医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究

文献情報

文献番号
202324020A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
21KC2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
1,719,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール(RD)配合薬用化粧品(医薬部外品)による白斑の発症に関しては、チロシンと共通の4-置換フェノールの構造を持ち、チロシナーゼの阻害活性を期待されたRDがチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されることが判明しており、この代謝と白斑発症との関連が示唆されている。本研究では、in vitroでのチロシナーゼとの反応性、チロシナーゼを発現させた細胞での代謝物の解析、医薬部外品に使用される可能性のある物質のチロシナーゼによる代謝物の構造と性質の解析を行って評価法の確立を目指す。フェノール類をチロシナーゼで酸化した後に共存させたSHペプチドと結合させ、ペプチド付加物として生成物を検出する方法について、水溶性の低い物質に適用できる方法への改良を検討するために有機溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)を高濃度で含有する液中での反応を検討した。また、チロシナーゼ発現の高いメラノーマ細胞B16BL6を用い、チロシナーゼ依存的な細胞毒性の発現により白斑誘導性フェノール類の代謝活性化を評価する手法を検討した。
研究方法
RD、SHペプチド及びマッシュルームチロシナーゼを、濃度の異なるDMSOを含んだリン酸バッファー(pH6.5)中で反応させ、生成物をLCMSで分析した。B16BL6細胞のNrf2を特異的siRNAのトランスフェクションによりノックダウンし、24時間後に各種フェノール類を暴露し、24および48時間の細胞生存率をATP含量の測定により決定した。ノックダウン効率は、mRNAをリアルタイムPCRで測定し判定した。293T細胞にヒトチロシナーゼを一過性に発現させ,24時間後に薬物処理を開始し,2時間後の細胞および培地を回収した。細胞および培地の代謝産物は既報(Ito et al., Pigment Cell Melanoma Res., 28, 295-306, 2015)に従い,HPLC電気化学検出法により解析した。
結果と考察
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系において、DMSO濃度20%で水溶性の低いアピゲニンの反応が認められ、SHペプチド付加体として検出された。本条件により水溶性の低いフェノールのチロシナーゼ反応性が評価できると考えられる。オルトキノン代謝物への細胞感受性の増強をめざして一連の抗酸化遺伝子発現を制御する転写因子Nrf2をB16BL6細胞においてノックダウンし、白斑誘導性フェノール類5化合物の細胞毒性を増強することに成功した。チロシナーゼの基質とならない位置異性体での増強は認められず、細胞毒性の増強効果がオルトキノン体の産生に関連することが示唆された。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の細胞での評価法の確立を受け,同様な4-置換フェノール構造を有し,RESのジメチル体であるPTSについてチロシナーゼによる代謝活性化を調べた。その結果,RES同様にPTSについてもメラノサイトに対して細胞毒性を示す可能性が示唆された。
結論
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系を水溶性の低い被験物質にも適用したところ,20% DMSO存在下においてアピゲニンの結合ペプチドが生成することが確認できた.0.3 mol/L 基質、0.5 mol/L DPRA (Cys)、167,000 U/L mushroom tysosinaseを50 mmol/L KPB pH6.5, 20% DMSO中で25℃で30分間反応させ、終濃度0.2%の酢酸で反応を止めてエレクトロスプレーポジティブモードのLCMSで分析する方法を提案する。白斑誘導性フェノール類の「チロシナーゼによりオルトキノン体への代謝」を効率良く検出するために、B16BL6細胞の抗酸化転写因子Nrf2をノックダウンし、オルトキノン代謝物への細胞感受性を増強することに成功した。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の細胞での評価法の確立を受け,同様な4-置換フェノール構造を有し,RESのジメチル体であるPTSについてチロシナーゼによる代謝活性化を調べた。その結果,RES同様にPTSについてもメラノサイトに対して細胞毒性を示す可能性が示唆された。HQは色素沈着症の治療に汎用されている化合物であるが,まれに色素過形成(外因性ochronosis)を起こすことが知られている。しかし,その機序は明らかではない。今回、チロシナーゼ依存性の代謝経路を明らかにすることができた。Ochronosis機序解明につながることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202324020B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬部外品成分の白斑誘導能の評価体系に関する研究
課題番号
21KC2003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 卓美(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
  • 伊藤 祥輔(藤田医科大学 医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロドデノール(RD)配合薬用化粧品(医薬部外品)による白斑の発症に関しては、チロシンと共通の4-置換フェノールの構造を持ち、チロシナーゼの阻害活性を期待されたRDがチロシナーゼにより代謝され、オルトキノン体に変換されることが判明しており、この代謝と白斑発症との関連が示唆されている。本研究では、in vitroでのチロシナーゼとの反応性、チロシナーゼを発現させた細胞での代謝物の解析、医薬部外品に使用される可能性のある物質のチロシナーゼによる代謝物の構造と性質の解析を行って白斑誘導能の評価法の構築を目指す。
研究方法
0.3 mol/L 基質、0.5 mol/L DPRA (Cys)、167,000 U/L mushroom tysosinaseを50 mmol/L KPB pH6.5, 20% DMSO中で25℃で30分間反応させ、終濃度0.2%の酢酸で反応を止めてエレクトロスプレーポジティブモードのLCMSで分析した。293T細胞にヒトチロシナーゼを一過性に発現させ,24時間後に各種フェノール類の処理を開始し,2時間後の細胞および培地を回収した。B16BL6細胞のチロシナーゼあるいはNrf2を特異的siRNAトランスフェクションによりノックダウンし、24時間後に各種フェノール類を暴露し、24および48時間後の細胞生存率をATP含量の測定により決定した。細胞および培地の代謝産物は既報に従い,HPLC電気化学検出法により解析した。
結果と考察
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系を水溶性の低い被験物質にも適用したところ,20% DMSO存在下においてアピゲニンの結合ペプチドが生成することが確認できた.本条件で水溶性の低い4置換フェノールのチロシナーゼ反応性が評価できると考えられた。フェノール類の「代謝活性化」の検出法として、ヒトチロシナーゼ高発現293T細胞を用いてオルトキノン代謝物のチオール付加体を分析する代謝物解析法を確立し、その有用性を示した。代謝活性化を「チロシナーゼ依存性の細胞毒性の発現」により検出する方法として、メラノーマB16BL6細胞のチロシナーゼをsiRNAノックダウンし検討した。また抗酸化転写因子Nrf2をノックダウンし細胞感受性を増強することに成功した。代謝物解析においてオルトキノン体を検出した白斑誘導性フェノール類の全てに細胞毒性は検出されなかったことから白斑誘発性フェノール化合物のチロシナーゼによる代謝活性化の評価には代謝物解析が優れることが判明した。4-置換フェノールではオルトキノン体のグルタチオン・システイン付加体の濃度依存的な産生が培地及び細胞で確認された。一方,4-置換フェノール構造を持たない物質は代謝を受けなかったことから,本法がチロシナーゼ依存性であることが証明された。エクオール、レスベラトロールおよびそのジメチル誘導体であるプテロスチルベンについて検討し、いずれもオルトキノン体グルタチオン・システイン付加体の濃度依存的な産生を確認した。ヒトチロシナーゼ高発現細胞を用い,オルトキノン体グルタチン・システイン付加体の産生をHPLC電気化学検出法により解析する方法は,4-置換フェノール類に広範囲に応用でき,感度,特異性ともに優れた方法と言える。ハイドロキノン(HQ)に触媒量のL-ドーパの存在下,マッシュルームチロシナーゼを作用すると,ヒドロキシベンゾキノンの生成が認められた。
結論
チロシナーゼによる酸化に続いてSHペプチドと結合させる試験系を水溶性の低い被験物質にも適用したところ,20% DMSO存在下においてアピゲニンの結合ペプチドが生成することが確認できた.0.3 mol/L 基質、0.5 mol/L DPRA (Cys)、167,000 U/L mushroom tysosinaseを50 mmol/L KPB pH6.5, 20% DMSO中で25℃で30分間反応させ、終濃度0.2%の酢酸で反応を止めてエレクトロスプレーポジティブモードのLCMSで分析する方法を提案する。白斑誘導性フェノール類の「チロシナーゼによる代謝活性化」は白斑発症の鍵と想定される。「代謝活性化」をヒトチロシナーゼ高発現細胞の代謝物解析により評価する方法を確立した。一方、B16BL6細胞でのチロシナーゼ依存的細胞毒性の発現を検出し、抗酸化転写因子Nrf2ノックダウンによりオルトキノン代謝物への細胞感受性を増強することに成功したが、検出感度と特異性において代謝物解析が優れることが判明した。白斑誘導性4-置換フェノール類に共通する代謝活性化の細胞での評価法を確立した。本評価法をサプリメントとして汎用されている化合物に適用し,メラノサイト特異的な細胞毒性を示す可能性が示唆された。さらに、HQのチロシナーゼ依存的な代謝を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202324020C

収支報告書

文献番号
202324020Z