生体試料等の収集に関する研究：日本人多発性硬化症患者緯度・病型別臨床データ/サンプルバンクの構築

文献情報

• 文献番号: 200936133A
• 報告書区分: 総括
• 研究課題名: 生体試料等の収集に関する研究：日本人多発性硬化症患者緯度・病型別臨床データ/サンプルバンクの構築
• 課題番号: H21-難治・一般-078
• 研究年度: 平成21(2009)年度
• 研究代表者(所属機関): 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院 脳神経病研究施設神経内科学分野)

研究分担者(所属機関)

• 楠　進(近畿大学医学部神経内科)
• 神田　隆(山口大学医学部神経内科学神経内科学)
• 郡山　達男(広島市立広島市民病院神経内科)
• 三木　哲郎(愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻加齢制御内科分野)
• 坂田　清美(岩手医科大学医学部衛生学)
• 松下　拓也(九州大学大学院医学研究院寄附講座臨床神経免疫学)

• 研究区分: 厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
• 研究開始年度: 平成21(2009)年度
• 研究終了予定年度: 平成21(2009)年度
• 研究費: 5,000,000円
• 研究者交替、所属機関変更: -

研究報告書（概要版）

研究目的

日本人多発性硬化症（multiple sclerosis; MS）患者を対象に，臨床・MRIデータ所見，ヒト白血球抗原（human leukocyte antigen; HLA）クラスIIアリル，抗アクアポリン4（aquaporin 4; AQP4）抗体の有無から病型分類し，病型ごとの血清・髄液・細胞・DNAバンクを，緯度により南日本，中央日本，北日本コホートとして構築することを目的とする。各コホート間の共同研究のみならず，国内外のMS研究者への情報公開や試料提供，他のMSコホートとの共同研究が可能な体制を構築する。

研究方法

南西日本の協力施設からMS患者をバンクに登録し，臨床データ・試料の収集を行い南日本MSコホートとする。併せて患者生育環境調査を実施し，臨床・抗体検査・MRIデータに基づいたMS病型分類を行い，病型ごとの遺伝子解析を行う。

結果と考察

西日本の6大学神経内科（九州大，大阪大，近畿大，広島大，山口大，愛媛大）で匿名化したMS患者287例，健常対照者303例のDNAを収集した。患者のHLAクラスIIアリルのgenotyping，高感度AQP4抗体測定法により，大部分の例では，抗AQP4抗体の有無を決定した。各施設で臨床，画像所見についての情報収集が進められ，データベースを構築している。収集した検体利用の道筋については難病研究資源バンクを利用することとなり，準備段階を終了したと考える。

結論

MS患者データを収集し匿名化された臨床，画像データ，試料の収集を行った。収集検体のHLAクラスIIアリルの解析，抗AQP4抗体の測定を行った。各施設で難病研究資源バンクへの試料移送のための倫理審査を行い，今後のバンク構築に向けてのコンセンサスを得た。

公開日・更新日

• 公開日: 2010-06-14
• 更新日: -

行政効果報告

• 文献番号: 200936133C

成果

• 専門的・学術的観点からの成果: 疾患頻度が低いために困難であったMSに関する遺伝子解析が，全国的に収集され多施設で利用可能となることで，遺伝的特徴についての解析が発展することが期待される。人種による遺伝的多型と疾患に影響する多型の関連が世界的にも問題となっており，日本人を対象とした遺伝子バンクの構築とその解析は，国際的にも意義は高い。
• 臨床的観点からの成果: 本研究により日本人では初めての大規模なMSデータベースが構築され，前向きに標準化された臨床データが収集され病型ごとの自然経過，IFNβ投与下の治療経過を解明するための基礎的土台が構築されたと考える。また根治療法のないMS患者は，いったん発病すると生涯にわたって再発に苦しみ重い機能障害を残す。本研究により，日本人におけるMS発症リスク因子，防御因子が解明されれば，増加し続けるMSの発症予防につながる施策の実施が期待できる。
• ガイドライン等の開発: 難病研究資源バンク（基盤研）への試料提供体制の構築にあたり，各施設において患者試料の提供に関するガイドラインを策定し，倫理委員会での評価を受けた。
• その他行政的観点からの成果: 全国的な多発性硬化症生体試料の収集，解析が可能となり，今後，リスク因子や防御因子の解析が進むことで，行政政策にも寄与するものと考える。
• その他のインパクト: 特になし。

発表件数

• 原著論文（和文）: 1件
• 原著論文（英文等）: 15件
• その他論文(和文): 6件
• その他論文(英文等): 3件
• 学会発表(国内学会): 35件
• 学会発表(国際学会等): 23件
• その他成果(特許の出願): 0件 ; 「出願」「取得」計0件
• その他成果(特許の取得): 0件
• その他成果(施策への反映): 0件
• その他成果(普及・啓発活動): 0件

主な原著論文20編（論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る）

• 原著論文1: Kureshiro J, Miyamoto K, Kusunoki S.; Selective phosphodiesterase-3 inhibitor cilostazol ameliorates EAE.; Neuroreport , 20 , 718-722 (2009)
• 原著論文2: Miyamoto K, Kusunoki S.; Intermittent plasmapheresis prevents recurrence in neuromyelitis optica.; Ther Apher Dial , 13 , 505-508 (2009)
• 原著論文3: Osoegawa M, Kira J, Fukazawa K, et al.; Temporal changes and geographical differences in multiple sclerosis phenotypes in Japanese: nationwide survey results over 30 years.; Multiple Sclerosis , 15 , 159-173 (2009)
• 原著論文4: Doi H, Matsushita T, Isobe N, et al.; Hypercomplementemia at relapse in patients with anti-aquaporin-4 antibody.; Multiple Sclerosis , 15 , 304-310 (2009)
• 原著論文5: Sonobe Y, Takeuchi H, Kataoka K, et al.; Interleukin-25 expressed by brain capillary endothelial cells maintains blood-brain barrier function in a protein kinase Cepsilon-dependent manner.; J Biol Chem , 284 , 31834-31842 (2009)
• 原著論文6: Ishizu T, Kira J, Osoegawa M, et al.; Heterogeneity and continuum of multiple sclerosis phenotypes in Japanese according to the results of the fourth nationwide survey.; J Neurol Sci , 280 , 22-28 (2009)
• 原著論文7: Matsushita T, Isobe N, Matsuoka T, et al.; Aquaporin-4 autoimmune syndrome and anti-aquaporin-4 antibody-negative opticospinal multiple sclerosis in Japanese. ; Multiple Sclerosis , 15 , 834-847 (2009)
• 原著論文8: Watanabe A, Matsushita T, Doi H, et al.; Multimodality evoked potential study of anti-aquaporin-4 antibody-positive and –negative multiple sclerosis patients.; J Neurol Sci , 281 , 34-40 (2009)
• 原著論文9: Matsushita T, Isobe N, Matsuoka T, et al.; Extensive vasogenic edema of anti-aquaporin-4 antibody-related brain lesions.; Multiple Sclerosis , 15 , 1113-1117 (2009)
• 原著論文10: Li W, Minohara M, Piao H, et al.; Association of anti-Helicobacter pylori neutrophil-activating protein antibody response with anti-aquaporin-4 autoimmunity in Japanese patients with multiple sclerosis and neuromyelitis optica.; Multiple Sclerosis , 15 , 1411-1421 (2009)
• 原著論文11: Isobe N, Matsushita T, Yamasaki R, et al. ; Influence of HLA-DRB1 alleles on the susceptibility and resistance to multiple sclerosis in Japanese patients with respect to anti-aquaporin 4 antibody status.; Multiple Sclerosis , 16 , 147-155 (2010)

公開日・更新日

• 公開日: 2015-06-08
• 更新日: 2016-06-20