文献情報
文献番号
202324038A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物乱用・依存状況の実態把握のための全国調査と近年の動向を踏まえた大麻等の乱用に関する研究
課題番号
23KC2006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
14,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、一般住民における飲酒・喫煙・医薬品・違法薬物の使用実態を把握するとともに、その経年変化を調べることを目的とする。本研究は、わが国で唯一、経年的に実施されている薬物使用に関する全国調査である。本研究は、1995年より隔年で実施され、今回で15回目の全国調査となった。得られた知見は、薬物乱用・依存に関する各種対策の立案・評価を講じる上での基礎資料として供する。
研究方法
対象は、層化二段無作為抽出法(調査地点:250)によって無作為に選ばれた15歳から64歳までの一般住民5,000名であり、調査期間は2023年10月16日から12月22日までであった。対象者へのアクセスを考慮し、今回の調査より、アンケート一式を各対象者の住所地に事前郵送する方法に変更した。また、アンケート回答への利便性を考慮し、アンケート用紙の回収方法を①訪問回収(従来の方法)、②郵送返送、③インターネット回答から選べるようにした。一定期間の後、調査への参加・不参加の意向が確認できなかった対象者については、事前にトレーニングを受けた調査員が訪問し、調査の説明および協力依頼を行った。また、近年の薬物乱用・依存の動向を踏まえ、市販薬(咳止め薬など)の乱用経験(過去1年経験)、乱用に用いた市販薬の入手経路、市販薬乱用の健康影響に関する知識についての調査項目などを追加した。調査実施にあたり、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会の承認を得た(承認番号A2023-031)。
結果と考察
計3,026名の有効回答が得られた(有効回答率60.5%)。対象者の平均年齢は43.5歳、男性49.3%、女性50.7%であった。
1) アルコール:過去1年経験率は76.6%、過去30日経験率は60.7%、過去30日ビンジ飲酒率は34.2%であった。過去30日ビンジ飲酒経験率は、2021年調査から有意に増加した。
2) タバコ:過去1年経験率は22.5%、過去30日経験率は20.5%であった。経年的に緩やかに減少傾向にある。
3) 解熱鎮痛薬:過去1年経験率は70.5%、過去30日経験率は41.5%であった。過去30日使用率は、2019年(31.7%)から2023年(41.5%)にかけて有意に増加していた。習慣的使用率は、2015年(2.3%)から2023年(3.8%)にかけ有意に増加していた。
4) 精神安定薬:過去1年経験率は6.1%、過去30日経験率は4.4%、習慣的使用率は3.6%であった。経年的に増加傾向にあるものの、有意差は認められなかった。
5) 睡眠薬:過去1年経験率は7.5%、過去30日経験率は4.7%、習慣的使用率は3.1%であった。経年的に増加傾向にあるものの、有意差は認められなかった。
6) 医薬品の乱用経験:過去1年以内の乱用経験率(者数)は、解熱鎮痛薬0.84%(約74万人)、精神安定薬0.47%(約41万人)、睡眠薬0.27%(約23万人)と推計された。
7) 市販薬の乱用経験:過去1年以内の乱用経験率(者数)は、0.75%(約65万人)と推計され、男性0.70%、女性0.80%、10代1.46%、20代0.59%、30代0.69%、40代0.20%、50代1.24%。60代0.51%であった。乱用に用いた市販薬の入手先は、薬局・ドラッグストア等の実店舗36.0%、家の常備薬16.0%、インターネット4.0%、入手先不明56.0%であった(複数回答可)。
8) 違法薬物:各薬物の生涯経験率(者数)は、大麻1.5%(約134万人)、有機溶剤1.2%(約104万人)、覚醒剤0.5%(約47万人)、MDMA0.5%(約44万人)、コカイン0.4%(約37万人)、危険ドラッグ0.3%(約29万人)、LSD0.3%(約22万人)であった。ヘロインは統計誤差範囲内であった。有機溶剤使用者の減少と大麻使用者の増加が確認された。
9) 使用した大麻の形状は、乾燥大麻88.4%、大麻樹脂7.0%、大麻ワックス・リキッド4.7%、形状不明9.3%であった。
10) 違法薬物:各薬物の過去1年経験率(者数)は、大麻0.23%(約20万人)、覚醒剤0.12%(約11万人)であり、他の違法薬物は統計誤差範囲内あるいは該当者がいなかった。
1) アルコール:過去1年経験率は76.6%、過去30日経験率は60.7%、過去30日ビンジ飲酒率は34.2%であった。過去30日ビンジ飲酒経験率は、2021年調査から有意に増加した。
2) タバコ:過去1年経験率は22.5%、過去30日経験率は20.5%であった。経年的に緩やかに減少傾向にある。
3) 解熱鎮痛薬:過去1年経験率は70.5%、過去30日経験率は41.5%であった。過去30日使用率は、2019年(31.7%)から2023年(41.5%)にかけて有意に増加していた。習慣的使用率は、2015年(2.3%)から2023年(3.8%)にかけ有意に増加していた。
4) 精神安定薬:過去1年経験率は6.1%、過去30日経験率は4.4%、習慣的使用率は3.6%であった。経年的に増加傾向にあるものの、有意差は認められなかった。
5) 睡眠薬:過去1年経験率は7.5%、過去30日経験率は4.7%、習慣的使用率は3.1%であった。経年的に増加傾向にあるものの、有意差は認められなかった。
6) 医薬品の乱用経験:過去1年以内の乱用経験率(者数)は、解熱鎮痛薬0.84%(約74万人)、精神安定薬0.47%(約41万人)、睡眠薬0.27%(約23万人)と推計された。
7) 市販薬の乱用経験:過去1年以内の乱用経験率(者数)は、0.75%(約65万人)と推計され、男性0.70%、女性0.80%、10代1.46%、20代0.59%、30代0.69%、40代0.20%、50代1.24%。60代0.51%であった。乱用に用いた市販薬の入手先は、薬局・ドラッグストア等の実店舗36.0%、家の常備薬16.0%、インターネット4.0%、入手先不明56.0%であった(複数回答可)。
8) 違法薬物:各薬物の生涯経験率(者数)は、大麻1.5%(約134万人)、有機溶剤1.2%(約104万人)、覚醒剤0.5%(約47万人)、MDMA0.5%(約44万人)、コカイン0.4%(約37万人)、危険ドラッグ0.3%(約29万人)、LSD0.3%(約22万人)であった。ヘロインは統計誤差範囲内であった。有機溶剤使用者の減少と大麻使用者の増加が確認された。
9) 使用した大麻の形状は、乾燥大麻88.4%、大麻樹脂7.0%、大麻ワックス・リキッド4.7%、形状不明9.3%であった。
10) 違法薬物:各薬物の過去1年経験率(者数)は、大麻0.23%(約20万人)、覚醒剤0.12%(約11万人)であり、他の違法薬物は統計誤差範囲内あるいは該当者がいなかった。
結論
今回の調査は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行後の初めての調査となった。回収率は60%台までに回復した。違法薬物については、有機溶剤は有意に減少、大麻は有意に増加していた。過去1年以内に大麻を使った経験のある国民は約20万人、覚醒剤は約11万人と推計された。他の違法薬物は統計誤差範囲内であった。今回の調査では一般住民における市販薬の乱用経験を初めて調べた。市販薬の乱用経験率は0.75%であり、過去1年以内に市販薬の乱用経験のある国民は約65万人と推計された。
公開日・更新日
公開日
2024-06-17
更新日
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