文献情報
文献番号
200936111A
報告書区分
総括
研究課題名
ビッカースタッフ型脳幹脳炎の本邦における実態把握と病態解明に向けた研究
課題番号
H21-難治・一般-056
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神田 隆(山口大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 楠 進(近畿大学 医学部)
- 山村 隆(国立精神神経医療センター 神経研究所 )
- 古賀 道明(山口大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ビッカースタッフ型脳幹脳炎(BBE)は、生命中枢である脳幹を首座としておこる炎症性疾患である。年間発症者数百人単位の希少疾患であると想定されるが、BBE患者を対象とした包括的な臨床研究は世界的に見ても未だ行われておらず、患者数や実際に使用されている治療内容などの実態も全く明らかになっていない未開の分野である。BBEの国内における実態を把握し、液性免疫機序の解析、先行感染因子の解析、血液脳関門の動態という3つの側面からBBEの病態を明らかにすることを通じて治療の指針を作成することが本研究の最終目的である。
研究方法
1. 疫学調査
BBE患者実態を把握するため、全国諸施設を対象に一次調査を郵送で行った。
2.BBEの病因解明に向けた研究
a) 液性免疫の解析: BBE患者血清の病原性を明らかにすることを目的とし、以下の2つの実験を行った。①BBEおよびBBE近縁疾患であるフィッシャー症候群(FS)や、眼球運動麻痺を伴うギラン・バレー症候群(GBS)での特異的自己抗体を探索した。②液性因子に異常のある患者IgGをEAE動物に静脈投与することによるEAE症状の変化を評価した。
b) 先行感染病原体の解析: BBE発症と関連する先行感染病原体を見出すことを目的として、GBSとの関連が証明されている4種の病原体(カンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマ)に関してBBE 29例の急性期血清を用いて血清学的に検討した。
c) 血液脳関門の動態の解析: 不死化細胞株からなるヒト血液脳関門(BBB)のin vitroモデルを用い、BBE血清のBBBモデルに対する効果を検討した。
BBE患者実態を把握するため、全国諸施設を対象に一次調査を郵送で行った。
2.BBEの病因解明に向けた研究
a) 液性免疫の解析: BBE患者血清の病原性を明らかにすることを目的とし、以下の2つの実験を行った。①BBEおよびBBE近縁疾患であるフィッシャー症候群(FS)や、眼球運動麻痺を伴うギラン・バレー症候群(GBS)での特異的自己抗体を探索した。②液性因子に異常のある患者IgGをEAE動物に静脈投与することによるEAE症状の変化を評価した。
b) 先行感染病原体の解析: BBE発症と関連する先行感染病原体を見出すことを目的として、GBSとの関連が証明されている4種の病原体(カンピロバクター、サイトメガロウイルス、EBウイルス、マイコプラズマ)に関してBBE 29例の急性期血清を用いて血清学的に検討した。
c) 血液脳関門の動態の解析: 不死化細胞株からなるヒト血液脳関門(BBB)のin vitroモデルを用い、BBE血清のBBBモデルに対する効果を検討した。
結果と考察
1.BBE一次全国調査の回答は1,510機関(回答率 42.8%)から得られ、116機関では過去三年間に「脳幹脳炎」症例を経験していた。症例数は累計181例(男性102例、女性79例)であった。2. FSや眼球運動麻痺を伴うGBSではGA1とGQ1bまたはGT1bの複合抗原に特異的な自己抗体がみられた。3.NMO患者IgGをEAE動物に静脈投与することでEAE症状は増悪し、病理学的には脊髄皮質下に有意な所見をみとめた。4.4種の病原体による先行感染はBBE症例の10%でしかみられず、BBEに特有な先行感染病原体が他に存在することが示唆された。5.一部のBBE症例の血清で、血液脳関門モデル透過性亢進効果が認められた。以上より、BBEの発症には液性因子が重要であることが明らかになった。
結論
上記の成果をふまえ、BBE診断基準の策定と病態の解明、特異的治療法の開発を行う基盤が整備できた。
公開日・更新日
公開日
2010-05-24
更新日
-