低身長症におけるCNP有効症例の把握と診断法の確立

文献情報

文献番号
200936147A
報告書区分
総括
研究課題名
低身長症におけるCNP有効症例の把握と診断法の確立
課題番号
H21-難治・一般-092
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中尾 一和(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科)
研究分担者(所属機関)
  • 寒川 賢治(国立循環器病センター研究所)
  • 八十田 明宏(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 内分泌代謝内科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患は骨・軟骨の成長障害により骨格異常をきたす先天性疾患の総称であるが、有効な薬物治療は確立されておらず、侵襲的な整形外科的治療である骨延長術がおこなわれているのみである。研究代表者らはC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)が極めて強力な骨伸長促進作用を持つことを発見し、骨系統疾患への臨床応用を計画しているが、CNP受容体変異による骨系統疾患が発見され、CNP治療抵抗性骨系統疾患の存在が明らかとなった。本研究は多数の疾患群からなる骨系統疾患におけるCNP治療有効症例の把握を、CNP負荷に対する反応性や疾患モデルマウスを用いた前臨床研究、さらには疾患特異的iPS細胞を用いた反応性の解析と併せて総合的におこなう臨床研究である。
研究方法
本研究では、CNP/GC-B系の状態評価(基礎値測定およびCNP負荷試験による反応性の確認)、およびCNP/GC-B系遺伝子の解析により骨系統疾患による低身長症を解析し、CNP治療の有効性を予測する。さらに、前臨床研究として、さまざまな骨系統疾患モデルマウスと血中濃度上昇型CNPトランスジェニックマウスとの交配実験により当該骨系統疾患に対するCNPの効果を検討し、その疾患に対するCNP治療のPOCを確立しする。また、疾患特異的iPS細胞を樹立して軟骨に分化させ、CNPに対する反応性を確認してその疾患に対する有効性を検討する。
結果と考察
成人男性における血中CNP、NT-proCNP、およびcGMP基礎値を測定し、それぞれ0.75±0.05 pg/ml、1.95±0.14 pmol/L、2.44±0.16 pmol/mlの値を得た。また、疾患モデルマウスを用いた前臨床試験としてCNP治療が最も有効であると考えられるCNPノックアウトマウスの骨伸長障害に対する血中CNP濃度上昇の有効性を確認した。さらに、正常ヒトiPS細胞から軟骨への分化条件を確立した。次年度以降、正常人および骨系統疾患患者に対するCNP負荷試験の反応パターンの解析、さまざまな骨系統疾患モデルマウスに対するCNP有効性の検討、さらに骨系統疾患特異的iPS細胞の樹立とその反応パターンの確認をおこなう計画である。
結論
骨系統疾患に対するCNP治療適応症例の鑑別診断法の確立のための研究を開始した。その基礎となる研究を施行し、次年度以降に展開する研究を計画している。

公開日・更新日

公開日
2010-05-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936147C

成果

専門的・学術的観点からの成果
前臨床研究において骨系統疾患モデルマウスとしてCNPノックアウトマウスに対するCNPの効果を確認したが、今後様々な骨系統疾患モデルマウスに対する効果を検討することで、疾患の原因分子とCNP/GC-B系との相互作用を検討することが可能となる。また、正常ヒトiPS細胞の軟骨分化条件を検討して確立したが、疾患特異的iPS細胞由来軟骨細胞におけるCNPの作用の検討においても、原因分子が確定している疾患に関しては疾患原因分子とCNP/GC-B系との相互作用の検討が可能である。
臨床的観点からの成果
骨系統疾患は骨・軟骨の成長障害により骨格異常をきたす先天性疾患の総称であるが、有効な薬物治療は確立されていない。研究代表者らはCNPが極めて強力な骨伸長促進作用を持つことを発見し、骨系統疾患への臨床応用を計画しているが、CNP受容体変異によるCNP治療抵抗性骨系統疾患も存在する。本研究は骨系統疾患におけるCNP治療有効症例の把握を試みるものであるが、臨床研究としてまずCNP/GC-B系基礎値の測定をおこなった。
ガイドライン等の開発
骨系統疾患の分類は国際分類(現時点では2006年版)によるが、今後分類された骨系統疾患のなかでCNP治療に対する有効疾患を鑑別し、CNP治療に対するPOCを確立する。
その他行政的観点からの成果
骨系統疾患に対する有効な薬物治療は現在確立されていない。その治療は整形外科による骨延長術に限定されており、患者に対する身体的・経済的負担が大きい。CNPは内因性ペプチドであるため安全性にも問題が少なく、医療経済的にも期待ができる。
その他のインパクト
骨系統疾患に対するCNP治療に関しては、軟骨無形成症に対するCNP治療のPOCを確立した論文発表時(Nat. Med. 10. Jan. 2004)は国内の新聞等により大きく報道された。また、同治療法は世界的にも注目を集めており、海外からの問い合わせも頻繁である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計10件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akihiro Yasoda, Hidetomo Kitamura, Toshihito Fujii,et al.
Systemic Administration of C-Type Natriuretic Peptide as a Novel Therapeutic Strategy for Skeletal Dysplasias
Endocrinology , 150 (7) , 3138-3144  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-