膠原病、自己免疫疾患の重複症候群を中心とした実態把握と解析に向けた試料収集

文献情報

文献番号
200936131A
報告書区分
総括
研究課題名
膠原病、自己免疫疾患の重複症候群を中心とした実態把握と解析に向けた試料収集
課題番号
H21-難治・一般-076
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山本 一彦(東京大学大学院 医学系研究科内科学専攻アレルギーリウマチ学)
研究分担者(所属機関)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院第二内科)
  • 石井 智徳(東北大学病院血液免疫科)
  • 住田 孝之(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 平形 道人(慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター)
  • 高田 和生(東京医科歯科大学医学部附属病院膠原病・リウマチ内科 )
  • 天野 浩文(順天堂大学医学部膠原病内科 )
  • 西本 憲弘(和歌山県立医科大学医学部免疫制御学講座)
  • 田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学講座 )
  • 高地 雄太(独立行政法人理化学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在、自己免疫疾患のゲノム解析は世界的な競争が行われているが、疾患関連遺伝子は複数の自己免疫疾患で共通の場合があり、さらにそれが民族で異なるということなどが判明しつつある。そこで、本研究では、我が国の自己免疫疾患の重複症候群の臨床症状の収集とサンプル収集を中心に、対照疾患として、多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、シェーグレン症候群(SS)、成人スティル病(AOSD)、全身性エリテマトーデス(SLE)などの単独疾患症例を含めた臨床情報とDNAサンプル収集を行い、実態把握と自己免疫疾患の原因究明の為の重要なツールとしてのゲノム解析のための試料を収集することを目的とした。
研究方法
 自己免疫疾患の重複症候群の臨床症状の収集とDNAサンプル収集を中心に行った。まず対照単独疾患として、PM/DM、SS、AOSD、SLEなどの疾患症例の臨床情報とサンプル収集を行った。そして、これらの疾患を持ち、かつ他の自己免疫疾患の診断がある重複症候群患者に焦点を当て、臨床情報とDNAサンプルを積極的に収集した。ヒトゲノム試料の収集ならびに臨床情報の提供については、各施設の倫理委員会の承諾を得、臨床検体はインフォームドコンセントのもとに収集し、個人情報は漏洩のないよう管理した。
結果と考察
 各施設の倫理委員会の承諾に時間がかかり、収集作業開始がスムーズではなかったが、2010年3月現在、SLEを始め重複症候群を含む1000検体以上が収集されている。
 自己免疫疾患には多くの疾患が存在し、それぞれの原因は不明であり、その治療法も限られている。この点で、複数の自己免疫疾患が同一家系に存在し、また一人の患者が複数の疾患に罹患する現象、すなわち重複症候群は、その原因に対する解析の大きな手がかりを与えてくれるものと期待できる。
 実際の臨床に対しては、臨床情報を収集することで重複症候群と単独疾患との比較を通じて、症候群を幾つかのカテゴリーに分類することができ、自己免疫疾患の診療に新しい情報を提供できると期待され、国民の医療の向上に役立つと考える。
結論
 我が国の自己免疫疾患の重複症候群の臨床的特徴、遺伝的背景を解明するため、それぞれの単独疾患罹患患者の情報と比較しながら研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2010-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936131C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全身性エリテマトーデスをはじめとする膠原病、すなわち全身性自己免疫疾患や臓器特異的自己免疫疾患は、同一家系にこれらの異なる疾患が発症する頻度が高く、さらに同一患者が複数の疾患に罹患することも多い。これらの患者、家系には自己免疫疾患としての遺伝的背景が単独疾患罹患患者とは異なる、または強く現れている可能性があり、自己免疫疾患の解析に重要な情報を与えると期待される。
臨床的観点からの成果
複数の自己免疫疾患に罹患の場合は重複症候群(オーバーラップ症候群)として扱われ、治療法もそれぞれの疾患の中から優先されるものを選択しているのが現状である。しかし、本研究を進め収集した臨床情報を解析することで、重複症候群と単独疾患との比較を通じて、症候群を幾つかのカテゴリーに分類することができることが期待される。これらにより、自己免疫疾患の診療に新しい情報を提供でき、国民の医療の向上に役立つことが期待される。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
既に我が国および欧米のゲノム解析から、複数の疾患関連遺伝子が複数の自己免疫疾患に関連していることも明らかになっており、それが民族で大きく異なっていることも判明している。我が国独自のゲノム情報を蓄積することは、我が国独自のテーラーメード医療の確立の重要なステップとなる。また、同定した疾患関連遺伝子がコードする分子またはそれと密接に関連する分子群は、創薬の適切な標的となることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
16件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishimoto K, Kochi Y, Ikari K, et al.
Association study of TRAF1-C5 polymorphisms with susceptibility to rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus in Japanese.
Ann Rheum Dis. , 39 , 368-373  (2010)
原著論文2
Kochi Y, Myouzen K, Yamada R, et al.
FCRL3, an autoimmune susceptibility gene, has inhibitory potential on B-cell receptor-mediated signaling.
J Immunol. , 183 , 5502-5510  (2009)
原著論文3
Okada Y, Yamada R, Suzuki A, et al.
Contribution of a haplotype in the HLA region to anti-cyclic citrullinated peptide antibody positivity in rheumatoid arthritis, independently of HLA-DRB1.
Arthritis Rheum. , 60 , 3582-3590  (2009)
原著論文4
Okamura T, Fujio K, Shibuya M, et al.
CD4+CD25-LAG3+ regulatory T cells controlled by the transcription factor Egr-2.
Proc Natl Acad Sci USA. , 106 , 13974-13979  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
2016-06-20