性同一性障害(性別不合)に対するホルモン剤の使用実態及び臨床評価手法に関する研究

文献情報

文献番号
202324043A
報告書区分
総括
研究課題名
性同一性障害(性別不合)に対するホルモン剤の使用実態及び臨床評価手法に関する研究
課題番号
23KC2011
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
中塚 幹也(岡山大学 学術研究院保健学域)
研究分担者(所属機関)
  • 舛森 直哉(札幌医科大学医学部)
  • 石原 理(女子栄養大学)
  • 中島 彰俊(富山大学 学術研究部医学系)
  • 北島 道夫(国際医療福祉大学)
  • 長谷川 高誠(岡山大学病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
1,660,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外の学会等の各種のガイドライン・指針等を整理,日本における性同一性障害(性別不合)へのホルモン療法の実態を明らかにするとともに,今後の調査の基礎データとする.
研究方法
各国の関連学会等の性同一性障害(性別不合)の診療ガイドラインや指針から情報を収集し整理する.また,gid.jp(日本性同一性障害・性別違和と共に⽣きる⼈々の会)などの当事者団体へのヒアリングを実施する.さらに,研究分担者・協力者やGID学会会員の所属する専門医療施設やその関連施設におけるホルモン療法の実態調査を実施する.ホルモン療法の担当者を対象に,ホルモン剤の用法・用量,また,使用している効果判定の指標,副作用の評価のための検査等を調査する(専門施設一次調査).
結果と考察
WPATH,米国内分泌学会など,各国の関連学会等が作成している性同一性障害の診療ガイドラインや指針には標準的なホルモン剤の用法・用量,身体的変化の定量法が記載されていたが,専門家の意見を集約したものであった.これらを参考に,産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編集・監修)において,CQ432 性別不合(性同一性障害)のホルモン療法の取り扱いは?としてまとめた.日本女性医学会のホルモン補充療法(HRT)ガイドラインの中にも掲載予定である.日本精神神経学会/日本GI(性別不合)学会(旧,GID(性同一性障害)学会)合同の性別不合診療ガイドライン(第5版)の中で,ホルモン療法の用法・用量を記載予定である,
gid.jp(日本性同一性障害・性別違和と共に⽣きる⼈々の会)などの当事者団体,および.岡山大学ジェンダークリニックを受診中の性同一性障害(性別不合)当事者へのヒアリングでは,全国的に性同一性障害(性別不合)診療の専門医療施設が不足しており,そのような施設と連携した,あるいは連携なく診療所などで実施されていた.また,自費のみではなく,保険適用で実施されている現状,血液検査などがないままでのホルモン療法の実施例,個人輸入での実施例などが挙がった.
GID(性同一性障害)学会(現,日本GI(性別不合)学会)の会員,日本性機能学会の会員の医師が所属する637施設を対象に無記名自己記入式質問紙調査を実施し,242施設から回収した(回収率37.9%,診療所116施設,回答者は泌尿器科医117名,産婦人科医42名)であった.
ホルモン療法の実施は108施設(トランス女性45施設,トランス男性86施設,二次性徴抑制療法10施設)で,実施医師は病院では約5割が複数,診療所では約8割が1名であり,約半数は来院者数10名以下であった.
薬剤,用法・用量の決定法としては,「紹介元からの指示」62.0%,「自身の経験」41.7%,「本人の希望」31.5%,「和文雑誌の解説」25.9%,「海外のガイドライン」14.8%であった.「困っている」「やや困っている」ことは「決定法」14.8%,「保険適用かどうか」は34.3%であった.保険適用で実施している施設は半数強であり,「戸籍の性別変更後」との回答が高率であった.投与経路の比率は,トランス男性では注射剤が約99%であり,トランス女性では注射剤が約75%,内服が約18%,テープが約16%であった.用法・用量として比較的多かったのは,エナルモンデポー125~250mg,2~4週毎,プロギノンデポー10~20mg,1~4週毎であった.
副作用や健康管理の評価としては,トランス男性では,肝機能,CBCが約7割で,脂質,血糖値は30~40%で,体重,血圧なども40~50%で測定されていた.しかし,トランス女性では,肝機能,CBC,脂質,D-dimer,血糖値などは20~30%,体重,血圧なども30%強で測定されていた.効果指標としては,トランス男性では「月経停止」「体型の男性化」「ひげや体毛」などが50%前後と高率であったが,トランス女性では,「ひげや体毛」「体型の女性化」などは20~30%であり,適当な指標がないことが明らかになった.また,「性別違和感の軽減」「うつや不安の軽減」などは10~20%と低率,「特に評価していない」施設も約10%に見られた.
結論
国内外のガイドラインや指針は専門家の経験・知見に基づいたものが大半であった.国内の当事者からの情報では,個人輸入も含めた様々な形態でホルモン療法が実施されていた.国内でホルモン療法を実施している医師も実施経験は不足しており,副作用のチェックや効果の判定も様々であることが明らかになった.

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324043Z