文献情報
文献番号
200936162A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)に関する遺伝疫学的検討と診療ガイドラインの作成
課題番号
H21-難治・一般-107
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
塩谷 隆信(秋田大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 村田勝敬(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 橋本学(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 佐竹將宏(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 佐野正明(秋田大学 大学院医学系研究科)
- 藤本圭作(信州大学 医学部保健学専攻)
- 小泉昭夫(京都大学 大学院医学系研究科)
- 井上博雅(九州大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
遺伝性出血性末梢血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT,オスラー病)は,多臓器疾患であるために臨床症状が極めて多岐にわたり,患者は内科のみならず,外科,耳鼻咽喉科,皮膚科,歯科など極めて多くの科を初診する.さらに,合併する脳動静脈奇形あるいは,肺動静脈奇形の破裂により時に致死的となることも稀ではない.本研究は,日本におけるオスラー病の発生頻度・罹病率について遺伝疫学的検討を行ない,本疾患による致死的合併症の予防,治療のための診療ガイドライン作成,さらに将来的には遺伝子治療の足がかりを探ろうとするものである.
研究方法
昭和54年~平成21年までの30年間に秋田大学医学部でオスラー病と診断した7家系137症例(男性67例,女性70例)を対象とし,臨床像の検討を行った.次に,オスラー病症例の家系調査から有病率を疫学的に検討し,さらにオスラー病の責任遺伝子の解析を行なった.
結果と考察
7家系137例中43例(31%)がオスラー病と診断された.2家系で遺伝子連鎖解析が施行され,HHT1(encoding endoglin; ENG) との連鎖が示唆され,4家系でENGの3つの変異(G→C transversion, base pair insersion, base pair deletion)が確認された.遺伝疫学的検討から,日本のオスラー病の有病率は1:8,000~5,000 と推定された.4家系に肺動脈静脈奇形(Pulmonary arteriovenous malformation; PAVM)が家族性にみられ,オスラー病43例中17例(40%)にPAVMが合併した.PAVM合併HHTの1例で脳動静脈奇形の破裂,2例で脳膿瘍の致死的合併症が併発した.多発性PAVM6例に経カテーテル肺動脈塞栓術が施行された.
オスラー病は欧米に多い疾患であり,日本における有病率は低いとみなされているが,その理由の一因として,本症に関する従来の診断規準の甘さが考えられる.
本研究の成績から,オスラー病の新しい診断規準として以下の項目を提案したい.
1.繰り返す鼻出血,2.皮膚粘膜の末梢血管拡張,3.肺,脳,肝臓,脊髄,消化管の動静脈奇形.4.一等親以内の同一患者の存在,
以上の項目のうち,3つ以上を満たすものを確診,2つを疑診,1つ以下は可能性低い.
オスラー病は欧米に多い疾患であり,日本における有病率は低いとみなされているが,その理由の一因として,本症に関する従来の診断規準の甘さが考えられる.
本研究の成績から,オスラー病の新しい診断規準として以下の項目を提案したい.
1.繰り返す鼻出血,2.皮膚粘膜の末梢血管拡張,3.肺,脳,肝臓,脊髄,消化管の動静脈奇形.4.一等親以内の同一患者の存在,
以上の項目のうち,3つ以上を満たすものを確診,2つを疑診,1つ以下は可能性低い.
結論
遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)は,日本においても稀ならず存在し,その頻度は1:8,000~5,000 と推定される.責任遺伝子の1つは第9染色体9q(ENG)の変異に連鎖する.
公開日・更新日
公開日
2010-05-14
更新日
-