非ヒト霊長類の動物実験代替法等の薬事上の取り扱いに関する研究

文献情報

文献番号
202324045A
報告書区分
総括
研究課題名
非ヒト霊長類の動物実験代替法等の薬事上の取り扱いに関する研究
課題番号
23KC2013
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
研究分担者(所属機関)
  • 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
  • 花木 賢一(国立感染症研究所 安全管理研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,472,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カニクイザル、アカゲザル等の非ヒト霊長類(NHP:non-human primates)は、医薬品開発における有効性、安全性等の評価において重要な役割を果たしている。特に、抗体医薬品など近年開発が目覚ましい個別化医療の開発に必須とされている。国内で必要なNHPの多くは海外からの輸入に依存しているが、COVID-19のパンデミック以降、ワクチン等の開発におけるNHPの需要が急増するとともに、これまで主要な輸出国であった中国が輸出を停止したこと等により、世界的にNHPの供給不足と価格高騰が生じている。パンデミック後も、バイオ医薬品の世界的な開発ペースの加速化に伴い、NHPの需要は引き続き高止まりすると予測される。このまま現状の供給不足が続いた場合、我が国での医薬品の開発・承認にも支障が生じるため、喫緊の対応が必要である。本課題では、国内におけるNHPの使用実態や代替法等に関する調査・研究をもとに、対応の提案を目的としている。
研究方法
コモンマーモセットを用いた安全性評価に関する調査として、代表的な免疫毒性試験であるT細胞依存性抗体産生試験(TDAR)へのコモンマーモセットの反応性/適用性について検討するとともに、国内外の医薬品開発におけるコモンマーモセットの利用状況について、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医療用医薬品添付文書等情報検索およびホームページや文献情報等から情報収集をおこなった
また、関連団体における供給状況及び対応の実態調査に関する研究として、製薬企業や医薬品開発業務受託機関におけるNHPの需給ギャップへの今後の対処方針に資する調査研究を行った。
さらに、感染動物モデルとしてのフェレットに関する調査研究として、文献情報を検索して整理した。
結果と考察
コモンマーモセットを用いて、keyhole limpet hemocyanin(KLH)投与群の血清中抗KLH抗体価をELISAにて測定した結果、対照群との間に差は認められなかった。引き続き抗体産生を誘導するKLHの至適投与条件を検討するため、アジュバントであるAlumを併用投与する実験を立案してコモンマーモセットを導入し、コモンマーモセットのTDARへの適用性について検証中である。また、医薬品開発において、コモンマーモセットを用いた安全性評価は限定的ではあるものの、PMDAにおいて評価資料として用いられ、毒性試験には毎年1〜2件に用いられていることが確認された。不足する基礎的データを補うことにより、他のNHPよりも適切な場合の代替となる潜在性があると考えられた。

先行研究の情報を元に、NHPの代替となるin vitro試験やin silicoの研究を実施しているとの回答者へのNHPを用いない動物実験代替法に関する追加のアンケートを実施した。その結果、非臨床安全性評価においても利用な可能な動物個体を用いない様々な代替法が考案されつつある一端が垣間見られた。一方、現状としてはin vitroや in silicoへの代替には限界があり、個体評価は不可欠である。必要な動物試験が実施可能な体制の維持強化についても有効な対策が望まれた。

日米欧でのフェレットの利用状況を調査した結果、何れも具体的数値としては確認できなかったが、実験動物としては使用数の少ないNHPよりもさらに少なく、日本では10分の1程度であった。その多くは国立感染症研究所で使用されていた。フェレットはインフルエンザ研究で不可欠な実験動物であるが、実験動物種としては一般的ではなかった。ヒト感染症動物モデルとしては、エボラウイルス属ウイルス、ヘニパウイルス属ウイルス、重症熱性血小板減少症候群ウイルスでもヒトに近い病態を示すことが報告されており、ヒト感染症動物モデルとしての知見が蓄積され、試薬や解析技術が開発されることによってNHPに代わりうることが期待された。
結論
コモンマーモセットに文献情報に基づいてKLHを投与したところ、抗KLH抗体価の上昇は認められなかった。引き続きアジュバントの併用投与実験を実施中である。また、国内外の医薬品開発におけるコモンマーモセットの利用状況について情報収集をおこなったところ、限定的ではあるもののPMDAにおいて評価資料として用いられていた。
また、追加のアンケートからは、非臨床安全性評価においても利用な可能な動物個体を用いない様々な代替法が考案されつつある一方、現状では個体評価は不可欠であり、必要な動物試験が実施可能な体制の維持強化が望まれている実態も明らかとなった。
さらに、フェレットは日米欧で使用数の少ない実験動物であるが、インフルエンザでは重要な動物モデルであり、他のヒト感染症についても動物実験の知見が蓄積されることでNHPの代替になることが期待された。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324045Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,472,000円
(2)補助金確定額
6,472,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,140,603円
人件費・謝金 208,320円
旅費 43,794円
その他 79,324円
間接経費 0円
合計 6,472,041円

備考

備考
物品費の消耗品などに差額が出ましたが、自己資金で充填させていただきました。

公開日・更新日

公開日
2024-05-31
更新日
-