バイタルサインの統合的評価による急性毒性試験の判定基準策定と代替法に資する研究-診断学とAIによる致死性予測と人道的エンドポイントの設定-

文献情報

文献番号
202325008A
報告書区分
総括
研究課題名
バイタルサインの統合的評価による急性毒性試験の判定基準策定と代替法に資する研究-診断学とAIによる致死性予測と人道的エンドポイントの設定-
課題番号
22KD1004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部・動物管理室)
研究分担者(所属機関)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 種村 健太郎(東北大学大学院 農学研究科・動物生殖科学分野)
  • 相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
  • 鈴木 郁郎(東北工業大学 工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
20,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ReductionとRefinementによりヒトの安全性確保に主眼を置いた新規急性経口投与毒性試験方法の開発である。近年の情報技術の果実はバイタルサイン(VS)の取得を容易とし人の健康管理に利用されている。先行研究の成果により小動物でもその可能性が見出された。本研究は先行研究の成果であるVS測定器の更なる改良を進め、代替法において外れ値を示す化合物を動物に投与しVSを取得、化学物質の体内動態に資するタンパク結合率測定と予測を行い、AIによるVSの統合的評価と致死性予測を目的とする。人の中毒治療に利用可能な情報取得、急性毒性試験の「人道的エンドポイント」として利用することで動物福祉を充足する。in vivoとin vitroのギャップを埋める情報が得られることから代替法の開発に寄与できる。
研究方法
本研究では、ICCVAM(2006)のin vitro急性毒性試験代替法の開発で使用された化合物のうち、in vitro細胞毒性によるLD50の予測において外れ値を示した物質のうち入手可能な物について検討を行い代替法の予測性向上に資する情報を得る。具体的には、先行研究により開発されたVS測定機の更なる改良を進め、TG423に従った4用量にて強制経口投与により化合物を動物に投与しVSを取得、並行して、急性毒性発現時にどのような現象が生じているかを血液生化学、遺伝子発現変動解析により、VSの妥当性を考察し人への外挿を図るとともに、in vitro to in vivo extrapolationに資する情報として化合物のタンパク結合率測定を実施、既存及び新たに取得したデータを用い、AIによるVSの統合的評価と致死性予測プログラムの開発を進める。更に、脳波については、別途解析を行い有害性発現予測AIの開発を進める。
結果と考察
バイタルサイン測定装置の開発ではカーボンナノチューブヤーン(CNT-Y)を表面電極として使用し非拘束下で脳波(EEG)と心電図(ECG)を測定する方法に取り組み、動物の身体に実装可能なサイズのトランスミッターの設計を行った。In vitro急性毒性試験方法において予測性が低い剤の中から6種類の剤についてラット血漿中タンパク結合率測定を行ったが、何れも極めて低い値を示した。急性毒性発現における遺伝子発現変動解析では遅延性の急性毒性を示す化学物質に共通してタンパク質の変性が亢進していることが示唆された。急性毒性試験における非侵襲的バイタルサインの検討として、アセフェート・ニコチン・無水カフェインを投与したマウスのホームケージ活動性について評価した。一方、超音波発声の解析を試みたが反応が見られなかった。ソフトウエアの開発では、アミトリプチリン塩酸塩を投与したラットのECGにMatrix Profileアルゴリズムを適用して検討した結果、緩やかな変化にを検出することはなかったが、局所的な心拍異常、ほぼ心停止状態の心電図異常について検知した。また、処理速度も十分高速であり、急性毒性試験実施中のリアルタイムの致死性予測システムに実装できる可能性が高いと考えられた。EEGについては、アミトリプチリン塩酸塩及びアトロピン硫酸塩を投与したラットのEEGについてFast Fourier TransformによるPower Spectral Density解析並びに独自に開発した解析手法である脳波バースト解析を行い用量依存的な変化を捉えた。
結論
データ取得の方法については改善する必要があるものの、得られたデータを用いてバイタルサインの統合的評価による致死性予測が評価法としての可能が示された。遺伝子発現変動解析から急性毒性において遅発性に毒性が現れる機序が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2024-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202325008Z