文献情報
文献番号
202324034A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦・授乳婦における医薬品の安全性に関する情報収集及び情報提供の在り方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KC2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
村島 温子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 濱田 洋実(筑波大学医学医療系 総合周産期医学)
- 佐瀬 一洋(順天堂大学大学院医学研究科臨床薬理学教室)
- 伊藤 直樹(帝京大学 医学部小児科学講座)
- 後藤 美賀子(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
- 八鍬 奈穂(国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品添付文書の生殖能を有するもの・妊婦・授乳婦の項目における注意喚起内容について臨床的に有用な情報提供の在り方を提案すること、および市販後の疫学研究のためのガイダンス作成を目的とする。
研究方法
(1) 実態調査
・拠点病院医師・薬剤師を対象に、一般医師・薬剤師との認識の乖離はあるか?あるとしたらどのようなものか?どのような項目・記載が理想か?についてonline アンケートを行った
・日本病院薬剤師会の協力を得て、病院薬剤師会認定妊婦・授乳婦認定(専門)薬剤師(以下、認定薬剤師)に同様のアンケートを行った
(2)米国において、妊婦・授乳婦の医薬品の安全性に関する情報収集および情報提供の現状と課題を調査した
(3) 産科ガイドラインとの乖離の調査
産科ガイドラインのCQ104 2 妊婦禁忌でも投与できる薬剤は? CQ104 3 妊婦禁忌でもリスクが上昇しない薬剤は? CQ104 4 有益性投与でも注意が必要な薬剤は?に掲載されている薬剤を対象に、添付文書の記載を調べ、乖離の実態を把握した
・拠点病院医師・薬剤師を対象に、一般医師・薬剤師との認識の乖離はあるか?あるとしたらどのようなものか?どのような項目・記載が理想か?についてonline アンケートを行った
・日本病院薬剤師会の協力を得て、病院薬剤師会認定妊婦・授乳婦認定(専門)薬剤師(以下、認定薬剤師)に同様のアンケートを行った
(2)米国において、妊婦・授乳婦の医薬品の安全性に関する情報収集および情報提供の現状と課題を調査した
(3) 産科ガイドラインとの乖離の調査
産科ガイドラインのCQ104 2 妊婦禁忌でも投与できる薬剤は? CQ104 3 妊婦禁忌でもリスクが上昇しない薬剤は? CQ104 4 有益性投与でも注意が必要な薬剤は?に掲載されている薬剤を対象に、添付文書の記載を調べ、乖離の実態を把握した
結果と考察
医薬品添付文書の妊婦の項の「有益性投与」に対する認識調査で、拠点病院の医師、薬剤師、認定薬剤師のほとんどが「ほぼ安全である」、投与については「必要性により判断する」「投与する」と答えた。一般薬剤師においてもほぼ同様の結果であった。しかし、一般医師では「有益性投与」であっても実際のリスクより厳しく想起し、処方に慎重になっている現状がうかがえる結果が得られた。
「禁忌」については一般医師と一般薬剤師のほとんどが、「多少危険である+危険である」、「薬剤が必要な妊婦であっても投与しない・すべきでない」と答えた。一方、拠点病院の医師においては「多少危険である+危険である」と「どちらともいえない」が半々で、「必要性判断して使うべき」と答えたのは2分の1強だった。拠点病院薬剤師・認定薬剤師のほとんどが、たとえ禁忌であっても「添付文書だけではどちらともいえない」、「必要性で判断して使うべき」と答えた。これら拠点病院医師/薬剤師・認定薬剤師と一般医師・薬剤師との違いの大きな要因としては、一般医師の多くは内科系医師であったが、拠点病院の医師の多くが産婦人科医師であること、拠点病院の医師・薬剤師は日頃の妊娠と薬外来業務や研修会を通して、認定薬剤師は日々の業務と研修を通して添付文書の解釈の仕方を習得していることが考えられる。有用性が危険性を上回る時、という文言に対応するには、今回医師・薬剤師の多くが要望した通り、添付文書に「治療上の有用性」と「危険性(=安全性)の根拠として疫学研究報告」を記載するなどの工夫が必要と考えられた。
欧米における添付文書の記載、見直しに関するルールと更新の具体的な方法に関する調査で、国立衛生研究所(NIH)や医薬食品局(FDA)との連携状況を調査し、本研究すなわちcardio-obstetricsという新学際領域の現状と課題を検討し、妊婦・授乳婦における医薬品の安全性に関する最新情報を得たことにより、本研究を推進する基となる情報が入手できた。
産科ガイドラインの「妊娠・授乳と薬」関連の2項目に関して、乖離の有無を明らかにし、さらに2026年版に向けた修正案を提案できた。
FDAやEMAにおいて妊娠登録研究に関するガイダンスが発出され、登録研究が進められている現状を調査し、本邦における市販後の妊娠中曝露例の追跡のために妊娠登録調査研究の仕組みを整備する必要があると考えられた。
今後、妊娠と薬情報センターと製薬企業と協働して妊娠登録研究を推進するうえで参考とすべく製薬会社対象に行ったアンケート調査で、製薬会社による妊婦・授乳婦に関する情報収集調査は実施されているものの、十分な情報収集がなされていない現状が明らかとなった。今後、現状の製薬会社の市販後調査と、JDIIPの相談症例DBの利点欠点を相互補完する形で妊娠登録調査を推進していくために、調査項目と調査方法について引き続き検討していく必要がある。
授乳婦の薬剤の安全性の根拠創生や情報提供についてもFDAやEMAからの提案を調査し、今後国内において実施するための方法を検討する際の参考資料とすることができた。
当センターの授乳相談の記録をデータベース化することで、授乳婦の薬に関する相談の現状を明らかにすることができた。また、これまで当センターで実施した薬剤の乳汁中濃度測定結果すべてが、LactMed®に反映されていることから、当該研究が国内外のニーズに合ったものであることを確認できた。
「禁忌」については一般医師と一般薬剤師のほとんどが、「多少危険である+危険である」、「薬剤が必要な妊婦であっても投与しない・すべきでない」と答えた。一方、拠点病院の医師においては「多少危険である+危険である」と「どちらともいえない」が半々で、「必要性判断して使うべき」と答えたのは2分の1強だった。拠点病院薬剤師・認定薬剤師のほとんどが、たとえ禁忌であっても「添付文書だけではどちらともいえない」、「必要性で判断して使うべき」と答えた。これら拠点病院医師/薬剤師・認定薬剤師と一般医師・薬剤師との違いの大きな要因としては、一般医師の多くは内科系医師であったが、拠点病院の医師の多くが産婦人科医師であること、拠点病院の医師・薬剤師は日頃の妊娠と薬外来業務や研修会を通して、認定薬剤師は日々の業務と研修を通して添付文書の解釈の仕方を習得していることが考えられる。有用性が危険性を上回る時、という文言に対応するには、今回医師・薬剤師の多くが要望した通り、添付文書に「治療上の有用性」と「危険性(=安全性)の根拠として疫学研究報告」を記載するなどの工夫が必要と考えられた。
欧米における添付文書の記載、見直しに関するルールと更新の具体的な方法に関する調査で、国立衛生研究所(NIH)や医薬食品局(FDA)との連携状況を調査し、本研究すなわちcardio-obstetricsという新学際領域の現状と課題を検討し、妊婦・授乳婦における医薬品の安全性に関する最新情報を得たことにより、本研究を推進する基となる情報が入手できた。
産科ガイドラインの「妊娠・授乳と薬」関連の2項目に関して、乖離の有無を明らかにし、さらに2026年版に向けた修正案を提案できた。
FDAやEMAにおいて妊娠登録研究に関するガイダンスが発出され、登録研究が進められている現状を調査し、本邦における市販後の妊娠中曝露例の追跡のために妊娠登録調査研究の仕組みを整備する必要があると考えられた。
今後、妊娠と薬情報センターと製薬企業と協働して妊娠登録研究を推進するうえで参考とすべく製薬会社対象に行ったアンケート調査で、製薬会社による妊婦・授乳婦に関する情報収集調査は実施されているものの、十分な情報収集がなされていない現状が明らかとなった。今後、現状の製薬会社の市販後調査と、JDIIPの相談症例DBの利点欠点を相互補完する形で妊娠登録調査を推進していくために、調査項目と調査方法について引き続き検討していく必要がある。
授乳婦の薬剤の安全性の根拠創生や情報提供についてもFDAやEMAからの提案を調査し、今後国内において実施するための方法を検討する際の参考資料とすることができた。
当センターの授乳相談の記録をデータベース化することで、授乳婦の薬に関する相談の現状を明らかにすることができた。また、これまで当センターで実施した薬剤の乳汁中濃度測定結果すべてが、LactMed®に反映されていることから、当該研究が国内外のニーズに合ったものであることを確認できた。
結論
医薬品添付文書の生殖能を有するもの・妊婦・授乳婦の項目における注意喚起内容について、臨床的に有用な情報提供の在り方の提案、市販後の疫学研究のためのガイダンスの作成、この目的達成に向けて、国内外の現状調査をし、令和6年度の作業につなげることができた。
公開日・更新日
公開日
2025-01-29
更新日
-