輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究

文献情報

文献番号
202324029A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究
課題番号
22KC2006
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 佐保子(国立感染症研究所 次世代生物学的製剤研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 栄史(愛知医科大学病院 輸血部)
  • 田中 朝志(東京医科大学八王子医療センター 臨床検査医学分野)
  • 米村 雄士(熊本大学医学部附属病院)
  • 上野 志貴子(熊本大学病院 輸血・細胞治療部)
  • 紀野 修一(日本赤十字社 北海道ブロック血液センター)
  • 岡崎 仁(東京大学輸血部)
  • 日野 郁生(日本赤十字社 血液事業本部 )
  • 後藤 直子(日本赤十字社 血液事業本部 技術部 安全管理課)
  • 北澤 淳一(福島県立医科大学医学部)
  • 大谷 慎一(北里大学 医学部 輸血・細胞移植学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性向上には、献血における採血から医療施設における輸血実施までのtransfusion chain全体をカバーする一連の安全監視(ヘモビジランス)が求められる。日本ではtransfusion chain前半の日本赤十字社の情報とransfusion chain後半の医療機関の情報が恒常的に結び付けられていない。本研究では、全国の輸血を実施している医療施設と日本赤十字社から日本で実施されている全ての輸血情報を結びつけてトレース可能な情報として定期的に収集・解析評価するシステムを構築し、そのシステムを用いて日本の輸血副反応情報を収集・解析し輸血のさらなる安全性向上と適正使用を目指す。
研究結果の概要:トレーサビリティの確保された輸血情報収集システムの構築のために、これまでの研究で、医療機関と日本赤十字社の情報管理端末から正確な輸血情報を可能な限り簡易に抽出できる仕組みを確立した。本年度は、新規構築したトレーサビリティが確保された輸血用血液製剤情報収集システム(J-HeST: Japanese hemovigilance scheme with secured tracability)を稼働した。研究に参加した医療機関から提出された輸血用血液製剤の情報と日本赤十字社から提供された輸血用血液製剤の情報を国立感染症研究所にて、製剤番号によって紐付けし、トレース可能となった情報を解析評価した。小規模医療機関では別途に収集システムの構築を進めた。
研究方法
令和1−3年度の「輸血医療の安全性向上のためのデータ構築研究(厚生労働行政推進調査事業費補助金)」にて構築が進められてきた、トレーサビリティの確保された輸血情報収集システム(J-HeST: Japanese hemovigilance scheme with secured tracability)を用いた情報収集を開始した。収集したデータについて、特に製剤の保管日数と副反応発生割合に着目して解析評価を実施した。医療機関からの情報提供における問題点や課題について検討した。
小規模医療機関や在宅医療現場などにおいて実施される輸血情報の収集は電子カルテ未導入や輸血管理システムの非インストールなどの問題があるため、別途小規模医療機関に特化した輸血情報収集システムの構築を進めた
結果と考察
 トレーサビリティが確保された輸血情報収集システム(J-HeST: Japanese hemovigilance scheme with secured tracability)による情報収集を開始した。輸血用血液製剤においては、赤血球製剤が令和5年4月より有効期限が延長し、血小板製剤が令和7年から細菌スクリーニング導入と有効期限の延長を予定しているが、これらの規格変更による適正使用や安全性への影響を評価するための変更前の情報が収集された。次年度以降、変更後の情報を収集し、解析評価を実施する。
医療機関の登録については、カルテからの情報抽出が容易ではないことや、倫理審査が必要なことなどから情報提供が難しく、未だ充分に登録が進んでいない状況である。今後J―HeSTの事業化を進め、倫理審査を不要とし、登録の推進を図ることで登録医療機関の増多を目指す。医療機関においては輸血副反応評価の標準化や電子カルテシステムへの反映が未だ充分に進められてるとはいえないと考えられ今後、改善を図るべき課題である。
小規模医療機関や在宅医療現場などにおいて実施される輸血情報の収集は困難であるため、別途小規模医療機関に特化した輸血情報収集システムの構築を進めてきた。改良を重ねた結果、情報が収集可能となった。
結論
トレーサビリティが確保された輸血情報収集システム(J-HeST: Japanese hemovigilance scheme with secured tracability)を稼働し、全国の輸血を実施している医療機関と日本赤十字社からの情報収集を開始した。本システムによる恒常的な情報収集は、輸血用血液製剤の規格変更に伴う輸血の安全性や適正使用を評価する上で極めて重要と考えられた。医療機関における輸血副反応報告体制の標準化は課題と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2024-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202324029Z