家庭用品中有害物質の試験法及び規制基準設定に関する研究

文献情報

文献番号
202325018A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中有害物質の試験法及び規制基準設定に関する研究
課題番号
23KD2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 千葉 真弘(北海道立衛生研究所 生活科学部)
  • 久保田 領志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家庭用品規制法では、指定家庭用品に含まれる21種類の有害物質についてその含有量や溶出量の基準が定められている。これらの有害物質では、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、生活様式の多様化に伴い、新たな形態の家庭用品や化学物質が使用されており、未規制物質による健康被害が懸念されている。そのため、規制対象外の家庭用品及び有害物質に対し、規制基準設定に資する情報収集が必要とされている。本研究は、先行研究で開発した分析法について、必要に応じて改良を行った後、妥当性評価試験を実施し改正試験法を提案する。また、分析に用いるGC-MSで使用するヘリウムの供給不足等を踏まえ、ヘリウムを使用しない代替試験法の開発も実施する。さらに、未規制物質及び規制対象外の家庭用品に関する情報収集として、分析法の開発及び実態調査、並びに曝露評価及び有害性情報の収集を行う。
研究方法
試験法の改正では、家庭用品規制法で有害物質に指定されている木材防腐・防虫剤及びそれらで処理された木材中の3種の多環芳香族炭化水素類(PAHs)を含む、REACH規則制限対象の10種類のPAHsを分析対象物質とし、クレオソート油及びクレオソート油で処理された木材にそれらを添加した試料を調製し、7機関にて妥当性評価試験を行った。塩化ビニルモノマー(VC)及び有機水銀化合物は、先行研究で開発した試験法の改良を実施した。代替キャリヤーガスの検討では、妥当性評価試験を実施した10種類のPAHsを対象物質とし、水素及び窒素を用いた際のGC-MS分析条件を検討した。未規制有害物質については、揮発性有機化合物(VOCs)は文献調査、繊維製品中の3種の有機リン系防炎加工剤の分析法開発と実態調査、ゴム製品中のPAHsの分析法開発、塗料等に含有される9種の有害金属の実態調査を行った。さらに、エアゾール製品中のトルエン及びシクロヘキサンを対象に、国内外の公的機関が公表している数理モデルを用いて、吸入曝露量を算出した。また、それらの2物質について有害性情報を収集した。
結果と考察
木材防腐・防虫剤及びそれらで処理された木材中のPAHsの妥当性評価の結果、精度及び感度とも十分に確保され、現行試験法よりも安全な試薬を用い、妨害物質の影響を受けにくい改正試験法が開発できた。VCは、試作スプレー分析により、噴射剤であるDMEや溶剤の影響を受けにくく、再現性の高い分析法であることが確認できた。有機水銀加工物では、先行研究で低回収率であった試料について、遠心分離や吸引ろ過の実施で回収率が改善した。ヘリウム不足に対応した試験法では、有害物質に指定されている3種を含む10種のPAHsについて、ヘリウムからキャリヤーガスを変更しても、カラム、ガス流量、オーブン昇温条件等は変更することなく測定できる分析条件を構築した。未規制物質について、VOCsは文献調査から未規制製品についても調査が必要と考えられた。ゴム製品中のPAHsは、回収率の良好な分析法を開発した。繊維製品中の防炎加工剤分析法を開発し46試料について実態調査を実施したところ、TCPPが床敷物1試料、TDCPが床敷物及び衣類5試料から検出された。有害元素は家庭用塗料や繊維製品等の実態調査を行い、幾つかの製品でCrやSbが高濃度で検出されることを確認した。エアゾール製品中のトルエン及びシクロヘキサンの吸入曝露量を2種類の数理モデルを用いて算出し、曝露シナリオの違いにより、算出曝露量に差が認められることを確認した。トルエン及びシクロヘキサンの吸入曝露による慢性影響について、化審法の評価Ⅱにより設定された有害性評価値0.1 ppm及び化審法のスクリーニング評価により設定された有害性評価値0.5 ppmを、それぞれ家庭用品の有害性評価においても採用することが妥当であると考えられた。
結論
木材防腐・防虫剤及びそれらで処理された木材中のPAHsの妥当性評価試験を実施し、開発した試験法の妥当性を確認した。VC分析法は試作スプレーを用いた検証を行った。有機水銀化合物は、前処理方法を改良した。木材防腐・防虫剤等のPAHsについて、代替キャリヤーガスによるGC-MS分析条件を構築した。未規制化合物では、VOCsは文献調査を行い、ゴム製品中のPAHs、繊維製品中の防炎加工剤、及び塗料や繊維製品中の有害元素は、分析法開発や実態調査を実施した。エアゾール製品中のトルエン及びシクロヘキサンの吸入曝露量の算出や、有害性情報の収集を実施した。これらの成果は、家庭用品安全対策調査会における資料等として活用され、家庭用品規制法の改正や検査業務の効率化と安全性の向上に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-10-03
更新日
-

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公開日
2024-10-03
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文献番号
202325018Z