有害廃棄物と化学物質循環に関する研究

文献情報

文献番号
199700686A
報告書区分
総括
研究課題名
有害廃棄物と化学物質循環に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山村 勝美(財団法人廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
27,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
廃棄物処理法の改正により新たに特別管理廃棄物の制度が設けられ、政省令により指定された特別管理廃棄物は、その発生から収集運搬、再生、処理、処分に至る一連の過程で特別な管理が求められるようになった。さらに、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」で定められたYコードに相当する有害廃棄物は順次処理基準を整備しつつ、特別管理廃棄物に追加していくこととされている。そのため、ジクロロメタン等の揮発性有機塩素化合物の分解方法などについての研究が鋭意展開されているところであるが、未解明、未着手の問題として難分解性有機ハロゲン化合物を含む廃棄物に関するものが多くある。又、有害廃棄物の発生量を可能な限り少量とし、かつ、管理し易い形態とするためには予め有害化学物質が循環し得る製品設計や使用後の再生過程を念頭においた循環構造つくりが肝要となっており、こうした化学物質の循環管理のための解析手法等の開発が求められている。
研究方法
廃棄物関係の学識経験者による委員会を設置して以下の調査研究を実施した。
(1)難燃材及び難燃剤含有プラスチック廃棄物の燃焼分解技術の基礎的研究及び湿式燃焼法による分解試験を行った。
(2)焼却飛灰、ダストなどの有害重金属と塩類を含有する廃棄物から有害金属を塩化錯イオンとして抽出するプロセスを開発するため、鉛、カドミウムの塩化錯イオンの生成及びCaCl2溶液を例に溶解濃度についてイオン平衡による計算を行い、抽出プロセスの実現の可能性を検討した。
シュレッダーダストを溶融キルンで処理する場合に生成するスラグから金属回収すること及びそのスラグの生成を実施し、優先的に析出する金属を明らかにする検討を行った。
また、焼却灰の重金属処理法の一つとしてORPを利用する分離回収方法の実験を行い、その基礎的データの採取を図った。
(3)有機ハロゲン化合物を含む廃棄物と灰との混合溶融実験を行い、臭素・塩素系のダイオキシン類の挙動調査を実施し、コスト低減効果の評価を行った。
また、清掃工場で廃棄物の焼却処理により発生するダイオキシン類はごみ中の塩素化合物の存在が大きく影響を及ぼしていると考えられているため、清掃工場における塩素の由来と挙動について調査を行った。
結果と考察
(1) 難分解性有機ハロゲン化合物含有廃棄物の分解技術の開発研究  
ア 燃焼による難燃剤コンパウンド等の廃棄物の分解技術の基礎的研究  
OA機器類への使用量が多いABS樹脂とプリント基板からの重金属が混入した廃電気電子機器についてTBBP-A/ABS樹脂の燃焼の基礎特性と廃電気電子機器中の重金属類が塩素および臭素系ダイオキシン類の発生量に対して及ぼす影響に関して調査を行った。燃焼による実験で難燃剤の分解率が99.9%以上の高分解率が得られた。 
イ 湿式酸化法による難燃化プラスチック処理に関する研究  
難燃化プラスチックの処理を目的として燃焼処理法に代わる方法として湿式酸化法を適用した。難燃剤を分解して有機酸の高回収を目的とした分解反応に与える影響因子としての反応速度吹き込み酸素濃度等の反応条件、反応容器中のpHの影響、連続処理の可能性検討等を行った。  反応容器1,000mlを用い、圧力100MPa、温度250℃の条件下で実験を行った。ABS樹脂、ポリプロピレンの2種のプラスチック(ABS、PP)に2種の難燃剤(TBBA、DBDPO)と1種の難燃助剤(Sb2O3)を配合させた10種の試料を用いた。 その結果、吹き込みガスとして酸素濃度が50vol%以上の酸素富化空気を使用することが分解には有利であること等明らかとなった。  
(2) 有害危険性を有する廃棄物の再生処理に関する研究  
ア 有害金属と塩を含む廃棄物からの金属抽出  
焼却飛灰、ダスト類等の有害金属と塩類を含有する廃棄物から有害金属を塩化錯イオンとして抽出するプロセスを検討した。塩化物と重金属を含有する廃棄物としてガス化溶融炉飛灰(シュレッダーダスト溶融)、ごみ焼却炉飛灰を選択し、抽出実験を行った。溶媒と試料を混合し抽出した液のpHと主要成分の分析を行った。  ガス化溶融飛灰については、Pb抽出率はアルカリ側で高く、Zn、Cdは低pH側で高い結果となった。 
イ シュレッダーダスト溶融処理後のスラグからの金属回収  
シュレッダーダストを溶融キルンで処理する場合の生成する溶融状態のスラグから金属回収とスラグの精製を行うことを実施した。試料として、シュレッダーダスト溶融物を100メッシュ以下に粉砕して50gを使用した。試料とカーボンブラックを混合した粉末をるつぼに入れ、カンタル炉で加熱実験を行った。溶融スラグの成分分析を行い、析出する金属を予測した。炉内温度1400℃以上では保持時間1時間、1500℃以上では30分で金属が回収されることがわかった。  
ウ 飛灰からの金属抽出システムの開発  
焼却灰の安価な重金属処理方法としてORPを利用した重金属分離回収方法を検討した。試料としてシュレッダーダスト焼却灰を用い、酸抽出させた後、多段電気分解をかけるものである。  
(3) 有害物質の由来、挙動に関する調査  
ア 表面溶融炉での可燃物と灰の混合溶融における重金属、塩素、臭素の挙動調査  
有機ハロゲン化合物を含む廃棄物と灰との混合溶融実験を行い、臭素、塩素、重金属類がスラグ、溶融飛灰、排ガスへの移行割合を明らかにし、臭素・塩素系のダイオキシン類の挙動調査とコスト低減効果の評価を行った。塩素系・臭素系樹脂ペレットと灰との混合比率を2:1:7 の割合で混合し溶融テストプラントで実証を行った。燃焼温度1350℃、処理量150~180kg/hにて実施した。  
イ 清掃工場における臭素の由来と挙動調査
清掃工場における臭素化ダイオキシンを含む臭素化合物の発生量と挙動を調査し、家庭ごみ、難燃剤の使用の多い破砕ごみの調査を行った。施設は家庭ごみのみ対象とする清掃工場と家庭ごみと事業系ごみ、廃家電や木くず等の破砕ごみを混焼する清掃工場を対象とした。排ガスはボイラ出口、EP入口、出口を、焼却残渣は燃えがらとEP灰を測定した。
結論
(1) 難分解性有機ハロゲン化合物含有廃棄物の分解技術の開発研究  
ア 燃焼による難燃剤コンパウンド等の廃棄物の分解技術の基礎的研究  
TBBP-A/ABS樹脂の燃焼の基礎特性と廃電気電子機器中の重金属類が塩素および臭素系ダイオキシン類の発生量に対して及ぼす影響に関して調査を行い、燃焼による実験で難燃剤の分解率が99.9%以上の高分解率が得られた。重金属類が混入された廃材では排ガス中の臭素系、塩素系ダイオキシン類濃度は重金属を混入しないものに比較して10倍以上の高濃度であった。  
イ 湿式酸化法による難燃化プラスチック処理に関する研究  
難燃剤を分解して有機酸の高回収を目的とした分解反応に与える影響因子としての反応速度吹き込み酸素濃度等の反応条件、反応容器中のpHの影響、連続処理の可能性検討等を行った。  
吹き込みガスとして酸素濃度が50vol%以上の酸素富化空気を使用することが分解には有利であること、反応溶液のpHは分解反応に大きな影響を及ぼすこと、連続処理実験において、触媒失活や分解生成物による分解抑制作用はおこらず、連続処理の可能性が高いことが明らかとなった。  
(2) 有害危険性を有する廃棄物の再生処理に関する研究  
ア 有害金属と塩を含む廃棄物からの金属抽出
ガス化溶融飛灰については、Pb抽出率はアルカリ側で高く、Zn、Cdは低pH側で高い結果となった。また、塩素濃度が高いほどPb、Zn、Cdの抽出率が高くなった。ごみ焼却飛灰についてはPb抽出率はアルカリ側で高く、Zn、Cdの抽出率は低pH側で高くなった。また塩素濃度が高いほどPb抽出率は高くなったが、Zn、Cd抽出率は複雑に変化した。 
イ シュレッダーダスト溶融処理後のスラグからの金属回収
炉内温度1400℃以上では保持時間1時間、1500℃以上では30分で金属が回収されることがわかった。析出金属の主成分はFeとCuであり、Cuが優先的に金属に還元されることがわかった。  
ウ 飛灰からの金属抽出システムの開発  
焼却灰の安価な重金属処理方法としてORPを利用した重金属分離回収方法を検討した。都市ごみ焼却灰ではpH4付近で最も重金属類の溶出量が多くなった。  
(3) 有害物質の由来、挙動に関する調査  
ア 表面溶融炉での可燃物と灰の混合溶融における重金属、塩素、臭素の挙動調査  
塩素系・臭素系樹脂ペレットと灰との混合比率を2:1:7 の割合で混合し溶融テストプラントで実証を行った。燃焼温度1350℃、処理量150~180kg/hにて実施した。 
イ 清掃工場における臭素の由来と挙動調査
家庭ごみのみの焼却では、排ガス中の無機臭素濃度は検出限界以下であったが、破砕ごみを焼却した場合、7倍高い値となった。焼却残渣中ではEP灰中において家庭ごみでは検出限界以下であったが、破砕ごみ混焼では2000mg/kg、廃家電破砕ごみ焼却では3300mg/kgの極めて高い臭素濃度が検出された。臭素化ダイオキシンについて排ガス中では家庭ごみのみの焼却に比較して破砕ごみ混焼の方が高い結果となったが、10倍程度の差で収まった。焼却残渣中濃度においてEP灰で26倍、燃えがらで100倍の濃度差が検出された。

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