文献情報
文献番号
202324017A
報告書区分
総括
研究課題名
AIを用いた医療情報の医薬品安全への活用に向けた諸要件の調査研究
課題番号
23KC1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
荒川 憲昭(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 岡本 里香(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻ビッグデータ医科学分野)
- 太田 実紀(定作 実紀)(東京大学 医学部附属病院)
- 今任 拓也(福岡大学 薬学部)
- 瀬戸 僚馬(東京医療保健大学)
- 鈴木 晶子(京都大学 学際融合研究教育推進センター人工知能研究ユニット)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、医薬品安全性監視活動(ファーマコビジランス:PV)分野での適切な人工知能(AI)の利活用の推進、医薬品の安全管理の向上に資する知見を提供することを目的とする。具体的には、PV用AIの活用に関し、(1)「 規制当局および企業活動へのガイダンスの作成に向けた調査」、(2)「医療現場におけるAI活用の調査・検討」の2つの側面から調査・分析を行う。これらの情報を基に、国内外のPVにおけるAI活用状況の把握、AI活用のための医療情報ソースの要件、AI技術の品質保証、個人情報保護等の留意点などを取りまとめ、必要に応じてAI活用のシミュレーションを実施した上で、AI活用推進に向けた課題を抽出する。
研究方法
PV分野におけるAI活用の検討状況について国際医学団体協議会(Council for International Organizations of Medical Sciences :CIOMS)のワーキンググループ(WG)XIVにおける議論の動向を調査・把握するとともに、インターネット公開情報などを通じて、海外規制当局の取り組みや、アンケートやインタビューによる国内の規制当局、企業及び医療現場のニーズや課題、文献による国内外の動向、ならびに個人情報保護に関する問題について、広範囲な調査を実施した。
結果と考察
CIOMS WG XIVでは、これまで議論されてきたOECDやユネスコ等の国際機関や各規制当局によるAIの一般原則を取り入れ、PV分野におけるAI活用に関するガイダンス案が検討されており、PVに焦点を当てた事例に基づいて9つの原則が提起されていた。米国FDAやEMAでは、PVを含む医薬品ライフサイクルを通したAI活用のガイダンスのための議論が進んでおり、個別症例安全性報告(ICSR)等へのAI活用の実践的な取り組みも進められていることがわかった。
国内動向として、PMDAでは医薬安全対策業務へのAI導入の前向きな検討が進められており、特にICSRの評価業務を支援するためのAI導入に対する期待が大きいと思われた。また、国内製薬企業に対するアンケート調査の結果、多くの製薬企業においてPV用 AIに対するニーズがあり、個別症例評価を行うための症例情報取得や症例評価の業務に対してのニーズが高いことが明らかになった。病院薬剤部門においては、副作用報告や有害事象の検出を効率化し、正確なデータ管理を支援するためのAIの登場に大きな期待が持たれていた。文献調査(PubMedおよび医中誌Web)により、最近はキーワードとして副作用情報収集システムが上位に挙がってきたことから、副作用情報収集にAIの利活用が進められていることが推測された。なお、米国からの報告に比べ、日本からの原著論文は非常に少なく、本邦におけるPV領域でのAIの活用は、欧米に比べて遅れている可能性が考えられた。
加えて、副作用因果関係評価に必要となる医療情報の調査を行い、症例報告に含まれるべき情報を明らかにした。さらにPV用AIの利活用における倫理的・法的・社会的課題として、機密性の高い患者情報の取り扱いを念頭に、データプライバシーとインフォームド・コンセント、アルゴリズムのバイアス管理と公平性の確保、説明における責任の所在の明確化など、多くの課題があることが確認された。
国内動向として、PMDAでは医薬安全対策業務へのAI導入の前向きな検討が進められており、特にICSRの評価業務を支援するためのAI導入に対する期待が大きいと思われた。また、国内製薬企業に対するアンケート調査の結果、多くの製薬企業においてPV用 AIに対するニーズがあり、個別症例評価を行うための症例情報取得や症例評価の業務に対してのニーズが高いことが明らかになった。病院薬剤部門においては、副作用報告や有害事象の検出を効率化し、正確なデータ管理を支援するためのAIの登場に大きな期待が持たれていた。文献調査(PubMedおよび医中誌Web)により、最近はキーワードとして副作用情報収集システムが上位に挙がってきたことから、副作用情報収集にAIの利活用が進められていることが推測された。なお、米国からの報告に比べ、日本からの原著論文は非常に少なく、本邦におけるPV領域でのAIの活用は、欧米に比べて遅れている可能性が考えられた。
加えて、副作用因果関係評価に必要となる医療情報の調査を行い、症例報告に含まれるべき情報を明らかにした。さらにPV用AIの利活用における倫理的・法的・社会的課題として、機密性の高い患者情報の取り扱いを念頭に、データプライバシーとインフォームド・コンセント、アルゴリズムのバイアス管理と公平性の確保、説明における責任の所在の明確化など、多くの課題があることが確認された。
結論
規制機関等の調査から、国内外を通して、PV分野では特にICSRへのAI活用のニーズが高いことが示唆され、FDAやEMAにおいては、ICSRへのAI活用の実践的な取り組みが行われており、本邦のPMDAでも、前向きに検討を進めていることが分かった。また、国内製薬業界、医療業界、文献情報の調査からも、特に症例情報/副作用情報収集、症例評価業務へのAI活用への関心が高いことが示唆されたことから、今後の本研究班で検討すべき方向性が明らかになった。
今回の国内におけるPMDA、企業ならびに医療現場のニーズ等の調査をもとに、AI活用における技術面、データソースの要件、および倫理的な課題と留意事項の整理を進めていく必要がある。併せて、今後も引き続き、CIOMS WG XIVや欧米規制当局における進捗を調査し、国際的な整合性も考慮していくことが重要と考えられる。
今回の国内におけるPMDA、企業ならびに医療現場のニーズ等の調査をもとに、AI活用における技術面、データソースの要件、および倫理的な課題と留意事項の整理を進めていく必要がある。併せて、今後も引き続き、CIOMS WG XIVや欧米規制当局における進捗を調査し、国際的な整合性も考慮していくことが重要と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2024-07-09
更新日
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