文献情報
文献番号
202326015A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機における都道府県内の自治体・関係部局・関係機関との連携構築のための研究
課題番号
23LA1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
名越 究(島根大学 医学部環境保健医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 麻生 保子(和洋女子大学 看護学部)
- 加藤 典子(大分県立看護科学大学 看護学部)
- 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
- 町田 宗仁(国立保健医療科学院 公衆衛生政策研究部)
- 片岡 穣(さいたま市保健所)
- 藤田 利枝(長崎県県央保健所)
- 松林 恵介(吹田市保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
災害等の健康危機管理事案が発生した際、中央官庁、都道府県、市町村の各レベルで必要な対策が矢継ぎ早に企画・立案される。それを迅速かつ的確に実施するため、保健所や医療機関等を含めた関係者間の緊密かつ円滑な連携が求められる。
新型コロナウイルス感染症への対応においては、感染症法、新型インフルエンザ特措法等に基づき、検査体制の整備、発熱外来等受診体制の整備、大規模な積極的疫学調査、感染症対応が可能な医療機関への広域的な入院調整、宿泊療養・在宅療養への対応などの対策が行われてきた。加えて、住民の生活と健康を守るために、教育、労働、交通、産業など過去類を見ない多数の関係者が参加した対策が広範かつ同時に展開され、公衆衛生領域との調和と協調を図りながら推進されてきた。
これまで、「地域における健康危機管理について~地域健康危機管理ガイドライン~(平成13年3月)」や「地域保健対策の推進に関する基本的な指針(令和4年2月改訂)」において、都道府県と保健所を設置する市あるいは特別区、一般の市町村、医師会、医療機関、福祉関係団体等、健康危機管理時に多様な団体が関係することは知られてきた。しかしながら、実際の連携の場では、「健康危機に対応する事業を調整する際に設置する組織とはどのようなものか」、「連携にあたって事前、事案発生後にまず決めておくべきことは何か」、「長期的な連携のために必要なものは何か」といった、円滑な連携のために実際に必要なノウハウが共有されていない。
本研究では、コロナ禍の中、全国で実際に展開された公衆衛生関連の施策を中心に、国、地方自治体(都道府県、市町村、特別区)間、あるいは同一組織内の関係部局(危機管理部局と衛生部局)・出先機関(保健所、保健センター)、医師会、医療機関等、関係者間でとられた意思疎通・連携の実態調査を行い、上述のような現場で求められるノウハウの抽出を行う。さらに、今後発生が懸念される様々な健康危機管理事案の種別毎にシミュレーションを行い、共通の留意点や事案ごとの相違点等を整理する。これらの成果により、自治体の健康危機管理担当者向けに、保健所による「健康危機対処計画」の策定や、感染症法に基づき都道府県が設置し、都道府県・保健所設置市・特別区やその他の関係機関で構成される「都道府県連携協議会」の運営に寄与する資料及び研修に用いる教材を提供するなど、多様な健康危機管理事案における組織間連携への備えに寄与することを目標とする。
新型コロナウイルス感染症への対応においては、感染症法、新型インフルエンザ特措法等に基づき、検査体制の整備、発熱外来等受診体制の整備、大規模な積極的疫学調査、感染症対応が可能な医療機関への広域的な入院調整、宿泊療養・在宅療養への対応などの対策が行われてきた。加えて、住民の生活と健康を守るために、教育、労働、交通、産業など過去類を見ない多数の関係者が参加した対策が広範かつ同時に展開され、公衆衛生領域との調和と協調を図りながら推進されてきた。
これまで、「地域における健康危機管理について~地域健康危機管理ガイドライン~(平成13年3月)」や「地域保健対策の推進に関する基本的な指針(令和4年2月改訂)」において、都道府県と保健所を設置する市あるいは特別区、一般の市町村、医師会、医療機関、福祉関係団体等、健康危機管理時に多様な団体が関係することは知られてきた。しかしながら、実際の連携の場では、「健康危機に対応する事業を調整する際に設置する組織とはどのようなものか」、「連携にあたって事前、事案発生後にまず決めておくべきことは何か」、「長期的な連携のために必要なものは何か」といった、円滑な連携のために実際に必要なノウハウが共有されていない。
本研究では、コロナ禍の中、全国で実際に展開された公衆衛生関連の施策を中心に、国、地方自治体(都道府県、市町村、特別区)間、あるいは同一組織内の関係部局(危機管理部局と衛生部局)・出先機関(保健所、保健センター)、医師会、医療機関等、関係者間でとられた意思疎通・連携の実態調査を行い、上述のような現場で求められるノウハウの抽出を行う。さらに、今後発生が懸念される様々な健康危機管理事案の種別毎にシミュレーションを行い、共通の留意点や事案ごとの相違点等を整理する。これらの成果により、自治体の健康危機管理担当者向けに、保健所による「健康危機対処計画」の策定や、感染症法に基づき都道府県が設置し、都道府県・保健所設置市・特別区やその他の関係機関で構成される「都道府県連携協議会」の運営に寄与する資料及び研修に用いる教材を提供するなど、多様な健康危機管理事案における組織間連携への備えに寄与することを目標とする。
研究方法
新型コロナウイルス感染症における関係部局・関係機関との連携構築について、都道府県本庁、保健所設置市本庁及び保健所、県型保健所それぞれで実施された内容を包括的に収集する。組織改編、外部リソースの活用、労務管理などいわゆる総務部門の支援の重要性の観点も加え、ヒアリング調査及びアンケート調査を行った。
さらに、感染症も含めた複合災害で展開される対策での連係について、共通の留意点や事案ごとの相違点等を整理す・検討した。
さらに、感染症も含めた複合災害で展開される対策での連係について、共通の留意点や事案ごとの相違点等を整理す・検討した。
結果と考察
関係機関との連携の現場となる保健所で業務が過多になると実施すべき事業が停滞してしまうことについて、今回の調査では、保健所を管轄する都道府県と保健所設置自治体それぞれの保健所支援の実態について比較することが出来た。過去の健康危機管理事案で、関係部局がどのように関わってきたかということは、これまでの事例の検証から明らかになっていることを踏まえ、各自治体の平時の危機管理としては、各種の事案を想定した、保健所に対する支援も念頭に置いた訓練を繰り返し行うことが重要なのではないかと考える。そのためには、特に日頃からの衛生部門、総務部門、政策調整部門の相互の意識の共有が欠かせない。総合防災訓練における衛生部局の関与、感染症対策訓練(海外発生期あるいは国内蔓延期)における総務部局や総合調整部局の参画などの機会を持つことが望まれる。
結論
各自治体は予防計画、健康危機対処計画の改定にあたり、有事の際の組織改編を見越して、自らの組織の特徴に対応した形に適応させていくことが必要である。人員増、感染症対応人材の育成、有事のサージキャパシティの確保、への取組みも進められようとしている。各自治体の平時の危機管理としては、各種の事案を想定した、保健所に対する支援も念頭に置いた訓練を繰り返し行うことが重要なのではないかと考える。そのためには、特に日頃からの衛生部門、総務部門、政策調整部門の相互の意識の共有が欠かせない。
公開日・更新日
公開日
2024-10-02
更新日
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