文献情報
文献番号
202325007A
報告書区分
総括
研究課題名
毒物又は劇物の指定等に係る急性吸入毒性試験の代替法の開発及びその精緻化に関する研究
課題番号
22KD1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
- 津田 洋幸(公立大学法人 名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
- 魏 民(大阪公立大学・大学院医学研究科 環境リスク評価学)
- 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
- 赤根 弘敏(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
21,849,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
毒物又は劇物は、原則、動物を用いた急性毒性試験におけるLD50/LC50値から判定されており、投与方法には経口、経皮及び吸入が想定されている。しかし、全身吸入暴露法は大規模な暴露装置が必要となるなどの困難があるため、吸入毒性情報は限定的である。本研究では、(1) in vivo試験代替法として、吸入暴露が想定される物質の毒劇物判定における経気管肺内噴霧投与法(Trans-tracheal intrapulmonary spraying;TIPS法)の検証、及び、(2) in vitro試験代替法として、ヒト肺癌細胞株(A549)の細胞毒性を指標とした評価法を検討・精緻化し、毒劇物の指定に資する手法の確立を図ることを目的としている。
研究方法
ラットを用いたTIPS法による気管内投与急性吸入毒性試験の病理組織学的検査においては、令和4年度に実施したTIPS法6試験について、気管、気管支、肺、肝臓、心臓、脾臓、胸腺、腎臓、副腎の病理組織学的検査を実施した。
ラットを用いたTIPS法による気管内投与急性吸入毒性試験におけるLD50の判定並びに吸入暴露法及びin vitro Neutral red assayとの比較においては、新規被験物質として8化合物についてTIPS法によるLD50値の判定及び毒性影響の検討を実施した。
また、in vitro試験においては、6-wellプレートにヒト肺腺癌細胞株A549を2 x 105細胞で播種し、18化合物について(2 ml/well; 2 wells/被検物質) 37℃の5% CO2インキュベーターにて15分間インキュベーションしたのち洗浄し、Neutral red含有RPMI溶液(Neutral red最終濃度0.33%)をwell内に添加した。さらに、37℃の5%CO2インキュベーターにて3時間インキュベーションしたのち洗浄し、酢酸-エタノール溶液(50%エタノール + 49% ミリQ水 + 1% 氷酢酸)を加えてNeutral redを回収し、培養液を540 nm波長の吸光度を測定しLC50を算出した。
ラットを用いたTIPS法による気管内投与急性吸入毒性試験におけるLD50の判定並びに吸入暴露法及びin vitro Neutral red assayとの比較においては、新規被験物質として8化合物についてTIPS法によるLD50値の判定及び毒性影響の検討を実施した。
また、in vitro試験においては、6-wellプレートにヒト肺腺癌細胞株A549を2 x 105細胞で播種し、18化合物について(2 ml/well; 2 wells/被検物質) 37℃の5% CO2インキュベーターにて15分間インキュベーションしたのち洗浄し、Neutral red含有RPMI溶液(Neutral red最終濃度0.33%)をwell内に添加した。さらに、37℃の5%CO2インキュベーターにて3時間インキュベーションしたのち洗浄し、酢酸-エタノール溶液(50%エタノール + 49% ミリQ水 + 1% 氷酢酸)を加えてNeutral redを回収し、培養液を540 nm波長の吸光度を測定しLC50を算出した。
結果と考察
得られたTIPS法のLD50を吸入暴露法及びin vitroのNeutral red assay から換算したLD50/LC50と比較したところ、TIPS法のLD50が吸入暴露法の0.5~2倍であった物質が5/14物質、0.25~0.5倍であった物質が3/14物質、0.25倍以下であった物質が6/14物質であった。TIPS法のLD50は吸入暴露法と同程度、又は低値を示したことから、TIPS法では吸入暴露法と比較して毒性が同等あるいは強く表れる物質がある可能性が考えられた。また、Neutral red assayはTIPS法による急性毒性とある程度相関すると考えられ、急性毒性試験の投与濃度設定に有用な指標となりえる可能性が考えられた。
In vitro試験では、非水溶性物質についてもA549 NRU assayによってLC50が得られることをはじめて明らかにした。また水溶性物質においてLC50(A549 NRU assay)がLD50(4 時間ラット吸入ばく露試験)と正の相関が得られたことから、A549 NRU assayがin vitro投与量設定法として有用であることが確認できた。
さらに、先行研究でTIPS投与法の短期毒性試験におけるLD50以下の用量群の生存ラットの2年間観察後の屠殺を終了した。肉眼的には、自然発生白血病によると思われる肝・脾腫大病変が散発して見られた。現在標本を作製中である。
In vitro試験では、非水溶性物質についてもA549 NRU assayによってLC50が得られることをはじめて明らかにした。また水溶性物質においてLC50(A549 NRU assay)がLD50(4 時間ラット吸入ばく露試験)と正の相関が得られたことから、A549 NRU assayがin vitro投与量設定法として有用であることが確認できた。
さらに、先行研究でTIPS投与法の短期毒性試験におけるLD50以下の用量群の生存ラットの2年間観察後の屠殺を終了した。肉眼的には、自然発生白血病によると思われる肝・脾腫大病変が散発して見られた。現在標本を作製中である。
結論
ラットを用いたTIPS法において、LD50(TIPS)とLD50(inhalation)またはLD50(Neutral red assay)を比較した結果、TIPS法は吸入暴露法と比較して毒性が同等、あるいは強く表れる物質がある可能性が考えられた。
in vitro 試験においては、A549 NRU assayにより有機溶媒などの非水溶性物質においてもLC50を算出することが可能となった。また、水溶性物質についてはLC50 (A549 NRU assay)がLD50 (4時間ラット吸入ばく露試験)と緩やかな正の相関を示された。今後も引き続き、A549 NRU assayの汎用性を検証すると共に、非水溶性物質における知見を蓄積することで、A549 NRU assayの精緻化を図る。
in vitro 試験においては、A549 NRU assayにより有機溶媒などの非水溶性物質においてもLC50を算出することが可能となった。また、水溶性物質についてはLC50 (A549 NRU assay)がLD50 (4時間ラット吸入ばく露試験)と緩やかな正の相関を示された。今後も引き続き、A549 NRU assayの汎用性を検証すると共に、非水溶性物質における知見を蓄積することで、A549 NRU assayの精緻化を図る。
公開日・更新日
公開日
2024-10-03
更新日
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