文献情報
文献番号
202324048A
報告書区分
総括
研究課題名
薬剤師国家試験のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2016
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小澤 孝一郎(広島大学 大学院医系科学研究科・薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀依(帝京大学 薬学部)
- 三田 智文(東京大学大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「薬学教育モデル・コア・コアカリキュラム(令和4年度改訂版)」や「薬剤師国家試験のあり方に関する基本方針(平成28年2月)」を踏まえ、社会及び医療現場において活躍する薬剤師像を明確にし、その資質を確認するための薬剤師国家試験について、解析、課題の整理・検討等を行い、薬剤師国家試験と薬学共用試験CBT のあり方に関する見直し方針の基礎資料を作成する。
研究方法
薬学共用試験と薬剤師国家試験等の比較・分析を行い、薬学共用試験CBTによる国家試験基礎分野問題の代用可能性、合格基準の変更による影響、改訂モデル・コア・カリキュラム等を踏まえた国家試験出題基準の見直しなど、薬剤師国家試験のあり方について提言を作成する。
結果と考察
1)薬学共用試験CBTと薬剤師国家試験の基礎系科目間の比較・検討、薬学共用試験CBTによる基礎分野問題の代用性についての検討
薬学共用試験CBTによる基礎分野問題の代用性:現行の薬学共用試験CBT(以下、CBT)は、モデル・コア・カリキュラムのSBOを跨いだ複合的な出題はしないとの前提で作問されているため、モデル・コア・カリキュラムのSBO1つに対し受験生個々人に出題される問は1つとなっている。一方、国家試験は、「知識を統合する」という観点から、必須問題も含めて、SBOを複合的に作問されており、近年問題の質も向上している。これらの観点から、国家試験で複合的に出題され、知識を統合する力を評価できるようになっているものを、CBTで代用することで、1問の内容はSBO 1つのみで統合力を問うことができない出題となり、逆に質が低下する可能性がある。また、薬学では、臨床領域に留まらず、基礎領域においても臨床実習を経て、CBTから国家試験までに学力が伸びる学生が多数いるという現状があり、国家試験の必須問題をCBTで代用させた場合、臨床実習などを経て培われた能力を測れなくなる恐れがある。
薬学共用試験CBTと薬剤師国家試験の基礎系科目間の比較・検討: 薬学共用試験CBTでは、実施当初より全国の大学で統一した基準点(60%)を設けて実施している。さらに、CBTでは問題セット間での難易度の均一性も担保されている。また、年度間での難易度の均一化も保たれている。
2)国家試験の出題範囲及び合格基準の変更による影響の第一次案作成
国家試験の出題範囲:「薬学教育モデル・コア・コアカリキュラム」の令和4年度改訂における大きな変更点は、「プロセス基盤型教育」から「アウト・カム基盤型教育」へのパラダイムシフトであり、学生の学び方に変化はあるが、学生が学ぶ内容には大きな変更がないことから、令和4年度の改訂に伴い、国家試験の出題範囲を大きく変更する必要はないと考えられる。
合格基準の変更:薬剤師国家試験の合格基準については、従来は絶対基準で判定されていたが、第101回以降は相対基準へと変更となった。変更前後の合格率を比較しても大きな隔たりはなかったことから、現行方式で問題ないと考えられる。
禁忌肢:薬剤師国家試験における禁忌肢は、平成30(2018)年の第104回薬剤師国家試験より導入されて約6年が経過し、薬剤師として不適格な者を判別するという当初の目的が達成されるものとなっているか等、様々な観点からの議論が必要である。
3)薬剤師国家試験のあり方についての提言第一次案の作成
薬学においては、6年制下における長期実務実習の開始時より参加型実習を実施しており、さらに、薬剤師の職能が今後さらに拡大していくことなどを踏まえ、在学中の参加型実務実習をさらに充実させる必要がある。しかしながら、長期実務実習における薬学生の医療行為に関する法的根拠は現在のところ不十分であると言わざるを得ず、法的位置付けを明確にする必要がある。
薬学共用試験CBTによる基礎分野問題の代用性:現行の薬学共用試験CBT(以下、CBT)は、モデル・コア・カリキュラムのSBOを跨いだ複合的な出題はしないとの前提で作問されているため、モデル・コア・カリキュラムのSBO1つに対し受験生個々人に出題される問は1つとなっている。一方、国家試験は、「知識を統合する」という観点から、必須問題も含めて、SBOを複合的に作問されており、近年問題の質も向上している。これらの観点から、国家試験で複合的に出題され、知識を統合する力を評価できるようになっているものを、CBTで代用することで、1問の内容はSBO 1つのみで統合力を問うことができない出題となり、逆に質が低下する可能性がある。また、薬学では、臨床領域に留まらず、基礎領域においても臨床実習を経て、CBTから国家試験までに学力が伸びる学生が多数いるという現状があり、国家試験の必須問題をCBTで代用させた場合、臨床実習などを経て培われた能力を測れなくなる恐れがある。
薬学共用試験CBTと薬剤師国家試験の基礎系科目間の比較・検討: 薬学共用試験CBTでは、実施当初より全国の大学で統一した基準点(60%)を設けて実施している。さらに、CBTでは問題セット間での難易度の均一性も担保されている。また、年度間での難易度の均一化も保たれている。
2)国家試験の出題範囲及び合格基準の変更による影響の第一次案作成
国家試験の出題範囲:「薬学教育モデル・コア・コアカリキュラム」の令和4年度改訂における大きな変更点は、「プロセス基盤型教育」から「アウト・カム基盤型教育」へのパラダイムシフトであり、学生の学び方に変化はあるが、学生が学ぶ内容には大きな変更がないことから、令和4年度の改訂に伴い、国家試験の出題範囲を大きく変更する必要はないと考えられる。
合格基準の変更:薬剤師国家試験の合格基準については、従来は絶対基準で判定されていたが、第101回以降は相対基準へと変更となった。変更前後の合格率を比較しても大きな隔たりはなかったことから、現行方式で問題ないと考えられる。
禁忌肢:薬剤師国家試験における禁忌肢は、平成30(2018)年の第104回薬剤師国家試験より導入されて約6年が経過し、薬剤師として不適格な者を判別するという当初の目的が達成されるものとなっているか等、様々な観点からの議論が必要である。
3)薬剤師国家試験のあり方についての提言第一次案の作成
薬学においては、6年制下における長期実務実習の開始時より参加型実習を実施しており、さらに、薬剤師の職能が今後さらに拡大していくことなどを踏まえ、在学中の参加型実務実習をさらに充実させる必要がある。しかしながら、長期実務実習における薬学生の医療行為に関する法的根拠は現在のところ不十分であると言わざるを得ず、法的位置付けを明確にする必要がある。
結論
薬学共用試験CBTによる基礎分野問題の代用性:現段階では、CBTの公的化と国家試験の必須問題とをリンクさせる必然性はないと考えられる。
薬学共用試験CBTと薬剤師国家試験の基礎系科目間の比較・検討:薬学では出題難易度や公平性が厳密に制御されていることから、改めてIRTを解析する必要は無いと考えられる。
国家試験の出題範囲、合格基準、禁忌肢の変更:国家試験の出題範囲及び合格基準の現段階での変更は必要ないと考えられる。一方、禁忌肢については、継続的な議論が必要である。
Student pharmacist:この導入は、例えばstudent pharmacistとして法的位置付けが明確になると、地震等による大規模災害時の避難所での支援、新型コロナウイルス感染症などのパンデミック時にワクチンの希釈・分注を担当するなど、社会的貢献も期待され、我が国の医療界にとって必要であると考えられる。一方で、student pharmacistが実施可能な行為や責任体制などの検討も必要である。
薬学共用試験CBTと薬剤師国家試験の基礎系科目間の比較・検討:薬学では出題難易度や公平性が厳密に制御されていることから、改めてIRTを解析する必要は無いと考えられる。
国家試験の出題範囲、合格基準、禁忌肢の変更:国家試験の出題範囲及び合格基準の現段階での変更は必要ないと考えられる。一方、禁忌肢については、継続的な議論が必要である。
Student pharmacist:この導入は、例えばstudent pharmacistとして法的位置付けが明確になると、地震等による大規模災害時の避難所での支援、新型コロナウイルス感染症などのパンデミック時にワクチンの希釈・分注を担当するなど、社会的貢献も期待され、我が国の医療界にとって必要であると考えられる。一方で、student pharmacistが実施可能な行為や責任体制などの検討も必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-04-11
更新日
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