重症多形滲出性紅斑の生体試料収集・保管管理システムの確立

文献情報

文献番号
200936141A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑の生体試料収集・保管管理システムの確立
課題番号
H21-難治・一般-086
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
塩原 哲夫(杏林大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 公二(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 飯島 正文(昭和大学 医学部)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難病研究資源バンクへの登録システムを確立するために本研究の目的は重症多形滲出性紅斑の効率的な生体試料収集・保管管理システムの整備確立をめざして、試料提供者への倫理的な配慮等に関する基準の作成、試料の選択と収集・保管に必要な情報項目の設定、生体試料の収集への協力医療機関の把握、各機関で過去に保存した試料の実態調査などを目的とした。
研究方法
試料提供者への倫理的配慮のための準備として各医療機関で基本的に共通する倫理面に配慮した患者への説明文書、同意書、同意撤回書などを作成し倫理委員会で承認を得るための準備を行う。また、試料の選択と収集・保管に必要な情報項目の設定として本症のどのような試料を収集・保管するか、また、再利用時に試料提供者からのどのような情報が必要かについて項目を決定する。さらに、生体試料の収集への協力医療機関の把握や各機関で過去に保存した試料の実態調査を行う。
結果と考察
難病研究資源バンクでの保管・再利用に際して要する倫理面に配慮した共通した医療機関・患者への説明文書、同意書、同意撤回書の基本となる文書を作成した。特に各医療機関で使用する研究試料も含めて採取可能になるよう同意書の内容に配慮し、分担研究者に配布した。現在、各医療機関の倫理委員会で承認を得るため検討中である。また、試料を収集・保管については、将来的に重症多形滲出性紅斑の研究・調査を進展させるために必要になると考えうる血液(リンパ球、血清)、皮膚組織片、尿、唾液の4種類の試料を収集することを選択した。患者への説明文書などの作成はほぼ達成できているが、試料提供者への倫理面へ配慮した文書の整備については各医療機関における倫理委員会の制度などが反映するため、想定していた研究の効率が得られなかった部分もある。
結論
重症多形滲出性紅斑の難病研究資源バンクでの保管・再利用に際して要する倫理面に配慮した基本的な説明文書、患者への説明文書、同意書、同意撤回書の基本文書を作成した。本症は比較的まれな疾患であることから研究・調査を進展させるために必要になると考えうる血液(リンパ球、血清)、皮膚組織片、尿、唾液の4種類の試料を収集すること、加えて、再利用に際して試料提供者からのどのような情報が必要かについて検討し、試料提供者の年齢、性別、既往歴、基礎疾患、感染症の有無、服用薬剤名、重症多形滲出性紅斑の臨床病型、試料採取日、採取日における疾患の病勢・治療の種類などを収集することを共通化した。

公開日・更新日

公開日
2010-04-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936141C

成果

専門的・学術的観点からの成果
重症多形滲出性紅斑の試料収集・保管・再利用について倫理面、今後の再利用を考慮して、採取する試料・その量などを研究者間で検討した。この結果として検体提供者の倫理面に配慮した説明文書、同意書、同意撤回書の基本文書を作成した。また、採取する試料としては血液(リンパ球・血清)皮膚組織片、尿、唾液の4種類を選択し、保管することにした。また、今後の再利用のために試料採取時の疾患分類、原因薬剤、基礎疾患、病勢、治療状況なども採取した試料に統一して付しておく必要があるという研究結果を得た。
臨床的観点からの成果
重症多形滲出性紅斑は大部分が薬剤によって生じる重症の薬疹であることから、本研究にて収集された試料を用いた基礎研究は、本症の発症機序の解明、遺伝的背景の解析、感染症との関連や重症化の機序の解明などに貢献し、さらに新薬の開発にも寄与すると推測される。今後、この成果は臨床的にある遺伝的背景を有する患者では原因になると推測される薬剤の投与を回避するという医学的配慮や新しい有効な薬剤の開発による治療選択肢の増加に貢献することが確実で、本症の医療の改善に寄与すると思われる。
ガイドライン等の開発
重症多形滲出性紅斑に含まれるStevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群については診断基準が制定されており、広く利用されている。本年度にはStevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症の治療のガイドラインが作成され、学会誌に掲載された(日皮会誌119; 2157-2163, 2009)。また、急性汎発性発疹性膿疱症についてはすでに診断基準案が作成されているが、現在、最終的な検討が行われている。
その他行政的観点からの成果
重症多形滲出性紅斑は重症の薬疹であり、後遺症を残すことから厚生労働省の副作用・感染等被害判定第一部会(平成21年度 第2-6回)などでも頻繁に救済する対象として取り上げられている疾患である。本研究で収集された試料を用いた解析により、本症の病態や重症化の因子の解明、遺伝的背景の解析、さらに新薬の開発などがなされれば、本症の発症回避や発症した患者へ適切な医療の提供が可能になり、ひいては医療費削減に大いに貢献することになる。
その他のインパクト
本研究の研究者らは重症多形滲出性紅斑の臨床的特徴やそれに関する基礎的研究の成果をArchives of Dermatology, European Journal of Immunologyなどの世界的に有名な雑誌に論文を発表し、多くの皮膚科医に情報を提供しているとともに、日本皮膚科学会誌、西日本皮膚科などの本邦の学会誌にも結果を掲載している。さらに、薬疹分野で最も権威のある学会であるDrug Hypersensitivity Meeting の開催者より、次年度の講演を招聘されている。

発表件数

原著論文(和文)
16件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shiohara T, Kano Y, Takahashi R
Current concepts on the diagnosis and pathogenesis of drug-induced hypersensitivity syndrome.
JMAJ , 52 (5) , 347-352  (2009)
原著論文2
Tohyama M, Hanakawa Y, Shirakata Y, et al.
IL-17 and IL-22 mediate IL-20 subfamily cytokine production in cultured keratinocytes via increased IL-22 receptor expression.
Eur J Immunol , 39 (10) , 2279-2288  (2009)
原著論文3
Yang L, Shirakata Y, Tokumaru S, et al.
Living skin equivalents constructed using human amnions as a matrix.
J Dermatol Sci , 56 (3) , 188-195  (2009)
原著論文4
岡崎秀規, 藤山幹子, 村上信司, 他
薬剤性過敏症症候群(DIHS)の特徴的な顔面の所見とHHV-6再活性化との時間的関係
日皮会誌 , 119 (11) , 2187-2193  (2009)
原著論文5
相原道子, 狩野葉子, 飯島正文, 他
Stevens-Johnson症候群および中毒性表皮壊死症(TEN)の治療方針-平成20年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)重症多形滲出性紅斑に関する調査研究班による治療指針2009の解説-
日皮会誌 , 119 (11) , 2157-2163  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-