デジタル技術を活用した建築物環境衛生管理基準の達成等に向けた検証研究

文献情報

文献番号
202326020A
報告書区分
総括
研究課題名
デジタル技術を活用した建築物環境衛生管理基準の達成等に向けた検証研究
課題番号
23LA1006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
阪東 美智子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 開原 典子(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 三好 太郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 林 基哉(北海道大学 大学院工学研究院)
  • 柳 宇(工学院大学 建築学部)
  • 鍵 直樹(東京工業大学 環境・社会理工学院)
  • 尾方 壮行(東京都立大学 都市環境学部建築学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
建築物衛生法が求める各種項目のうち、特にねずみ等の防除や清掃等において、デジタル技術の活用でその目的の達成が見込まれる技術、機器、ソフトウェア等を抽出するとともに、手動で行われた結果との比較検証等を実施し、適切な維持管理方法の探索とその際の判断基準や留意点を明確化することによって、政府全体の方針であるデジタル原則の達成と公衆衛生の向上を目的とする。今年度は、「IoT を活用した建築物衛生管理手法の検証のための研究(研究代表者:金勲)」においてカバーされていない維持管理項目について、IoT で対応可能なものを抽出し、知見や課題を整理するとともに、デジタル活用の現状やニーズ等を把握する。
研究方法
研究は分野ごとに以下の部会に分かれて実施し、全体会議において情報共有・意見交換を行い、研究を進めた。
①環境衛生管理の実態と課題の把握
②デジタル技術のシーズの把握
③空気環境・粉じんの調整に関するデジタル化技術の特性および適用課題の検討
④ネズミ・衛生害虫の防除に関するデジタル化技術の特性および適用課題の検討
⑤清掃に関するデジタル化技術の特性および適用課題の検討
⑥飲料水、雑用水・排水等の管理に関するデジタル化技術の特性および適用課題の検討
結果と考察
1)環境衛生管理へのデジタル技術の利用レベルをモデル化し、目視や検査によって行われる環境衛生管理項目がセンシングで対応できれば、環境衛生管理の信頼性が向上する可能性があることを示した。ドレンパンの点検をモデルケースとし、人件費・工数等による試算における課題を整理し、点検の実態や効果について、現場の実務者等から情報を得る必要があることを示した。
2)空気環境項目については、連続測定器により置き換えが可能なものもあるが、例えば省令の機器の精度の表現などについては、見直しが必要になるものと考えられる。空調設備の維持管理については総合的に評価するところもあり、自動化などにおいてはまだ課題があるものと考えられる。CO2センサーについては、その多くが、一定期間内の最小値を大気中CO2濃度とみなして自動補正を行うアルゴリズムが使用されていることから、24時間使用される等の理由で一定期間中にCO2濃度が大気濃度相当まで下がらないような居室においては注意が必要である。浮遊微生物については、デジタル化の進展を踏まえると、今後微生物のリアルタイムの測定が有用なツールになると考えられる。
3)ねずみ・衛生害虫防除については、市販されているデジタル化商品18機種について、対象害虫、どのような調査に活用できるか、商品の概要、費用、主な使用場所、使用頻度、将来的な発展性を整理した。ネズミについては赤外線センサーを用いたカウンターまたは暗視カメラが主流で、初回調査や難防除時の生息調査に利用可能であるが、それ以外の調査・計画・対策・効果判定で利用可能なデジタル機器はほとんどないことが明らかになった。18機種のデジタル機器の活用について、PCO協会会員のアンケート調査(N=112)では、赤外線センサー式暗視カメラの1機種を除いてほとんど使用実績がなかった。アイトラッキングシステムを使った目視点検のデータ分析では、熟練者と素人で確認場所や点検時間に大きな違いが見られた。
4)清掃分野におけるデジタル機器について収集した情報から、最も導入が容易と思われる清掃点検報告システムを取り上げ、点検報告書のデジタル様式の記入用紙案を作成した。また、トイレの清掃維持管理状況を把握するために、各種センサーを用いた実証実験の方法について検討した。アイトラッキングシステムを使った目視点検のデータ分析からは、どの場所をどのように確認しているのかを「見える化」することで、カメラ等による点検と人による目視との点検内容の違いを具体的に検証できる可能性が示唆された。
5)水の衛生管理に活用できるデジタル技術として、水中で稼働できる清掃ロボット並びに貯水槽等水関連施設の点検に活用できる可能性のあるロボット等がある。水中で稼働できるロボットは、技術水準としては活用可能な段階に到達しているが、点検作業者が手動で操作する製品が中心であった。水関連設備点検技術においても、点検ロボットや点検ドローンが販売されているが、手動での操作が前提とされているものが主要であり、定期点検、清掃の代替手法としてこれらの製品を活用するためには、多くの障壁が残されているといえる。
結論
環境衛生管理へのデジタル技術の適用について、現状と課題を整理した。空気環境の連続測定以外では課題が多く普及が進んでいないことを把握した。また、目視点検についてアイトラッキングシステムを使った試行調査を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202326020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,619,000円
差引額 [(1)-(2)]
381,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,268,280円
人件費・謝金 987,978円
旅費 73,730円
その他 1,289,497円
間接経費 0円
合計 9,619,485円

備考

備考
自己負担485円

公開日・更新日

公開日
2024-09-24
更新日
-