生物学的製剤基準のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
202324021A
報告書区分
総括
研究課題名
生物学的製剤基準のあり方に関する研究
課題番号
21KC2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 藤田 賢太郎(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物学的製剤基準(生物基)は日本の生物学的製剤の品質管理の根幹となっている基準であるが、制定以来50年以上が経過し、多数の改正が繰り返されている。これまで、各項目の記載に統一性が乏しい点、日本独自の試験の存在などWHOガイドライン等との齟齬が出てきている点、改正が計画的に行われない点など、複数の問題点が存在する。また、日局との重複や齟齬が存在することも指摘されている。本研究班での検討により、このような生物基が抱える問題点を明らかにすることができ、日本薬局方との連携や、WHOガイドライン等とのハーモナイゼーションにも配慮した、統一性のとれた生物基の構築が期待できる。
研究方法
生物基の各条に規定されている試験項目について、類似製剤間での比較を行った。また、生物基に収載されている製剤のうち、幾つかの代表的な製剤について、欧州薬局方に規定されている試験項目との比較を行った。
生物基に収載されている一般試験法の中で、日局に収載されている一般試験法等と共通する項目について、記載の比較検討を行った。また、日局の通則および日本薬局方原案作成要領を参照し、生物基で使用されている語句の使われ方を精査した。
結果と考察
生物基は日本の生物学的製剤の品質管理の根幹となっている基準であるが、制定以来50年以上が経過し、多数の改正が繰り返されている。これまで、各項目の記載に統一性が乏しい点、日本独自の試験の存在などWHOガイドライン等との齟齬が出てきている点、改正が計画的に行われない点など、複数の問題点が存在する。また、日局との重複や齟齬が存在することも指摘されている。本研究において、欧米等の薬局方やガイドライン等に記載されている内容、国内の生物基、日本薬局方、その他のガイドライン等に記載されている内容を調査したところ、日本においては、欧米等において示されている生物学的製剤の製造、品質管理に関する指針のうち、特に生物学的試験法のデザインや結果の解析に関する指針、ワクチン、抗毒素製剤、血漿分画製剤の製造、品質管理に関する一般的、包括的な指針が十分に提供されていないと考えられた。日本においても、生物学的試験法の確立、評価、結果解析等に関する指針が作成されることが望ましいと考えられる。
厚生労働省とPMDAが主導して、生物基・日局各専門家の協力のもと、生物基と日局を統合するのか、あるいは生物基は残すのかを民間の意見も聞きながら議論すべきであり、もし生物基を残すのであれば、より国民等に利便性の高い参考情報等を掲載できるよう、建付けを変更していく必要があると考えている。本研究班での検討により、このような生物基が抱える問題点を明らかにすることができ、生物製剤の品質管理に関する技術の進歩に対応した、新たな体系の生物基の構築が目指せるものと考えられる。
結論
生物基にはminimum requirementとして、市場に出荷される生物学的製剤が最低限満たすべき事項が示されているが、日本薬局方、米国薬局方及び欧州薬局方には、必須要件以外にも、医薬品の製造及び品質管理を行う上で推奨される事項、参考となる事項が含まれている。欧米等で発行されている薬局方、ガイドラインに関する調査結果から、日本においては、生物学的製剤の製造、品質管理に関する一般的、包括的な指針や生物学的試験法に関する指針が十分に示されていないことが明らかとなった。日本においても、今後、生物基の内容を補足するものとしてそのような指針を作成して、生物基に付随する参考情報という形で整理、公表することにより、生物基を従来の単なる要件、規格を集めたもの(規格基準集)という位置づけから、生物学的製剤の開発、製造管理、品質管理をより効果的、効率的に行うための標準文書という位置づけに引き上げることが望ましいと考えられた。
また、生物基における各条間の統一性、海外薬局方との調和を図るとともに、生物基の作成、改正プロセスの透明性を高め、利用者による生物基に対する理解を深めるために、生物基作成のための指針/手引を作成することが望ましいと考えられた。
日局に早期に収載すべきワクチンの提案と将来の生物基像について、海外局方のガイドラインを参考に考察したところ、生物基と日局の間の様々な面での齟齬・不統一が存在することが明らかとなった。生物基・日局は次のステージとして海外局方との国際調和を図るという重要な課題があることから、まずは生物基を日局に寄せることを基本に専門家によって早急にすり合わせを行うべきと思われる。
生物学的製剤基準の見直しについては、ワクチン業界からの要望や、これまでの個別品目での業界やPMDAとのやり取りも踏まえ、見直しが必要と思われる事項についてまとめを行った。今後、業界やPMDAへの意見照会も行い、対応方針にまとめた上で、改正手続きに進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202324021B
報告書区分
総合
研究課題名
生物学的製剤基準のあり方に関する研究
課題番号
21KC2004
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 深澤 征義(国立感染症研究所 細胞化学部)
  • 藤田 賢太郎(国立感染症研究所 品質保証・管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生物学的製剤基準(生物基)は、薬機法第42条に基づいて制定された生物学的製剤の基準集であり、通則、医薬品各条、一般試験法からなる。生物基は日本の生物学的製剤の品質管理の根幹となっている基準であるが、制定以来50年以上が経過し、多数の改正が繰り返されている。これまで、各項目の記載に統一性が乏しい点、日本独自の試験の存在などWHO Recommendations/Guidelines等との齟齬が出てきている点、改正が計画的に行われない点など、複数の問題点が存在する。また、日局との重複や齟齬が存在することも指摘されている。本研究班での検討により、このような生物基が抱える問題点を明らかにすることができ、日本薬局方との連携や、WHO Recommendations/Guidelines等とのハーモナイゼーションにも配慮した、統一性のとれた生物基の構築が期待できる。さらに、本研究班では、従来から生物基に収載されている試験項目の意義や、近年の新しい技術に基づく試験法についても検討を行う予定で、生物製剤の品質管理に関する技術の進歩に対応した、新たな体系の生物基の構築も目指していく予定である。
研究方法
生物基の各条に規定されている試験項目について、類似製剤間での比較を行った。また、生物基に収載されている製剤のうち、幾つかの代表的な製剤について、欧州薬局方に規定されている試験項目との比較を行った。
生物基に収載されている一般試験法の中で、日局に収載されている一般試験法等と共通する項目について、記載の比較検討を行う。また、日局の通則および日本薬局方原案作成要領を参照し、生物基で使用されている語句の使われ方を精査した。
これまでの国家検定および自家試験で実施された試験結果を精査し、また製造環境等について確認し、異常毒性否定試験を削除してもこれまでと同等の品質管理が可能であるかどうかについて検討した。
結果と考察
特性や製法が類似している製剤であっても生物基に設定されている試験項目にバラツキが認められる製剤(群)が存在した。また、現在の科学的知見を踏まえると今後も必須要件として維持する必要性に疑義がある試験項目も存在した。さらに、多くの製剤において、生物基と欧州薬局方との間で設定されている試験項目に差異が認められ、また、一部で異なる試験方法が採用されていた。医薬品供給のグローバル化が進んでいる状況に鑑みると、諸外国の基準書と異なる試験項目、試験方法については、整合化に向けた検討が必要と考えられた。今後、製剤間や諸外国の基準書との間でバラツキや乖離が発生することを避けるためには、生物基案作成のための指針となる文書が必要と考えられ、また、最新の科学的知見に基づいて定期的かつ柔軟に内容の見直し、アップデートを行う仕組みが必要と考えられた。
生物基の試験法と日局に収載される類似試験法を比較精査した。また、生物基における語句の使われ方を日局の定義に則って精査した。試験法に関しては生物基と日局の間の細かな違い・齟齬が見られたほか、語句に関しては生物基内での用法の不統一が多数見出された。基本的には、生物基を日局に寄せていくのが良いと考えられ、まずは記載整備のための原案作成要領を整えることから始めるべきである。生物基・日局各専門家は、具体的な作業を早急に開始して齟齬・不統一を解消し、利用者の利便性の向上に努めるべきであると考える。
異常毒性否定試験は、長年に渡り製剤の均一性を確認する重要な品質管理試験として生物基への記載を求めて来たが、国際的に試験の削除の方針が決まったことから、今後は新規製剤の生物基に異毒の記載を求めないこととした。また、すべての製剤について、異毒を削除してもこれまでと同等の品質管理が可能であることが確認された。2022年内に国内で販売されている全製剤について、生物基からの試験削除が国立感染症研究所内で承認され、2023年3月までに厚生労働省から本試験の削除が告示された。
結論
生物基と欧州薬局方との間で設定されている試験項目に差異が認められ、また、一部で異なる試験方法が採用されていたが、このような差異をピックアップし、整合性の検討を行った。生物基の試験法と日局に収載される類似試験法を比較精査したところ、試験法に関しては生物基と日局の間の細かな違い・齟齬が見られたほか、語句に関しては生物基内での用法の不統一が多数見出された。まずは生物基の記載整備のための原案作成要領を整えることが必要と考えられた。異常毒性否定試験は、すべての製剤について削除してもこれまでと同等の品質管理が可能であることが確認され、2022年内に国内で販売されている全製剤について、2023年3月の厚生労働省告示により生物基から本試験が削除された。日本も異常毒性否定試験を用いない品質管理の方法へ移行出来たと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202324021C

収支報告書

文献番号
202324021Z