文献情報
文献番号
200936113A
報告書区分
総括
研究課題名
Gorlin症候群の病態解明と治療法確立のための臨床的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-058
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 克則(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 宮下 俊之(北里大学 医学部)
- 斎藤 加代子(東京女子医科大学 小児科)
- 杉田 克生(千葉大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Gorlin症候群は1960年にGorlinらによって報告された身体奇形と高発癌性を特徴とする神経皮膚症候群である。身体奇形には皮膚小陥凹、顎骨嚢胞、椎骨肋骨奇形、大脳鎌石灰化があり、基底細胞癌、髄芽腫等を多発する高発癌性遺伝疾患でもある。現在まで本邦でのまとまった報告はなく、また年齢依存性に多発する癌に対して治療指針は存在していない。本研究ではGorlin症候群の全国調査と責任遺伝子PTCH1解析を通じて、実態把握と病態解明を行うことを目的とした。
研究方法
研究は臨床フィールドと基礎フィールドに分かれて行った。臨床フィールドでは全国の医療施設に第一次調査質問表を送付した。対象科はGorlin症候群の主要な症状から受診が予測される5科、すなわち小児科または小児神経科、遺伝科、脳神経外科、皮膚科、歯科口腔外科とし合計計1938施設に送付した基礎フィールドでは責任遺伝子であるPTCH1解析をPCRダイレクトシークエンス法、およびアレイCGH法により行った。
結果と考察
全国一次調査では1120施設から有効回答が得られた(回答率57.8%)。Gorlin症候群患者数はのべ311例であり、その内訳は歯科口腔外科が193例(62.1%)と最多であった。年齢分布は10歳代がピークであり50歳以上で微増した。本疾患の自然歴として角化嚢胞性歯原性腫瘍は10歳前後から発症が増加することから、10歳代のピークはそれを反映したものと考えられた。またGorlin症候群の責任遺伝子であるPTCH1解析も行った。その結果2家系でそれぞれ1.1 Mbと2.4 Mbに渡るゲノムの半量欠損を認め、PTCH1はいずれの欠損領域にも含まれていた。我々の従来の解析結果では日本人NBCCSの16%(5/32)はPTCH1遺伝子の全欠損が原因であり、変異陰性例ではPTCH1のコピー数解析が重要と考えられた。
結論
今回我々は初めてGorlin症候群の全国調査を行い、日本国内に311名の患者が存在すること、また責任遺伝子であるPTCH1解析により従来の挿入欠失変異以外に全欠失例が存在することを明らかにした。今後は一次調査で判明したGorlin症候群患者の臨床症状および治療内容を解析することで、日本国内における有病率と診断基準を策定し治療方針を定めてゆきたい。
公開日・更新日
公開日
2010-06-03
更新日
-