水道情報の活用等による技術水準の確保及び技術継承のための研究

文献情報

文献番号
202326018A
報告書区分
総括
研究課題名
水道情報の活用等による技術水準の確保及び技術継承のための研究
課題番号
23LA1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
清塚 雅彦(公益財団法人水道技術研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 市川 学((公財)水道技術研究センター 浄水技術部)
  • 増田 貴則(国立保健医療科学院)
  • 山村 寛(中央大学 理工学部)
  • 丸山 喜久(千葉大学 大学院工学研究院)
  • 國實 誉治(東京都立大学 都市環境学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,760,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道が直面する課題に対応し、水道の基盤強化を図ることが求められている。本研究では、水道事業体が保有するビッグデータを活用することで、浄水場の運転管理の負担軽減を検討し、水道管路の維持管理についても漏水予測モデルや、既存のデータ収集手法の見直し等を図る。データを活用して構築したGISシステム及び事故発生要因の分析結果等を提示することによって、管路の維持管理・更新計画の立案等データに基づいた技術継承を含めたアセットマネジメントの一助とすることを目的としている。
研究方法
(1)浄水場の運転管理及び水道管路網の維持・点検におけるビッグデータ活用方策の検討(2)ビッグデータに基づく浄水場運転管理予測手法の検討(3)ビッグデータに基づく水道管路に関する配水管維持管理の実態把握及び解析(4)水道管路事故データ等を活用した水道管路アセットマネジメント手法及び水道管路技術の継承に関する手法の検討に取り組んだ。
結果と考察
(1) 全国の132水道事業体に対し、ビッグデータやAI・機械学習の活用状況等の実態把握を目的としたアンケートを実施し、97水道事業体から回答を得た。その結果、ビッグデータやAI・機械学習を活用している事業体は限られていることが確認できた。また、Web of Science Core Collectionを用いた文献調査で、管路分野について文献を選択して、海外文献計53件の要点を翻訳した。
(2)砂ろ過の損失水頭に影響する因子を整理し、研究協力事業体から入手したデータを元にニューラルネットワーク、LSTM等の手法により、砂ろ過の損失水頭を予測するモデルを構築した。モデルの精度を比較した結果、時系列変化を学習するLSTMモデルが最も高精度であった。また、入力に必要なデータは、ろ過速度、水温、凝集剤注入量、ろ過池流入水濁度等で、浄水場で容易に測定可能なデータから損失水頭の予測が可能であることがわかった。
(3)衛星より取得した干渉SAR時系列解析を用いて地盤変動量の推定を行った。千葉県を例に、ALOS-2の画像を用いて干渉SAR時系列解析を実行し、地盤沈下の発生状況を推定した。さらに、公開されている水準測量結果と比較することで推定精度を評価した。その結果、地盤変動が目立った地域においては、7年程度のデータがあれば干渉SAR時系列解析の結果は地盤沈下の傾向を捉えられることが分かった。
(4)既存のデータ収集手法を見直すために、水道技術研究センターで実施している漏水事故に関するアンケート調査の課題点を明らかにし、回答の負担軽減と、より精度の高い回答結果を得られるよう課題点を改善した入力フォーマットを作成した。また、国土地理院の地図データを活用できるフリーでオープンソースなQuantum-GIS(QGIS)を導入しデータ収集を行うために、管路事故情報の管理を目的としたマニュアル案を作成し、研究協力事業体にシステムを導入してもらい、一部事業体ではデータ入力を開始している。なお、協力事業体に導入から運用まで意見をフィードバックしてもらい改善に努めている。
結論
(1)アンケート結果よりビッグデータ等の活用については、予測精度等に課題はあるものの、管路の劣化診断・漏水調査や浄水場の薬品注入量の設定等に活用されていることが確認できた。また、海外の文献調査では、水道管路の漏水検知、破損予測技術等の開発状況や技術動向について最新動向を把握し、ビッグデータの利活用状況、課題点を抽出した。
(2)損失水頭予測モデルの開発および、ろ過速度を変化させたシミュレーションを行った結果、予測モデルとしてLSTMが最適であることが示された。また、損失水頭を予測するにあたって、モデルに入力したろ過速度、水温、凝集剤注入量、ろ過池流入水濁度等、浄水場で容易に測定可能なデータであり、実務へ応用できる簡略さを持つと考えられる。
(3)地盤変動が目立った地域においては、干渉SAR時系列解析の結果は地盤沈下の傾向を捉えられることが分かった。一方で、±10 mmよりも小さな地盤変動は、干渉SAR時系列解析によって地盤変動量を推定することはやや困難であった。千葉県内の水道管漏水データを用いて漏水箇所付近の地盤変動量を調べたところ、地盤沈下が顕著な地域に漏水箇所が集中していたため、地盤沈下が漏水に影響を与えていると考えられる。
(4)本年度は、水道事業体の水道管路事故データを有効利用するためツールの提案を行い、導入と運用のためのマニュアルを作成した。QGISのようなデジタル情報を共有して活用することが可能なソフトを使用することで、事業体同士が互いの管路情報を共有できるため、震災等で被災した事業体への復旧支援活動の際にも有効に活用できると考える。

公開日・更新日

公開日
2024-10-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-10-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202326018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国の132水道事業体に対してアンケート調査を実施し、管路の劣化診断や浄水場の薬品注入量の設定等にビッグデータが活用されていることを確認した。また、海外の文献調査を行い、漏水検知、破損予測の技術において、人工知能や機械学習技術の利用が近年拡がっていることを確認した。さらに、浄水分野において、ろ過速度、水温、凝集剤注入量等、浄水場で容易に測定可能なデータから砂ろ過の損失水頭を予測するモデルの構築を行い、管路分野では衛星より取得した干渉SAR時系列解析を用いて地盤変動量の推定を行った。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
202326018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,488,000円
(2)補助金確定額
7,488,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,526,937円
人件費・謝金 294,255円
旅費 2,539,710円
その他 1,410,241円
間接経費 1,728,000円
合計 7,499,143円

備考

備考
自己資金11,122円、利息21円

公開日・更新日

公開日
2024-10-08
更新日
-