有害性廃棄物の分析手法の総合化・簡素化に関する研究

文献情報

文献番号
199700687A
報告書区分
総括
研究課題名
有害性廃棄物の分析手法の総合化・簡素化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山村 勝美((財)廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
9,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「バーゼル条約」に対応した廃棄物の輸入の許可・輸出の確認を公正かつ確実に行うため,また,有害廃棄物である特別管理産業廃棄物の追加指定を円滑に行うためにも,廃棄物中の標準分析方法の設定が必要である。
そのため,平成5年~8年度において廃棄物中の金属及び半揮発性有機化合物の分析方法に関して内外の文献の収集・整理を行うとともに,実証試験を行い,試験方法の基礎となる資料を得たところである。
これらの知見をもとに,廃油・汚泥等の複雑な混合系である有害廃棄物の体系的な試験方法を確立し,廃棄物の管理に容易に用いることができる,迅速で簡単な分析方法を確立することを中心に,有害廃棄物に関する分析手法や精度管理全般に関する研究を,大学,自治体及び関係民間企業等による共同研究事業として行う。
研究方法
研究課題を進めていく上で以下5テ-マに分類し検討をした。
1. 有害廃棄物の分析体系の確立
2. ダイオキシン類測定新マニュアルの検討
3. ダイオキシン類高感度,簡易迅速分析の検討
4. 排ガスサンプリングの検討
5. イムノアッセイ法の検討
結果と考察
1.有害廃棄物の体系的な試験方法の確立
平成9年度は廃棄物中の揮発性物質及び金属の迅速分析方法についての調査,検討を行った。
(1) 揮発性物質の測定方法の調査
廃棄物中の揮発性物質分析に関して,測定の目的に合わせた13号試験以外の試料調整方法,未規制物質を含む包括的な測定方法などを調査した。
調査結果から全有機ハロゲン化合物測定法(TOX)などいくつかの分析方法が,廃棄物の調査分析方法として有効と考えられる。
(2)廃油中金属類迅速分析法の確立
廃油中の金属成分の迅速・高感度定量について検討を行い,誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP/AES法)と誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS法)の2種類の方法を確立した。
(3) 飛灰中有害金属分析の新手法の検討
飛灰中の水銀を精度よく定量するために前処理方法としてマイクロウェーブ分解法を,又溶出Pbをより高感度で定量するためのICP/MS分析法を検討した。マイクロウェーブ分解法では用いる酸の種類やマイクロウェーブ分解条件を検討し最適条件を選定した結果,精度よく分析できることが判った。
(4) 蛍光X線分析法による灰中の金属成分の定量
固形廃棄物中の金属成分の迅速定量を目的として,ファンダメンタルパラメータ法による蛍光X線分析法を灰試料中の金属分析に適用しその可能性を検討した。
標準灰を用いた実験結果から,含有量が0.5/kg以上の金属類の場合には保証値と良好な一致が見られ十分適用可能であることが判った。又,18種類の灰試料について化学分析法と比較した結果ではいくつかの金属を除いて比較的良好な一致を示したため,ファンダメンタルパラメータ法による蛍光X線分析法は廃棄物中の金属の迅速な分析方法として有効である感触を得た。
2. ダイオキシン類測定新マニュアルの検討
本研究では欧米及び国内の分析方法の文献調査並びに参画各社の分析方法を比較検討し,廃棄物焼却施設におけるCo-PCBの分析手法の開発を行い,ダイオキシン類との同時測定分析可能なマニュアル化を行った。またこれらの検証のため,飛灰についてクロスチェックを行った。
具体的テーマとしては,廃棄物焼却施設におけるCo-PCBの分析方法の開発,ダイオキシン類測定に関する測定標準法の検証を設定した。
(1)廃棄物焼却施設におけるCo-PCBの分析方法の開発
Co-PCBの分析手法の文献調査等からその方法の比較検討を行い,ダイオキシン類との同時測定分析可能なマニュアル化を行った。
(2)ダイオキシン類測定に関する測定標準法の検証
ダイオキシン類標準測定分析マニュアルの検証として,飛灰のクロスチェックを行ったが,結果は良好であった。排ガスについても再現性(二重測定)の精度が確認された。
3. ダイオキシン類高感度・簡易迅速分析の検討
(1)ダイオキシン類簡易分析方法の検討
ダイオキシン類分析に関する広範囲な文献調査(1994~1997年)を行うと共に5分 類に大別して整理した。また,検索で抽出された新規分析方法として重要と思われるものの内容を紹介した。一方,ダイオキシン類の指標項目としての全有機ハロゲン化合物(TOX)の有効性について検討し,環境汚染物質排出・移動登録(PRTR)技術検討会報告書資料と比較した。
(2)ダイオキシン類分析における簡易前処理法の検討
平成9年度は,文献調査により有用と思われるもの7点について,内容を紹介した。  また,簡略化工程として,1) 還流抽出法 2) 硫酸シリカゲル-アルミナミニカラム連続法を選定し,検討項目の整理を行った。
(3)排出中のダイオキシン類高感度簡易分析法の検討
平成9年度は,各種固相抽出剤についての文献調査を行うとともに,水試料に固相抽出法を適用する時の注意点について整理した。また液/液抽出改良法並びに,石英ろ紙,メンブレンフィルター,ポリウレタンフォーム及びC18ディスクを用いて予備的試験を行った。その結果,0.45μmメンブレンフィルターとポリウレタンフォームの組合せ及びC18ディスク試験において,ダイオキシン類補集に関して良好な結果が得られたが,引き続き各種固相抽出剤についての検討が必要である。
4. 排ガスサンプリングの検討
実機ごみ焼却炉において,排ガスをGfA法*と従来(厚生省)法の両方でサンプリングを行い,DXN分析のクロスチェックを実施した。
(1) バグフィルター入口及び出口のDXN測定では,両方の分析結果は良好な一致を示
し、GfA法で十分ダイオキシン類を補集できることが確認できた。
(2) バグフィルター入口の高ダスト濃度条件下では,サンプリングが出来ない状態にな
った事例もあり,GfA法には適用限界もある。
5.イムノアッセイ法の検討
(1) ダイオキシン類分析のための抗体開発及び評価に関する検討
2,3,7,8-TCDDに選択的特異性を持つとされている市販キットを用いて,実際の廃棄物試料への適用可能性を検討した。その結果,粗抽出液中の色素成分の交差反応が,EIAの応答に正の干渉をもたらしており,低濃度域ではこの影響を無視できないことから,粗抽出液を硫酸処理する必要性が確認された。
(2) Co-PCBに選択特異性を持つ抗体の評価
現在3塩素化以上のPCBを測定できるEIA法のキットは,既に市販されているこ
とから,開発目標として毒性の点からコプラナPCBをppbオーダーで検出できる  EIA系確立を目指し,それに加えて,オンサイトでの簡易定量法のために,前処理法の簡易化も検討することにした。個々の抗体の特異性及び測定系の検出限界については,実際に抗体を作成してみないと不明な点が多く抗体の作製作業のなかでよりよい方法を検討した。
試験結果からコプラナPCB(#77,#126,#169)に対して特異的な抗体が得られ,   標準品のPCBを測定する系については,その特異性,直線性,測定範囲,検出限界など基礎的な情報が得られた。なお,コプラナPCBのモノクローナル抗体については,文献による報告がある。
結論
1.有害廃棄物の分析体系の確立
調査結果から全有機ハロゲン化合物測定法(TOX)などいくつかの分析方法が,廃棄物の調査分析方法として有効と考えられる。又、廃油中金属類分析では、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP/AES法)と誘導結合プラズマ質量分析法(ICP/MS法)の2種類の方法を確立した。
2. ダイオキシン類測定新マニュアルの検討
Co-PCBの分析手法の文献調査等からその方法の比較検討を行い,ダイオキシン類の同時測定分析可能なマニュアル化を行った。
3. ダイオキシン類高感度,簡易迅速分析の検討
平成9年度は、文献調査を中心に行い検討項目の整理を行った。
4. 排ガスサンプリングの検討
バグフィルター入口及び出口のDXN測定では,両方の分析結果は良好な一致を示し、GfA法で十分ダイオキシン類を補集できることが確認できた。
5.イムノアッセイ法の検討
(1)2,3,7,8-TCDDに選択的特異性を持つとされている市販キットを用いた結果,粗抽出液中の色素成分の交差反応が,EIAの応答に正の干渉をもたらしており,低濃度域ではこの影響を無視できないことから,粗抽出液を硫酸処理する必要性が確認された。
(2)コプラナPCB(#77,#126,#169)に対して特異的な抗体が得られ,標準品のPCBを測定する系については,その特異性,直線性,測定範囲,検出限界など基礎的な情報が得られた。

公開日・更新日

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更新日
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