小児科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(以下、成育基本法とする)」における、「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(以下、成育医療等基本方針とする)」に基づいた施策の評価を行うための指標や目標値の検討、指標の評価システムの開発と、評価システムを用いた指標及び実施状況のモニタリングを行い、次期成育医療等基本方針に沿った指標の作成、基本情報を成育医療等協議会に提供することである。
研究方法
 本年度の研究内容は次の4点である。
1.成育医療等基本方針に基づく評価指標のロジックモデルのプロトタイプの検討
2.評価指標をフォローアップするシステムの構築、指標および施策の実施状況のモニタリング
3.乳幼児健診情報システムの改修
4.新型コロナウイルス感染症禍における小児の認知発達等の心身の健康に関連する検討
結果と考察
1.成育医療等基本方針に基づく評価指標のロジックモデルのプロトタイプの検討
 本研究班では、令和3年度に作成された改訂前、および令和4年度の改定後の評価指標の検討の際、ロジックモデルを用いて検討した。本年度は、各自治体が成育医療等基本方針を踏まえた計画を策定する際の参考となるよう、プロトタイプを示した。各課題のロジックモデルを検討する際には、研究分担者および研究協力者がエビデンスとなる文献の検索や、様々な調査を参考にした。特にアウトプットに関する文献や調査がないものが多かったが、自治体が行っていると考えられる事業や、実施が望ましい事業などを指標案としてプロトタイプには組み込んだ。各自治体で成育医療等基本方針を踏まえた計画を策定する際には、今回研究班が示したプロトタイプを参考に、各自治体が行っている事業を各自治体のモデルに入れ込み、各自治体の課題改善、ひいては国全体の課題改善につながっていくことを期待する。

2.評価指標をフォローアップするシステムの構築、指標および施策の実施状況のモニタリング
 本研究班では、令和3年度に成育医療等基本方針に基づく評価指標について、現状値や目標値、経年変化、地域格差などがモニタリングできるモニタリングシステムのベースを構築した。本年度は、改訂された評価指標に対応するためのモニタリングシステムの改修を行った。本年度公開したモニタリングシステムでは、経年変化グラフと地域格差グラフついて、掲示していないものはすべて「-」としている。しかし、掲示しないもの、データがないために掲示できていないもの等、その背景がさまざまである。よって、今後の改修では、より利用者に分かりやすく活用しやすいものへと変更していく必要があると考える。

3.乳幼児健診情報システムの改修
 乳幼児健診情報システムは、各市区町村が容易に乳幼児健診データを集積でき、それらのデータの集計および分析を行い、その結果を日々の事業に役立てる一助となるツールとして、平成27年度に配布開始された。本年度は、令和4年度に改定された成育医療等基本方針に基づく評価指標に対応するための改修を行った。今後は、成育医療等基本方針に基づく評価指標のモニタリングとしてより活用されていくことが期待される。

4.新型コロナウイルス感染症禍における小児の認知発達等の心身の健康に関連する検討
 全国のエコチル調査参加者のうち、本研究への承諾が得られたユニットセンターの学童期検査(小学2年生)に参加した児を対象とし、学童期検査(小学2年生)を新型コロナウイルス感染症流行前(2019年度)と流行後(2020年度、2021年度、2022年度)に受けた児について、コロナ禍の経験年数別にConners CPT3(CPT)を用いて分析することとした。本年度は、エコチル調査コアセンターや各ユニットセンターへの本研究への協力依頼等を行い、承諾が得られたユニットセンターのデータを取得した。詳細な解析は次年度以降に持ち越すこととした。
結論
 本年度は、各自治体が改定された成育医療等基本方針を踏まえた計画を策定していく際の参考となるよう、ロジックモデルの整理を行い、プロトタイプを作成した。また、成育医療等基本方針に基づく評価指標をモニタリングしていく際に活用されるよう、令和3年度にベースを構築したモニタリングシステムシステムに、データやグラフ等を登録し、公開した。乳幼児健診情報システムについても、改定された成育医療等基本方針に基づく評価指標に対応するように改修を行い、新年度から活用できるようにした。そして、新型コロナウイルス感染症対策による小児の発育発達に関する検討では、エコチル調査の全国のユニットセンターへ協力依頼を行い、多くのユニットセンターから協力の承諾を得、データを取得し、今後詳細な分析を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2024-07-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202327002B
報告書区分
総合
研究課題名
成育基本法を地域格差なく継続的に社会実装するための研究
課題番号
21DA1002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
山縣 然太朗(国立大学法人 山梨大学 大学院総合研究部 医学域 社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 上原 里程(国立保健医療科学院 疫学・統計研究部)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
  • 鈴木 孝太(愛知医科大学 医学部 衛生学講座)
  • 市川 香織(東京情報大学 看護学部 看護学科)
  • 相田 潤(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野)
  • 後藤 あや(福島県立医科大学 総合科学教育研究センター)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 松浦 賢長(福岡県立大学看護学部)
  • 永光 信一郎(福岡大学 医学部小児科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(以下、成育基本法とする)」における、「成育医療等の提供に関する施策の総合的な推進に関する基本的な方針(以下、成育医療等基本方針とする)」に基づいた施策の評価を行うための指標や目標値の検討、指標の評価システムの開発と、評価システムを用いた指標及び実施状況のモニタリングを行い、次期成育医療等基本方針に沿った指標の作成、基本情報を成育医療等協議会に提供することである。
研究方法
 3年間で実施した研究内容は次の7点である。
1.成育医療等基本方針に基づいた施策の評価を行うための指標の作成及び目標値の設定  (令和3年度)
2.指標、実施状況を把握するモニタリングシステムの構築(令和3年度~5年度)
3.構築したシステムを用いた指標及び施策の実施状況のモニタリング(令和4年度~5年度)
4.次期成育基医療等基本方針に関する指標の提案に向けた検討(令和4年度)
5.新型コロナウイルス感染症対策による小児の発育発達に関する検討(令和4年度~5年度:令和4年度より追加)
6.乳幼児健診情報システムの改修(令和5年度:令和5年度に追加)
※4´. 成育医療等基本方針に基づく評価指標のロジックモデルのプロトタイプの検討(令和5年度)
結果と考察
 令和3年度および4年度に、改定前と後の成育医療等基本方針に基づく評価指標案の検討を行い、指標案を国(厚生労働省母子保健課)に提出した。指標案検討の際には、ロジックモデルを用いた。新指標は本研究班からの指標案を基に関係省庁等間での調整が行われ、最終的に69指標が新指標として決定された。令和5年度は、各自治体が改定された成育医療等基本方針を踏まえた計画を策定していく際の参考となるよう、ロジックモデルのプロトタイプを作成した。各自治体が計画を策定する際には、今回研究班が示したプロトタイプを参考に、各自治体が行っている事業を各自治体のモデルに入れ込み、各自治体の課題改善、ひいては国全体の課題改善につながっていくことを期待する。
 また、成育医療等基本方針に基づく評価指標をモニタリングしていく際に活用されるよう、令和3年度にモニタリングシステムシステムのベースを構築し、令和5年度には改修を行った。国のモニタリングだけでなく、各自治体が各々の都道府県の状況をモニタリングをしたり、全国的な推移を把握する際も活用されることを期待する。
 乳幼児健診情報システムは、成育医療等基本方針に基づく評価指標となった健やか親子21(第2次)の指標や、新たに乳幼児健診時に把握することとなった指標値のデータ収集に対応するための改定を行った。乳幼児健診情報システムも各自治体の経年変化をグラフ化できる機能や、都道府県版には市区町村別の集計ができる機能もあるため、国レベルのモニタリングだけでなく、自治体でのモニタリングにもより一層活用されていくことを期待する。
 新型コロナウイルス感染症対策による小児の発育発達に関する検討では、令和4年度に、エコチル調査(山梨県)のデータを用いて解析を行った。マスク着用の児への影響を検討したが、本研究結果では児への影響は見られなかった。コロナ禍のマスク着用における研究は、国内外でもまだ十分ではないため、大変貴重な結果となったと考えられる。令和5年度は、エコチル調査の全国のユニットセンターへ協力依頼を行い、多くのユニットセンターから協力の承諾が得られた。日本全体のデータであることから、結果は一般化できると考えられる。令和5年度は、詳細な解析には至らなかったが、来年度以降、詳細な分析を行っていく。
結論
 本研究班では、令和3年度および4年度に、改定前と後の成育医療等基本方針の記載に基づき、ロジックモデルを用いて指標案の検討を行った。新指標は本研究班からの指標案を基に関係省庁等間での調整が行われ、最終的に69指標が新指標として決定された。令和5年度は、各自治体が改定された成育医療等基本方針を踏まえた計画を策定していく際の参考となるよう、ロジックモデルのプロトタイプを作成した。
 また、成育医療等基本方針に基づく評価指標をモニタリングしていく際に活用されるよう、令和3年度にモニタリングシステムシステムのベースを構築し、令和5年度には改修を行った。そして、乳幼児健診情報システムは、成育医療等基本方針に基づく評価指標に対応するための改修を行った。
 新型コロナウイルス感染症対策による小児の発育発達に関する検討では、令和4年度に、エコチル調査(山梨県)のデータを用いて、そして令和5年度は、エコチル調査の全国のユニットセンターへ協力依頼を行い、多くのユニットセンターから協力の承諾を得、データを取得した。

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202327002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
改定前と後の成育医療等基本方針の記載に基づき、ロジックモデルを用いて指標案の検討を行い、学会誌等からの投稿依頼を受けた。
臨床的観点からの成果
新型コロナウイルス感染症対策による小児の発育発達について、エコチル調査(山梨県)のデータを用いて分析した結果、顕著な影響は認められなかった。
ガイドライン等の開発
乳幼児健診情報システムの改修と新指標によるモニタリングシステムを構築して、国のホームページに搭載した。
その他行政的観点からの成果
成育医療等基本方針の新指標は本研究班からの指標案を基に関係省庁等間での調整が行われ、最終的に69指標が新指標として決定された。
その他のインパクト
成育医療等基本方針に基づく指標に関して、学会でのシンポジウムや国の研修会の講師を務めた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
審議会での議論(3)、成育医療等基本方針に基づく指標への反映(2)、国のホームページへの乳幼児健診情報システムおよびモニタリングシステムの搭載(2)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Arai T, Goto A
Parents' needs and satisfaction levels for parenting support schemes provided by local government: Secondary analysis of cross-sectional survey data
J Prim Care Community Health  (2023)
doi: 10.1177/ 21501319 23119997 8
原著論文2
Shinno K, Nagamitsu S
Toward the Goal of Leaving No One Behind: Orthostatic Dysregulation
JMA Journal , 6 (3) , 334-336  (2023)
原著論文3
Fujita T, Ihara Y, Hayashi H, et.al
Scalp EEG-recorded high- frequency oscillations can predict in Panayiotopoulos syndrome seizure activity
Clinical neurophysiol ogy , 156 , 106-112  (2023)

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
202327002Z