焼却灰の循環利用に関する研究

文献情報

文献番号
199700682A
報告書区分
総括
研究課題名
焼却灰の循環利用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
山村 勝美((財)廃棄物研究財団)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 健康地球研究計画推進研究事業
研究開始年度
平成7(1995)年度
研究終了予定年度
平成9(1997)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
溶融処理は、焼却灰の容量を更に約2分の1程度に減容化させ、重金属類の溶出防止の効果を持っているが、多量の燃料を必要とし、施設の建設維持管理に多額の費用を要している。また、処理物の安定度や環境への影響、原料として備えるべき物性等、焼却灰を再利用するための拠り所となる考え方が定まっておらず、溶融施設を設置している市町村においても、焼却灰の有効利用が殆ど進んでいないのが現状である。
そこで、焼却灰の溶融処理物や焼成処理物の安定度の向上を図り、環境への汚染防止の確認と原料として備えるべき物性や経済性等を整理し、焼却灰を再利用するための利用指針をとりまとめる。これにより、焼却灰の有効利用体制を整備し、廃棄物の最終処分量を減らすことで、最終的には埋め立て地の延命化を図ることを目的としている。
研究方法
本研究は平成7年度から平成9年度にわたる研究で、平成7年度は焼却灰及び処理物からの製品の製造方法の検討を行うとともに、処理物の物性、安全性等の評価手法確立のためのテスト用サンプルを、ストーカ炉飛灰、流動床炉飛灰及び溶融スラグを使用して製造した。
平成8年度は、スラグ及び二次製品を対象に各種溶出試験を実施比較するとともに、シミュレーションによる長期安定性の評価及び有害物質の長期挙動調査を行い、再生物に対する適切な溶出試験・評価方法の検討を行った。
平成9年度は、前年度に引き続き各種溶出試験を、スラグ及び二次製品、既存製品を対象に実施した。また、再生物が使用される暴露条件を考慮して、試料の耐久性及び強度について調査検討を行った。また、溶融固化物の有効利用指針をまとめた。
結果と考察
1 溶出試験方法の検討
(1)試 料
都市ごみ焼却残さを用いて作成されたスラグ、ごみ溶融スラグ及び既存製品について試験を実施した。
(2)試料粒径
再生物等からの有害物質等の溶出性を評価するためには、再生物が実際に使用される形状で溶出試験を行うことが望ましい。
従って、公定法に規定される粒径に加えて10~30mmの試料についても試験を実施した。
(3)溶出試験
以下に示す各種溶出試験を実施した。
・ 公定法(環告13号、46号及びアベイラビリティ試験)
・ 初期pH4法(環告46号試験の溶媒にpH4硝酸溶液を使用)
・ pH4維持法(溶出試験中溶出液のpHを、硝酸溶液を用いて常に4に維持する)
・ 炭酸ガス飽和法(環告46号試験の溶媒に飽和炭酸ガス溶液(pH4)を使用)  なお、各試料の含有量分析も同時に行った。
(4)溶出試験結果
各種溶出試験とも溶出が認められる場合それは主にPbであり、一部で土壌環境基準(0.01mg/l)をわずかに上回る場合もあったが、その他は総じて有害物質の溶出濃度は低く、そのほとんどが検出限界以下であった。各種溶出試験の終了時の溶出液のpHを比較した場合、13号法=46号法>初期pH法>炭酸ガス飽和法>pH4維持法の順であった。
2 長期安定性の評価手法の検討
主に、スラグ及び二次製品5サンプルについて、シリアルバッチ試験(1試料につき連続5バッチの溶出試験を繰り返す試験)を実施中であるとともに、スラグおよびその二次製品に対して、JISを参考として数種の耐久性試験および強度試験を実施中であり、これらが溶出に与える影響についても調査中である。
3 焼却灰処理物の有効利用調査
溶融固化物は道路用骨材、コンクリート骨材、コンクリート二次製品などに再生利用されている。従って、これらの利用用途についての概要と利用事例について整理し、併せて準用されている製品規格についてのまとめを行った。
4 酸抽出法による飛灰からの重金属回収スケールアップテスト
昨年度(8年度)は、中性飛灰300gおよび溶融飛灰200gを用いて、まず飛灰を硫酸で亜鉛を抽出した後、苛性ソーダと水硫化ソーダで不溶性の硫化亜鉛として回収し、次に、前工程の硫酸抽出残さを酢酸ソーダで鉛を抽出した後、水硫化ソーダで不溶性の硫化鉛として回収する「酸抽出法」でビーカースケールテストを行った結果、両飛灰ともに、亜鉛および鉛回収物の収率が約80%、純度約50%のものが得られた。
本年度(平成9年度)は、中性飛灰10kgを用いて、スケールアップテストを行った結果、亜鉛および鉛回収物の収率、純度はビーカースケールテストとほぼ同等の結果を得た。なお、亜鉛および鉛回収実験の他に、亜鉛抽出排液からの塩回収実験、鉛抽出排液からの酢酸ソーダ回収実験、鉛回収残さの溶融スラグ化実験も行い、資源循環型処理システムの構築を試みた。
5 海外技術調査
WASCON'97へ参加及びヨーロッパの廃棄物処理施設の調査を実施した。WASCON'97では、焼却灰の溶出試験のharmonization(調和化、統一化)という考え方が前面に出され、各金属(無機元素に限る)について、廃棄物・土壌・底質・木材(解体廃棄物)などを対象に各国から各種試験が提案され、これをEU内で標準化していく動きが注目される。
海外調査団報告書、WASCON`97国際会議報告書としてまとめた。
6 国内技術調査
稼働中のごみ直接溶融炉及びプラズマ溶融炉の調査を行った。
結論
焼却灰の循環利用を促進するために、分析方法をはじめとして多面的に検討を加えた。3年間の有用なデータを蓄積できた。これらは、今後大いに活用できるものと考える。また、成果の一部をスラグの有効利用マニュアルとして集大成した。

公開日・更新日

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