肺胞低換気症候群の病態の研究

文献情報

文献番号
200936137A
報告書区分
総括
研究課題名
肺胞低換気症候群の病態の研究
課題番号
H21-難治・一般-082
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
早坂 清(国立大学法人 山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺胞低換気症候群は,肺機能は正常であるにもかかわらず肺胞換気量が低下し,高炭酸ガス血症を呈する原因不明の疾患である.近年,先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome)の病因は,転写調節因子PHOX2Bの異常であると同定され,さらに,PHOX2Bの異常は,肺胞低換気症候群の病因の一つであることが報告された.本研究の目的は,肺胞低換気症候群および原因不明の中枢性睡眠時無呼吸の実態を調査し,病因を解明することである.また,症例のDNAをバンクに保管し,他の研究者の利用を可能にする.

研究方法
 全国の基幹病院(989病院)における肺胞低換気症候群および原因不明な中枢性睡眠時無呼吸症例の有無について,アンケートによる一次調査を施行した.また,PHOX2Bの検索依頼のあった症例については,遺伝子解析を施行した.なお,本研究の内容および検体(DNA)のバンク保管について,山形大学医学部倫理委員会の承認を得ている.検査および検体の保管に関しては,患者もしくは保護者から書面による承諾を得た.
結果と考察
一次調査では,556病院から返答があり,79名の症例の存在が明らかにされた.アンケートの回収率および15歳以下の小児人口約2,200万人などを考慮すると,約10万人に一人と推定され,欧米と同様な有病率である.
 CCHSの疑いがあり,遺伝子解析の依頼のあった症例は74例であり,51例にPHOX2B変異検出した.アラニン伸長変異が50例,一塩基挿入変異(866InsG)が1例であった.アラニン伸長変異では,25ポリアラニン変異13例,26以上のポリアラニン変異37例であった.
 25ポリアラニン変異では,成人となり低換気を呈する症例や感染時に低換気が顕在化する症例も存在し,浸透率も低く,家族検索は重要である.
 26以上のポリアラニン変異を有する症例では,全て新生児期に発症し,巨大結腸症や慢性便秘を合併する症例も多い.
 遺伝性に関して,5例は親からの遺伝であった.家族を含めた遺伝子診断は,家族の罹患者の発見に有用であり,遺伝カウンセリング上も重要な情報が得られることが明らかにされた.
結論
 肺胞低換気症候群において,家族を含めたPHOX2Bの遺伝子解析は,病態を解明するために,また潜在する症例の発見に,有効な遺伝カウンセリングを実施するためにも重要であることが明らかにされた.

公開日・更新日

公開日
2010-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936137C

成果

専門的・学術的観点からの成果
先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome)の主因は,転写調節因子PHOX2Bのde novoのポリアラニン伸長変異であるが,精子形成時の不等姉妹染色分体交換によることを明らかにした.
臨床的観点からの成果
先天性中枢性低換気症候群における遺伝子解析は,鑑別診断および治療方針の決定にも有用であることを明らかにした.家族検索も,潜在する患者の検出および遺伝性についても有用であることを明らかにした.
ガイドライン等の開発
ガイドラインの作成に有効な情報が得られたと考える.
その他行政的観点からの成果
遺伝解析による確定診断のもと,診療方針が決められ,効果的な管理が可能となる.
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
先天性中枢性低換気症候群におけるPHOX2Bのポリアラニン伸長機構を明らかにした.
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-