浄化槽汚泥等の減量化及び再生利用促進に関する研究

文献情報

文献番号
199700688A
報告書区分
総括
研究課題名
浄化槽汚泥等の減量化及び再生利用促進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
大森 英昭(財団法人日本環境整備教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井上義夫(東京工業大学)
  • 小川人士(玉川大学)
  • 中井裕(東北大学)
  • 中嶋睦安(日本大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
合併処理浄化槽の設置整備促進並びに単独処理浄化槽の合併処理化に伴い、今後、多量の汚泥の発生が見込まれているが、有機成分を豊富に含む食品工場等からの汚泥と併せて処理することにより、汚泥処分量の減量化及び再利用の促進を図ることが可能か検討を行い、減量化に係る方策並びに食品工場等からの汚泥と浄化槽汚泥を混合処理を目指したシステムの構築を研究した。
本研究では、浄化槽汚泥が単独・合併の別並びに建築用途等によって性状が異なることを考慮しつつ、発生源における減量・減容化技術、濃縮技術、中継基地の活用を開発するとともに、食品工場等の有機性廃棄物を資源化するために必要な収集運搬システム、コンポスト化技術等の基礎的な検討を行った。さらに、汚泥の資源化、再利用の方法について種々検討を行い、再生物利用の促進を図るために必要な検討も行った。
研究方法
本研究は5つの内容に大別されるが、以下にそれぞれの研究方法を示す。
(1)浄化槽汚泥の減量・減容化技術の開発
浄化槽汚泥濃縮車の濃縮過程における溶解性成分の除去機構及び減圧浮上の機構に係る検討を行った。また、浄化槽汚泥の減量・減容化にかかる技術開発を行うため、0.5mm目幅ドラムスクリーンを用いた浄化槽流入水の前処理及び汚泥の濃縮実験を行った。
(2)汚泥処理過程及び再生物の衛生的安全性の評価に関する研究
汚泥処理過程及び再生物の衛生的な安全性の評価を確立するため、指標ウイルスとしてポリオウイルスを汚泥に添加し、汚泥へのウイルス吸着量と吸着ウイルスの熱による安定性/不活化を調べた。方法としては、ポリオウイルスにはSabin1型株を用い、ウイルスの定量にはVero細胞によるプラーク形成法を用いたが、実際には、汚泥にウイルスを添加、 静置してウイルスを吸着させた後、遠心洗浄して未吸着ウイルスを除いた。また、吸着ウイルスの溶出には、ホウ酸緩衝液を用いた。さらに、汚泥吸着ウイルスについて、活性の安定性を経時的に追跡し、汚泥吸着及び培養液に懸濁したウイルスの熱安定性を調べた。
(3)コンポスト化過程における微生物叢及び分離菌の性状解析に関する研究
汚泥資源化及び再利用を進めるために有効な手法であるコンポスト化処理過程で問題となる臭気対策として、低濃度においても悪臭の発生原因となるスカトール及びインドールに注目して、これらの動態を観察した上で、物質を無臭化する微生物の分離を試み、その菌株を同定した。特に、スカトール消去能を持つ4菌株について、スカトール代謝経路及び代謝産物の微生物に対する影響について検討を行った。
(4)汚泥からプラスチックを生産する等の再生技術の開発
浄化槽の余剰汚泥を利用して生分解性プラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を生産するための基礎的研究として、PHAの直接生産と、共重合PHAの単量体単位組成に対する培地条件の影響についても検討をおこなった。
(5)汚泥の流通面と再生品、成型物の利用、処理水の再利用と課題
浄化槽汚泥を成形した苗ポットを試作し、汚泥性状の影響及び効果について検討を行った。また、これらのポットや浄化槽汚泥から製作される各種肥料の流通段階における課題について検討を行った。
結果と考察
上記研究課題については、それぞれ以下のとおりである。
(1)接触ばっ気槽内汚泥と嫌気汚泥の混合により溶解性成分が減少したことから、混合処理が分離液の水質向上に有効であり、また、減圧浮上時の発生ガスは、ばっ気撹拌に伴う空気の溶解及びフロックへの吸着による影響が大きいと考えられた。目視による観察からフロックの粒径は5~20mm程度であり、また、観測から浮上速度は15~25cm/秒のものが多いことがわかった。さらに、目開き0.5mmドラムスクリーンの実験では、前処理の場合、1mm以上の固形物は大部分が除去された。汚泥の濃縮では、汚泥濃度6%前後、回収率95%程度が得られたことから、前処理と汚泥濃縮を同一機械で実施することが可能と考えられた。
(2)溶出ウイルス量は汚泥の種類により著しい差が認められたが、いずれからも感染性ウイルスが溶出された。汚泥のウイルスの最大吸着量は、汚泥1g当たり109PFU以上を示した。吸着ウイルスは、経過28日目において添加ウイルスの1/1000程度まで不活化されたが、感染性ウイルスの生存が確認された。また、培養液中のウイルスは、50℃、1時間で急速に感染性を失ったが、吸着したウイルスは、この処理では殆ど失活せず、60℃、1時間で感染性を失った。したがって、高い抵抗性を示した吸着ウイルスに対する処理方法について、今後、さらに検討を行う必要性があると考えられた。
(3)C.malenominatum A-3株、C.aminovalericum A-4株、C.histolyticum IAI-4株では、スカトールは3-メチルオキシインドール、オキシインドールを経てイサチンへ代謝されると推定された。インドールはオキシインドールからイサチンへ代謝される経路が推定された。C.carnis AI・6株では、スカトールはインドールに代謝され、以降は上記の株同様にイサチンへと代謝されることが示された。また、これらのスカトール代謝経路のー部の代謝酵素はスカトール及びインドールを培地に添加することによって誘導合成されることが示された。このことから、これらの代謝経路と菌株の働きから臭気対策への効果が期待されると考えられた。
(4)水素細菌A.latusにより、スクロース/3-ヒドロキシプロピオン酸混合炭素源からP(3HB-co-3HP)の単量体単位組成は、培地のpH値に強く依存することがわかり、培地のpH値制御により組成均一性の高い、結晶形態と物性値の均一度の高いP(3HB-co-3HP)を生合成できることがわかった。浄化槽汚泥は窒素化合物が多いため、その環境下でPHAを高効率で産生するAlcaligenes latusを使用して、直接PHA生産を試みた。しかし、A.latusの培養により、浄化槽汚泥中の炭素源から生分解性プラスチックを直接生産することはできなかった。今後、浄化槽汚泥性状の調査と調節、最適菌株の選択等が必要であると考えられた。
(5)付加価値を得るため、浄化槽汚泥やコンポスト製品の成型を行い、作物栽培等への適用を試みたが、結果としては、不完全なコンポストでの成型品は土壌中で発酵し、根に重大な障害を生じることとなった。また、汚泥を減量化や資源化する場合の効率的な方法にペレット化があるが、このペレットをボイラーの熱源等に利用すれば相当量の減量化が期待できると考え試作を行った。植物種子や建設汚泥と組み合わせることで、緑化や床土として有望であると考えられた。
結論
浄化槽汚泥の有効利用方法には、農業利用やプラスチック生産等の様々な分野への適用可能性があることがわかった。現状では、浄化槽汚泥量の増大傾向に対して、減量化及び減容化が必要であり、浄化槽の現場及び収集運搬過程における対策が効果的であった。一方、浄化槽汚泥のコンポスト化における臭気対策に、臭気成分の分解菌が有効であることがわかった。なお、これらの汚泥処理過程における病原微生物の影響については、流通段階における課題ともなるため不活化処理が重要であり、その具体的な対策についても検討を行った。さらに、汚泥から有効利用に生産した生産物の流通過程の課題についても検討を加え、今後の方向性を示唆することができた。

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