文献情報
文献番号
202326006A
報告書区分
総括
研究課題名
ICT活用による保健師活動評価手法の開発及びPDCAサイクル推進に資する研究
課題番号
22LA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
田口 敦子(慶應義塾大学 看護医療学部)
研究分担者(所属機関)
- 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学 看護学部)
- 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
- 水流 聡子(東京大学 工学系研究科)
- 杉山 大典(慶應義塾大学看護医療学部)
- 赤塚 永貴(横浜市立大学 医学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
【所属機関異動】
研究分担者 村嶋幸代
大分県立看護科学大学(令和4年4月1日~令和6年3月31日)
→湘南医療大学大学院(令和6年4月1日~)
研究分担者 赤塚永貴
慶應義塾大学(令和5年4月1日~令和6年3月31日)
→横浜市立大学(令和6年4月1日~)
研究報告書(概要版)
研究目的
質の高い地域保健サービスを提供するためには、PDCA (Plan, Do, Check, Action) サイクルに基づき、地域保健施策の展開と評価を行うことが不可欠である。しかし現在、自治体における保健師活動の評価が十分行われているとは言い難い。また、保健師活動の評価にICTを活用することは喫緊の課題であるが、地域保健行政におけるInformation and Communication Technology (ICT)の 活用は遅れをとっている。そこで本研究の目的は、保健師活動の評価指標を体系化して評価手法を検討すること、その結果を踏まえ、PDCAサイクルに基づく活動の展開に向けた保健師活動マネジメントツールを開発すること、さらにそのツールを現場に普及させるために、保健師のICT及びマネジメントスキル向上プログラムの開発を行うことである。これら3つの目的達成に向け、3つの分担研究を行う。なお本研究では、母子保健領域に焦点を当てる。その理由は、保健師活動を網羅的に含む領域であり、さらに母子保健法が定める事業が全国の自治体において一定水準で行われていること、現在大きな社会的問題となっている人口減少に対し、出生と子育て支援への貢献も期待できるためである。
研究方法
令和5年度は3か年計画の2年目であった。分担研究1では、3自治体から妊娠から出産・1歳6か月児健診までの保健師の関わりに関するデータを取得し、前年度検討したアウトカム指標案とプロセス指標案について妥当性の検討を行った。分担研究2では、PDCAサイクルに基づく保健師活動の展開を推進する為のシステム構築にむけて、既に臨床看護の分野で検証・実装が進められている「患者状態適応型パスシステム(PCAPS)」を保健師活動に応用した「保健師活動マネジメントツール」(以下、ツール)の開発に取り組んでいる。本年度は、1自治体から収集した事例をもとに、ツールのアルファ版を開発した。分担研究3では、全国地方自治体の統括保健師や無作為抽出された地方自治体の保健師を対象とした調査、保健師活動へのICT活用及びデジタル化に関する先駆的な取組実績のある自治体を対象としたヒアリング調査を実施した。
結果と考察
分担研究1では、前年度検討したアウトカム指標案とプロセス指標案について、①各自治体で同様のデータが得られるか、②保健師活動の見える化と保健活動への示唆を得るために妥当性の検討を行った。その結果、①については、電子データ化されていない等の理由によりアウトカム指標の妥当性を検討できるまでのデータが得られなかった。②については、【地域育児】に肯定的な変化がみられたことから、変化の理由や背景の把握により個別支援のアウトカム指標になり得る可能性を見出すことができた。また、【育てにくさ】【ゆったり気分】に否定的な変化がみられたことから、縦断的な把握の必要性やリスク把握のための情報として個別支援の開始・継続・終了の指標(プロセス評価のための項目)となる可能性が示唆された。プロセス指標案では、対象毎の関わりの頻度や手段について連絡調整した関係機関種別の図式化(見える化)を図った結果、プロセス評価のためのデータを有効に活用でき、保健活動への示唆を得られるいくつかの視点が明らかになった。自治体内では「頻回な関わりを必要とするケース」や「妊娠期に要個別支援と判断し、出産後は継続支援を要しなかったケース」の特徴を考える視点等が有効であった。分担研究2では、前年度に作成したツールの一つであるプロセスチャートを再検討し、プロセスチャート(修正版)、ユニット移行アルゴリズム、標準用語マスター等のツール(アルファ版)に搭載するコンテンツが完成し、試験的な検証作業を通して、ツールの妥当性が一部認められた。分担研究3では、全国地方自治体の統括保健師や無作為抽出された地方自治体の保健師を対象とした調査、保健師活動へのICT活用及びデジタル化に関する先駆的な取組実績のある自治体を対象としたヒアリング調査の結果、保健師活動におけるICT活用やデジタル化の推進には、保健師個人が必要なスキルや知識を習得する機会を設けるとともに、行政組織でのICT活用の体制・システム整備の重要性が示唆された。
結論
令和6年度は、本年度に検討した保健師活動の評価指標案の妥当性を、PDCAサイクルを持続的に回すための管理・調整という統括保健師の役割遂行にどのように寄与するかという点にも留意しながら検証を続け、アルファ版の検証を行うことでより汎用性の高いベータ版を作成し、全国自治体での実装・普及に向けて取組みを進めていく。さらに、本年度に実施した各調査により収集したデータのさらなる分析を通じて保健師のスキル・知識の現状を把握し、その結果をもとに保健師の教育プログラムの開発を行う予定である。
公開日・更新日
公開日
2024-10-02
更新日
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