文献情報
文献番号
200936148A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性耳石器障害によるめまいの診断基準および治療ガイドラインの作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-093
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岩崎 真一(東京大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 千原 康裕(東京大学 医学部)
- 山岨 達也(東京大学 医学部)
- 伊藤 健(帝京大学 医学部)
- 室伏 利久(帝京大学 医学部)
- 水野 正浩(埼玉医科大学 神経耳科)
- 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
- 牛尾 宗貴(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
前庭誘発筋電位(VEMP)検査は、強大な音響刺激が耳石器の1つである球形嚢を刺激し、それが前庭頸反射を介して頸部の筋電図に反映されることを応用した臨床検査であり、簡便に行える耳石機能検査として、近年臨床の現場で広く行われつつある。本研究では、VEMP検査を用いて、耳石器単独の障害によって生じると考えられる疾患、すなわち“特発性耳石器障害”よって生じるめまいの診断基準及び標準的治療のガイドラインの作成を目的とした。
研究方法
1.後ろ向き研究による特発性球形嚢障害の臨床的特徴の抽出
分担研究者の所属する各施設でのVEMP度刺激検査を含む平衡機能検査を施行した症例の中から、耳石器障害によるめまいと考えられる症例を抽出する。
2.後ろ向き研究により得られた症例をもとにした特発性耳石器障害との診断基準(案)の作成。
上記の後ろ向き研究で明らかになった特発性耳石器障害の臨床的特徴、検査所見をもとに診断基準を作成する。
分担研究者の所属する各施設でのVEMP度刺激検査を含む平衡機能検査を施行した症例の中から、耳石器障害によるめまいと考えられる症例を抽出する。
2.後ろ向き研究により得られた症例をもとにした特発性耳石器障害との診断基準(案)の作成。
上記の後ろ向き研究で明らかになった特発性耳石器障害の臨床的特徴、検査所見をもとに診断基準を作成する。
結果と考察
1.後ろ向き研究による特発性球形嚢障害の臨床的特徴の抽出
共同研究を行った4施設において、過去5年間にVEMPと温度刺激検査の双方を行っためまい患者は1266例で、そのうち189例(14.9%)において、温度刺激検査は正常でVEMPのみが異常を呈した。これらのうち、42例(3.3%)が “特発性耳石器障害”の候補となった。
2.特発性耳石器障害との診断基準(案):1.温度刺激検査は正常で、前庭誘発筋電位検査などの耳石器検査で少なくとも一側の異常を呈する。2.回転性あるいは非回転性のめまいを訴える。3.めまい発作に関連して、耳鳴、耳閉塞感を伴うこともあるが、難聴を伴うものは除外する。4.上記1?3の症候をきたす中枢神経疾患ならびに原因既知のめまいを生じる疾患が除外出来る。
共同研究を行った4施設において、過去5年間にVEMPと温度刺激検査の双方を行っためまい患者は1266例で、そのうち189例(14.9%)において、温度刺激検査は正常でVEMPのみが異常を呈した。これらのうち、42例(3.3%)が “特発性耳石器障害”の候補となった。
2.特発性耳石器障害との診断基準(案):1.温度刺激検査は正常で、前庭誘発筋電位検査などの耳石器検査で少なくとも一側の異常を呈する。2.回転性あるいは非回転性のめまいを訴える。3.めまい発作に関連して、耳鳴、耳閉塞感を伴うこともあるが、難聴を伴うものは除外する。4.上記1?3の症候をきたす中枢神経疾患ならびに原因既知のめまいを生じる疾患が除外出来る。
結論
本研究は、VEMP検査によってとらえることが可能になった新たな疾患概念の診断基準および病態の解明を目的とした。本研究で着目する特発性耳石器障害は、VEMP検査が行われる以前の一般的な前庭機能検査ではとらえることが出来なかった新たな前庭疾患である。本疾患の頻度はめまい患者の3%程度であり、極めてまれな疾患と考えられる。本疾患の診断基準が作成されることにより、その患者像や臨床的特徴などが明らかになり、これまで診断のつかなかっためまい患者の診断の確定、治療方針の決定に寄与することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2010-05-12
更新日
-