文献情報
文献番号
200936153A
報告書区分
総括
研究課題名
高チロシン血症を示す新生児における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-098
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学医学部附属病院小児科)
研究分担者(所属機関)
- 奥山虎之(国立成育医療センター)
- 笠原群生(国立成育医療センター)
- 遠藤文夫(熊本大学小児科)
- 伊藤道徳(国立病院機構香川小児病院)
- 但馬 剛(広島大学小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高チロシン血症はタンデムマスを利用した新規新生児スクリーニングの対象疾患に含まれており、新生児期に患者が発見されることもある。しかし新生児期に血中チロシン高値を示す児は多く、その中から希少難病である遺伝性高チロシン血症を発見することは困難なことも少なくない。高チロシン血症の最先端の治療は、新規薬物治療や肝臓移植の導入などにより予後の改善が期待できるようになった。そこで、わが国における高チロシン血症の患者の診断・治療の状況について調査し、高チロシン血症の診断基準、治療指針を作成することを目的とした。
研究方法
われわれはタンデム質量分析計を用いた新生児ろ紙血中のチロシンを測定し、高チロシン血症を示す新生児数を検討した。確定診断のための検査法のひとつとして、高チロシン血症I型におけるゲノムDNAからのエクソン直接塩基配列解析法による遺伝子診断系を設定した。鑑別疾患となる高チロシン血症II型・III型については、酵素反応産物をHPLCによって分離・定量する酵素診断系を設定した。日本肝移植研究会に登録された小児代謝性肝疾患に対する生体肝移植症例の実態調査を、日本肝移植研究会データーベースに基づき実施した。
結果と考察
タンデムマスを用いた高チロシン血症を示す新生児数を検討したところ、新生児72,695人中に8.0mg/dl以上のチロシン高値を認めた新生児は95人(0.13%)存在した。次に、全国の930施設を対象とした全国調査(回答率71%)を行った。その調査では、遺伝性高チロシン血症I型、II型、III型の回答があった。そのほかに原因不明の高チロシン血症が回答されており、確定診断に至らない症例も少なくないと考えられた。特にタンデムマスによる高チロシン血症を示す新生児数、遺伝性高チロシン血症と一過性高チロシン血症とのチロシン値の比較についての検討は高チロシン血症の診断指針を考えるうえで重要であった。
結論
わが国における高チロシン血症の発生状況について調査した。高チロシン血症は遺伝的にも生化学的にも多様な疾患群であり、その患者数は増加しつつある。また、確定診断に至らない症例も少なくないと考えられた。高チロシン血症の治療として、主に食事療法が行われているが、最先端の治療は、新規薬物治療や肝臓移植の導入に伴い大きく変化した。肝臓移植は先天代謝異常症の小児期患者に対する治療法として確立し、高チロシン血症I型患者の予後を大きく改善していると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-31
更新日
-