文献情報
文献番号
200936112A
報告書区分
総括
研究課題名
褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成
課題番号
H21-難治・一般-057
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
成瀬 光栄((独)国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 内分泌代謝高血圧研究部)
研究分担者(所属機関)
- 中尾 一和(京都大学 内分泌代謝内科)
- 川村 孝(京都大学 保健管理センター )
- 山崎 力(東京大学 臨床疫学システム講座)
- 伊藤 貞嘉(東北大学 内科病態学講座腎・高血圧・内分泌内科)
- 楽木 宏実(大阪大学 老年・腎臓内科学講座)
- 平田 結喜緒(東京医科歯科大学 内分泌代謝内科)
- 高柳 涼一(九州大学 病態制御内科)
- 松田 公志(関西医科大学 泌尿器科)
- 竹越 一博(筑波大学 臨床分子病態検査医学3)
- 宮森 勇(福井大学 第三内科)
- 柴田 洋孝(慶應義塾大学 腎臓・内分泌代謝内科)
- 方波見 卓行(聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科)
- 沖 隆(浜松医科大学 第二内科)
- 岩崎 泰正(高知大学 内分泌代謝・腎臓内科・保健管理センター)
- 高橋 克敏(東京大学 腎臓・内分泌内科)
- 織内 昇(群馬大学 放射線診療核医学講座)
- 吉永 恵一郎(北海道大学 分子イメージング講座)
- 河野 勤(国立がんセンター中央病院 乳腺・腫瘍内科)
- 櫻井 晃洋(信州大学 遺伝医学・予防医学講座)
- 絹谷 清剛(金沢大学 核医学診療科)
- 田辺 晶代(東京女子医科大学 第二内科)
- 山田 正信(群馬大学 内分泌代謝学講座)
- 木村 伯子(国立病院機構 函館病院 臨床検査部病因病態研究室)
- 佐野 壽昭(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
- 橋本 重厚(福島県立医科大学 第三内科)
- 島本 和明(札幌医科大学 内科学第二講座)
- 藤枝 憲二(旭川医科大学 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
17,700,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
褐色細胞腫はその多くが良性で適切な診断と治療で完治する一方、悪性褐色細胞腫は早期診断が困難かつ有効な治療法のない難治性疾患である。本研究は褐色細胞腫の診療水準の向上を目的とし1)全国疫学調査による疾患の実態解明と2)診療指針の作成を行った。
研究方法
疫学調査は「難病の患者数と臨床疫学像把握のための全国疫学調査マニュアル」に準拠し、日本疫学会疫学研究支援事業、日本内分泌学会、「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究班」の協力を得て実施した。全国2387の医療機関の診療科合計6303を対象に2008年4月1日から1年間の受診患者数の一次調査を実施し、次いで症例のあった診療科を対象に臨床情報に関する二次調査を実施した。
結果と考察
一次調査の回収率は60%で、褐色細胞腫の推計患者数は2920名(良性2600名、悪性320名)であった。悪性例は首都圏を中心に広く全国の都道府県に分散して報告された。臨床情報に関する二次調査でも高い回収率(全施設約90%)で回答を得た。その結果、悪性でも初回診断時には副腎性(その周囲も含む)(61.9%)、単発性(78.9%)が多く、36.8%が良性と診断されていた。初回診断時の良性と悪性の臨床像は極めて類似していたが、悪性では良性と比較して副腎外腫瘍の頻度が大であった。悪性例の治療は腫瘍摘出術が最も多く、次いで化学療法、131I-MIBG内照射の順であったが、多くはこれらと骨転移巣に対する外照射も含めた集約的治療が実施されていた。また、調査結果、診断基準、診療の手順を含めた「褐色細胞腫診療指針2010」を作成した。執筆内容の標準化、客観性の担保のため、査読委員、評価委員による査読、評価も実施した。希少疾患である本疾患は診療に関するエビデンスが不十分で、今後、本調査結果を基盤に、予後の追跡、治療効果の評価、早期診断法の開発を行い、エビデンスレベルの高い診療指針に改訂していく必要がある。
結論
褐色細胞腫患者に関する全国疫学調査を実施し、推定患者数は2920名、悪性褐色細胞腫は11%であることを明らかにした。悪性例の多くが初回診断時に単発性腫瘍で、約1/3は良性と診断されていることから、初回診療後の慎重な経過観察と良・悪性の鑑別診断法の確立が重要な臨床的課題であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2010-05-28
更新日
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