科学的エビデンス等に基づき医療環境に応じた適切な輸血療法実施についての研究

文献情報

文献番号
202324041A
報告書区分
総括
研究課題名
科学的エビデンス等に基づき医療環境に応じた適切な輸血療法実施についての研究
課題番号
23KC2009
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松本 雅則(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松下 正(名古屋大学 医学部附属病院輸血部)
  • 園木 孝志(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 高見 昭良(愛知医科大学)
  • 長谷川 雄一(筑波大学医学医療系)
  • 野崎 昭人(横浜市立大学 附属市民総合医療センター)
  • 北澤 淳一(福島県立医科大学医学部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
  • 岡崎 仁(日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所研究開発部)
  • 生田 克哉(旭川医科大学内科学講座 消化器・血液腫瘍制御内科学分野)
  • 奥田 誠(東邦大学医療センター大森病院  輸血部)
  • 藤田 浩(東京都立墨東病院 輸血科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歴史的な経緯から厚生労働省が作成する「血液製剤の使用指針」(使用指針)と「輸血療法の実施に関する指針」(実施指針)は別々に改定されてきたため記載の様式も統一されていない。さらに、これらの指針は日本輸血・細胞治療学会学会が作成したガイドラインを参考にして作成されるため、最新の科学的根拠を指針に盛り込むためには指針とガイドラインをリンクさせることが必要となっている。しかし、現状の学会のガイドラインは記載方法がそれぞれの製剤で異なっており、そのままでは統一した記載内容にならず、指針にそのまま記載するには記載量が多すぎるガイドラインもある。そのため、指針に引用されることを目的として、統一した記載方法のガイドラインを作成し、実施指針と使用指針を統合した輸血療法実践ガイド(仮称)の作成を本研究班の目的とする。
研究方法
1)輸血療法実践ガイドの使用指針パートに必要なガイドラインの改定
赤血球、血小板、新鮮凍結血漿(FFP)、アルブミンの各製剤の使用ガイドライン、大量出血ガイドライン、小児輸血のガイドラインの6つのガイドラインを改定する。
2)輸血療法実践ガイドの使用指針パートに必要なガイドラインの作成・改定
実施指針に必要なガイドラインとして輸血有害事象対応ガイドライン(輸血有害事象)を改定する必要がある。それ以外に、赤血球型検査ガイドライン、輸血情報管理システムガイドライン、輸血用血液製剤保管管理ガイドが実践ガイドには必要と考えられる。輸血用血液製剤保管管理ガイドは、旧厚労省が1994年に作成した血液製剤保管管理マニュアルの代替えとして作成している。さらに、離島・へき地での輸血、在宅輸血に関する項目も必要となる。
結果と考察
1)-1 赤血球輸血ガイドライン
Minds2020に準拠して各CQのアウトカム毎にエビデンスの評価を行い、エビデンス相対評価を行った。その結果、ヘモグロビンが8g/dLで輸血をする制限輸血が、制限をしないリベラル輸血と同等以上の臨床的効果を認めることが明らかとなった。
1)-2 血小板輸血ガイドライン
前回と同様に5つのガイドラインを設定し、スクリーニングを行ったところ395文献がヒットした。そのうち119文献を選択し、分析・評価を実施した。
1)-3 FFPガイドライン
前回と同様の3つのCQを設定し、文献をスクリーニングしたところ929個がヒットし、最終的に232個の文献を選択した。現在PICOのリストアップを実施している。
1)-4 アルブミンガイドライン
ガイドラインは完成し、パブリックコメントに対応した後、日本輸血細胞治療学会雑誌に投稿し、査読を受けて受理された。CQは前回と同じであるが、推奨度の変更として、肝硬変の難治性腹水管理が1Bから1Aとなった。また、人工心肺を使用する心臓手術への使用が2Cから2Bとなった。
1)-5 大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン
今回のCQは血液粘弾性試験の1つが増えて5つとなった。論文検索を終了し、推奨の決定を行っている。改定委員での投票は終了したが、同意に至っていないCQがあり、全体会議を行い討議して決定する予定である。
1)-6 小児輸血
前回と同じ6つのCQで行うことになった。文献検索は2024年5月までの論文で実施する予定である。
2)-1 輸血有害事象対応ガイドライン
CQの文章を再考し、最終的に12個のCQを設定した。論文スクリーニングで2707個が抽出され、二次選択の結果27論文を選択した。この結果、文献不足によるエビデンス不足のため2個のCQを取り下げとした。
2)-2 赤血球型検査ガイドライン
2022年12月に第4版を公表している。現在改定作業中であり、第5版を準備している。
2)-3 輸血用血液製剤保管管理ガイド
「血液製剤保管管理マニュアル」後継として作成しており、最新の知見を取り入れて完成し、現在パブリックコメントを募集している。
2)-4 輸血情報管理システムガイドライン
電子カルテや輸血管理システムについての条件などのガイドラインである。他の団体が作成しているガイドラインとの整合性を確認しながら、作成している。
2)-5 離島・へき地での輸血療法
離島、へき地での実態調査を計画し、研究計画書などの作成を行った。
2)-6 在宅輸血
 在宅輸血の実地調査を行い、情報収集を行った。赤血球、血小板製剤などを在宅へ搬送する手段、クリニックでの一時保管の環境などを検討する。
結論
輸血療法実践ガイド作成のための、使用指針に必要なガイドラインの作成は、ほぼ予定通り進捗しており、令和6年度末までに完成予定である。実施指針に必要な項目に関して、調査項目をほぼ決定したので、令和6年度中に調査を実施し、その結果をまとめる予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324041Z