進行性下顎頭吸収の診断基準策定とその治療に関する研究

文献情報

文献番号
200936152A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性下顎頭吸収の診断基準策定とその治療に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-097
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
丸岡 豊(国立国際医療センター 戸山病院 第二専門外来部 歯科口腔外科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 健二(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター)
  • 松島 綱治(東京大学大学院 医学系研究科 分子予防医学分野)
  • 小村 健(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔外科学分野)
  • 森山 啓司(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎顔面矯正学分野)
  • 飯村 忠浩(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 口腔病理学分野)
  • 新保 卓郎(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター 医療情報解析研究部)
  • 星野 昭芳(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター)
  • 今井 英樹(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター)
  • 大塚 亮(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター)
  • 上羽 悟史(東京大学大学院 医学系研究科 分子予防医学分野)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 共同研究施設)
  • 藤岡 宏樹(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 共同研究施設)
  • 山崎 力(東京大学大学院 臨床疫学システム 臨床疫学)
  • 叶谷 文秀(国立国際医療センター 研究所 国際臨床研究センター)
  • 三森 明夫(国立国際医療センター 戸山病院 第一専門外来部 膠原病科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 進行性下顎頭吸収(以下PCR)は下顎頭が進行性に吸収された結果、咬合異常を生じる原因不明の疾患である。PCR発症におけるケモカインの関与を念頭に置き、患者の尿中および血中のいわゆる骨吸収・骨形成のマーカー、ならびにケモカイン基質を調査し、正常値に対して比較することを当初の目的とする。また国内外において詳細な調査を行い、患者数の把握と診断基準の策定に努める。
研究方法
PCR(もしくは臨床的にPCRが疑われる)患者の登録と血液・尿などの検体採取を行い、診断基準確立の為のマーカー探索を行った。併せて本邦初の全国の歯科口腔外科診療施設に対する実態把握調査を行った。また、疫学調査の為の国際的連携体制の構築、などの3点に取り組んだ。
結果と考察
 実態調査では、男性8例、女性134例が症例登録された。従来の、女性患者が多いという説を裏付けるものであった。患者年齢分布は20代が最も多く、次いで10代、30代となり、40代では少ないが50代以上は再び増加する二相性の分布を示した。若年例は合併疾患もなく特発的であるのに対し、50代以降は自己免疫疾患などの併発例が多くステロイド等薬剤の長期服用例も目立つ。また多くの医療機関で、咬合の違和感等のため顎関節症・顎変形症と診断されるも、その対処に苦慮しており、系統的な診断や治療がほとんどなされていない現状を浮き彫りにした。
 診断基準に関しては、少数患者からの血液検体を解析した結果、骨粗鬆症を示唆するNTXやDPDが高値を示し、またケモカインの一種であるRANTESが基準値から大幅に変動する等、本病態を特徴づける検査値を見出した。若年例では骨形成・骨吸収の両指標とも高値を呈する高回転型を示すが、50代以降の患者は双方ともに低い、いわゆる低回転型を呈した。
 疫学調査は、欧米人に多い本疾患と本邦との病態比較を目的として、国外の複数機関と国際的共同研究組織を立ち上げ、研究協力体勢が準備された。
結論
 本研究により、従来PCRとして漠然と解釈されていた病態が少なくとも2種類に大別される可能性が示唆された。また実態調査において、本症については臨床医においても様々な解釈が混在し認知度も必ずしも高くないこと、系統的な診断や治療がなされていないこと等を明らかにした。採血および採尿という簡便な手段のみでPCRの有無や発症の可能性を客観的に診断することができる指標の確立がなされる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936152C

成果

専門的・学術的観点からの成果
PCRの病態モデル動物と目されるケモカイン受容体CCR5KOマウス、およびそのリガンドRANTESを共有するCCR1KOマウスを再検討したところ、これらKOマウスでは野生型に比べて骨密度の菲薄化、骨梁空隙の拡張、皮質骨密度低下に加え骨端軟骨が低形成を示すなど顕著な骨軟骨代謝異常を起こしていた。また頭蓋骨は下顎枝長の短縮と前歯部開咬といったヒトPCR様の外観を呈する上、顎関節では下顎頭軟骨の配列の乱れと関節円盤の菲薄化がみられ、その形態学的特徴もPCRに酷似していた。
臨床的観点からの成果
本研究に基づき我々がわが国で初めて実施した実態調査において、PCRと認識される病態については臨床医においても様々な解釈が混在し認知度も必ずしも高くないこと、本症に対し系統的な診断や治療がなされていないこと、単なる顎関節症・顎変形症と診断され不適切な治療を受けている国民が少なくないこと等を明らかにした。また二相性の分布、すなわち若年症例における特発性と、50代以降の症例における自己免疫疾患等との併発との混在という本疾患の病態を把握する上で重要な知見を得た。
ガイドライン等の開発
診断については、PCR発症患者の血液検査においてRANTES等ケモカインの発現が上昇することを発見し、PCR病態を判定する有力なバイオマーカーとなり得るとの知見を得た。また疫学調査において得られた二相性の分布を骨形成・骨吸収マーカーの解析によりほぼ再現し得た。これは免疫系に機能を有するとみられていたケモカインが骨代謝においても重要な機能を果たすことを初めて明らかにした。
その他行政的観点からの成果
世界的にも本疾患に対する診断・治療法は示されていない。我々の調査では白色人種の調査にて報告されていたPCRの病態と類似の結果を黄色人種においても得た。また我々をネットワークの中心として、米国・欧州等国外の複数の研究機関と研究協力する体勢を確立させた。本研究によって示されたデータを基に、PCRは我が国から再定義・再発信された新たな疾患概念として国際的に認知されつつあることは、国際的意義が大きい。
その他のインパクト
全国の歯科口腔外科診療施設にアンケートを行った結果、患者年齢分布は20代が最も多く、次いで10代、30代となり、40代では少ないが50代以上は再び増加する二相性の分布を示した。若年例は合併疾患もなく特発的であるのに対し、50代以降は自己免疫疾患などの併発例が多くステロイド等薬剤の長期服用例も目立つ。つまり本研究により、従来PCRとして漠然と解釈されていた病態が少なくとも2種類に大別される可能性が示唆された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-