安置所等における衛生基準の確立に向けた実証研究

文献情報

文献番号
202326021A
報告書区分
総括
研究課題名
安置所等における衛生基準の確立に向けた実証研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23LA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 剛(北里大学 医学部衛生学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,644,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多死社会において、死後の処置や安置、葬儀・弔い、埋葬についてその公衆衛生的課題を抽出し、多死社会とどのように共生していくか、しっかり議論検討すべき時期が到来している。火葬場(炉)数に制限があるなか、家族葬を含めた多様な葬儀の増加と安全な弔いの両立をどのように行うべきか、特に安置所の室内環境のデザインという観点での検討や基準作りは不十分である。本年度は、文献調査ならびに全国調査によって、葬儀社や御遺体安置所の実態についてその概要を把握することをめざした。
研究方法
文献調査ならびに全国調査で、葬儀社や御遺体安置所の実態についてその概要を把握した。2023年12月、全国電話帳掲載の全葬儀関連業者15,513社に郵送質問紙調査を実施した。質問項目は、事業形態や規模、社員の有資格、ご遺体の搬送・安置(一部エンバーミング)の作業実態、作業場環境や感染対策に関する内容とした。
結果と考察
文献調査(1)遺体を取り扱う解剖を実務とする職業(法医学、病理学等)における感染症対策指針に関して、国内外のガイドライン・マニュアル・文献検索を行い、葬儀業者がご遺体を取り扱う際のとるべき感染対策について考察した。(2)葬儀労働者の安全衛生に関する国内外の文献を抽出した。遺体からの出血や体液、排泄物流出は葬儀の6%で発生し、遺体からの体液は感染に十分である可能性がある。感染は、接触感染のみでなく空気感染のリスクも存在する。
葬儀従事者は遺体からの感染に関する知識が不十分である。
医療者側からの遺体に関する情報提供に課題があり、葬儀従事者への感染に関する情報提供が必要である。看護師は「安置ケア」によって体液を効果的に止めていない可能性がある。火葬場において火葬、遺骨処理、清掃工程等で発生するナノ粒子の肺胞における沈着は他の部位の3.0~4.3倍である。
米国では、葬儀社に係わる基準として、 ホルムアルデヒドへの職業曝露、 ハザードコミュニケーション、血液媒介病原体からの保護および 従業員の曝露および医療記録へのアクセスを取り上げている。(3)安置施設でのドライアイスからの二酸化炭素発生量について,換気量との関係を検討した。エンバーミングによるホルムアルデヒドの室内濃度について、葬儀社安置所での情報は確認できなかった。来年度調査を検討する。(4)大規模災害時の臨時遺体安置管理に関する文献調査では、遺体の扱いに関するガイドラインが主であり、遺体の保管方法の中で室内環境に関連する記載は、冷蔵とドライアイスのみであった。安置所においての人への健康リスクは主にドライアイスによるCO2濃度上昇が注意事項として示唆された。
全国調査とCO2実測調査:720件の回答を得た。うち612件は企業、67件は個人事業、247団体は葬儀関連業界に未加盟だった。葬儀業従事社員数は平均8.8人と大半が小規模だった。年間の葬儀取扱件数は平均276件と過去5年で増加傾向だった。ご遺体安置用冷蔵庫または冷蔵室を有するのは27%にとどまった。安置期間平均値は地域差があった。9割の葬儀場でドライアイスを使い、使用量平均は夏季13kg/日・体、冬季11kg/日・体だった。室内CO2濃度を留意して対策するのは33%だった。ご遺体取り扱い作業に手順を定めているのは44%だった。ご遺体の感染症有無の確認は400件(55%)で、73件(10%)はCOVID-19も含め確認していなかった。一方、遺体取扱いにより労働者が感染した経験を11件でみとめた。ご遺体の体液に触れる可能性があるのは41%で、73%が「感染症罹患のご遺体の取扱いの安全性に関して不安がある」と回答した。遺体安置室の環境課題を明らかにするため、ドライアイスと線香を使用しCO2濃度と空気質AQIを測定した。実証試験の結果、換気がない状態では衛生基準を大きく超え、換気後もCO2濃度が依然として高いことが明らかになった。
結論
葬儀業関連労働者の感染対策や、ドライアイス(CO2中毒)や消毒取扱い方法に、改善ならびにガイダンスを設ける必要性が示唆された。安置室や冷蔵機能不足を前提に、葬儀社・安置室の環境管理指針を提言する必要性が高い。

公開日・更新日

公開日
2025-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202326021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,499,000円
(2)補助金確定額
8,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,807,112円
人件費・謝金 1,003,768円
旅費 318,486円
その他 3,514,634円
間接経費 1,855,000円
合計 8,499,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-11-06
更新日
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