文献情報
文献番号
202326008A
報告書区分
総括
研究課題名
水道水及び原水における化学物質等の実態を踏まえた水質管理の向上に資する研究
課題番号
22LA1007
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 浅田 安廣(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻)
- 越後 信哉(京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻)
- 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
- 小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 白崎 伸隆(北海道大学 大学院工学研究院 環境創生工学部門)
- 高木 総吉(大阪府立公衆衛生研究所 衛生化学部 生活環境課)
- 広瀬 明彦(一般財団法人化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所)
- 増田 貴則(国立保健医療科学院)
- 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
- 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 三浦 尚之(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
37,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正などに資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
原水や水道水質の状況,浄水技術について調査研究を行うため,ウイルス,細菌・寄生虫,無機物,化学物質・農薬,消毒副生成物,臭気物質,リスク評価管理,水質分析法の8課題群-研究分科会を構築し,研究分担者16名の他に52もの水道事業体や研究機関などから121名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
浄水処理プロセスにおけるウイルス除去遺伝子マーカーとしてのトウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の濃度測定結果は7機関で概ね同様であり,測定濃度の差は最大でもおよそ1 logであったことから,ろ過水PMMoVの管理目標値としての104 copies/Lのオーダー以下は,検査方法の精度の点からも実情に合うと考えられた.エンテロウイルスの感染力評価手法の代替としてPMAxx-Enhancer-PCR法の活用が示唆された.
全国21浄水場の原水,ろ過水,浄水でのレジオネラ属菌の遺伝子量を把握した結果,浄水試料ではレジオネラ属菌遺伝子の検出率が低く,浄水処理による低減が示された.レジオネラ属菌の遺伝子が検出した浄水試料では従属栄養細菌数(HPC)とレジオネラ属菌の遺伝子量に弱い正の相関が確認された.クリプトスポリジウムの顕微鏡検査と遺伝子検査が一致することを確認した.β-glucuronidase 活性の測定手法によりリアルタイムに近い水中大腸菌測定の可能性が示された
鉛製給水管の残存件数の概数を把握する手法について検討した結果,鉛製給水管使用期間中に建築された建物数と鉛管残存件数には一定の関連があることがわかった.鉛製給水管解消の取り組みの程度や鉛管利用比率等の要因を考慮することで残存件数の把握が期待された.実際に鉛が検出されておらず鉛管の使用が無い経路では,採水・検査負担がより大きい滞水法の必要性は低いと考えら,その省略要件を示した.
炭素数が少ない有機フッ素化合(PFAS)が検出され,浄水処理工程で除去されにくい傾向が認められた.最近の農薬製剤出荷量などから対象農薬類への格上げ/格下げが推奨される農薬類を選定した.塩素処理より農薬フェントエートは変換率60~80%でオキソン体に変換され,安定して存在し,コリンエステラーゼ(ChE)活性阻害性も確認された.
全国の臭化物イオン(Br⁻)濃度の分布状況と地域的特性を明らかにし,Br-濃度が高濃度の地点では,これまで検出が確認されなかったトリブロモ酢酸の検出も確認された.Br⁻が高い地点ではブロモジクロロ酢酸の生成量が最大で目標値(案)を超過することを確認した.水道原水ではおおまかに有機態ヨウ素 > ヨウ素酸イオン > ヨウ化物イオンの大小関係があった.
水道水の臭気強度に対するカルキ臭の割合が高く,残留塩素濃度が高い場合には臭気強度が高い傾向にあった.しかし,同様な残留塩素濃度でも臭気強度が高い場合と低い場合があり,さらなる調査が必要であると考えられた.
2022年の欧州の水枠組み指令の改定案のPFAS24物質のうち,昨年度の調査(欧州飲料水指令)で残された8化合物と国内で検出例が知られている2化合物(4:2FTS,6:2FTS)について毒性情報収集を行った.HFPO-DA(GEN-X)のNOAELは最も低く0.1 mg/kg/dayで,その他の物質は1-45 mg/kg/dayの範囲と考えられた.テトラクロロエチレン(PCE)のTDIは神経毒性を根拠に設定した0.016 mg/kg/dayであった.
PFASを対象に高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析計(LC-MS/MS)を用いたスクリーニング分析法の定量精度について検討し,スクリーニング分析として活用するには十分な定量精度があることを確認した.25種の農薬について液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)を用いたスクリーニング分析法における負イオン化モードのデータベースを構築した.さらに農薬のガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)スクリーニング分析法の実運用案とガイドライン案を策定した.
全国21浄水場の原水,ろ過水,浄水でのレジオネラ属菌の遺伝子量を把握した結果,浄水試料ではレジオネラ属菌遺伝子の検出率が低く,浄水処理による低減が示された.レジオネラ属菌の遺伝子が検出した浄水試料では従属栄養細菌数(HPC)とレジオネラ属菌の遺伝子量に弱い正の相関が確認された.クリプトスポリジウムの顕微鏡検査と遺伝子検査が一致することを確認した.β-glucuronidase 活性の測定手法によりリアルタイムに近い水中大腸菌測定の可能性が示された
鉛製給水管の残存件数の概数を把握する手法について検討した結果,鉛製給水管使用期間中に建築された建物数と鉛管残存件数には一定の関連があることがわかった.鉛製給水管解消の取り組みの程度や鉛管利用比率等の要因を考慮することで残存件数の把握が期待された.実際に鉛が検出されておらず鉛管の使用が無い経路では,採水・検査負担がより大きい滞水法の必要性は低いと考えら,その省略要件を示した.
炭素数が少ない有機フッ素化合(PFAS)が検出され,浄水処理工程で除去されにくい傾向が認められた.最近の農薬製剤出荷量などから対象農薬類への格上げ/格下げが推奨される農薬類を選定した.塩素処理より農薬フェントエートは変換率60~80%でオキソン体に変換され,安定して存在し,コリンエステラーゼ(ChE)活性阻害性も確認された.
全国の臭化物イオン(Br⁻)濃度の分布状況と地域的特性を明らかにし,Br-濃度が高濃度の地点では,これまで検出が確認されなかったトリブロモ酢酸の検出も確認された.Br⁻が高い地点ではブロモジクロロ酢酸の生成量が最大で目標値(案)を超過することを確認した.水道原水ではおおまかに有機態ヨウ素 > ヨウ素酸イオン > ヨウ化物イオンの大小関係があった.
水道水の臭気強度に対するカルキ臭の割合が高く,残留塩素濃度が高い場合には臭気強度が高い傾向にあった.しかし,同様な残留塩素濃度でも臭気強度が高い場合と低い場合があり,さらなる調査が必要であると考えられた.
2022年の欧州の水枠組み指令の改定案のPFAS24物質のうち,昨年度の調査(欧州飲料水指令)で残された8化合物と国内で検出例が知られている2化合物(4:2FTS,6:2FTS)について毒性情報収集を行った.HFPO-DA(GEN-X)のNOAELは最も低く0.1 mg/kg/dayで,その他の物質は1-45 mg/kg/dayの範囲と考えられた.テトラクロロエチレン(PCE)のTDIは神経毒性を根拠に設定した0.016 mg/kg/dayであった.
PFASを対象に高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析計(LC-MS/MS)を用いたスクリーニング分析法の定量精度について検討し,スクリーニング分析として活用するには十分な定量精度があることを確認した.25種の農薬について液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOFMS)を用いたスクリーニング分析法における負イオン化モードのデータベースを構築した.さらに農薬のガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)スクリーニング分析法の実運用案とガイドライン案を策定した.
結論
水道労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会,水道における微生物問題検討会に資すべき情報が収集された.
公開日・更新日
公開日
2024-10-02
更新日
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