文献情報
文献番号
202324008A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症等の感染症から献血由来の血液製剤の安全性を確保するための研究
課題番号
22KC1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 義昭(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第1部第3室)
- 浦山 健(一般社団法人日本血液製剤機構 中央研究所 感染性病原体研究室)
- 大隈 和(関西医科大学 医学部)
- 野島 清子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
- 水上 拓郎(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血液製剤は、検査法の進歩によって輸血後感染症は激減し、安全性は飛躍的に向上した。その一方で気候の温暖化や森林等の開発によって新興・再興感染症が生じ易い環境にある。本研究は新興・再興感染症から献血由来の血液製剤の安全性を確保することを目的に研究を実施した。昨年度は、新型コロナウイルスの国内外での流行によって献血血液の安全性確保が課題となっていたが、今年度は5類になったため感染者数や流行状況が以前よりも把握し難くなった。この班では原料血漿プールでの新型コロナウイルスのスパイクタンパクに対する抗体価や中和抗体価をモニターし、ワクチン接種の効果や献血者の感染状況を把握できるのか検討を続ける。同時にパルボウイルスに対する中和抗体価やウイルス量も測定し、継時的な変化が血液製剤の安全性にどのように関与するのか明らかにする。また、新型コロナウイルスの中和抗体等を測定するためにはBSL3レベルの実験室が必要だがBSL2実験室で実ウイルスと同等に感染性等の評価が可能な感染系の開発も継続した。その一方でデング熱やチクングニア熱等の流行地域において新型コロナウイルス対策が優先されたことによって蚊媒介の感染症が世界各地から報告されている。国内に持ち込まれる可能性が危惧されるため輸血による感染リスクを評価する。また伴侶動物としてペットとの濃厚接触が生じており、人畜共通感染症が血液製剤を介して感染するリスクも評価する必要があると考えられる。本研究班ではWHOやCDC、各地域の感染症研究組織等や論文等から新興・再興感染症等の情報を集め、リスクを評価し、関係行政機関に情報提供を行うと共にリスクが高い感染症に対しては、血液から高感度に病原体遺伝子を検出できる方法を開発する。また、血漿分画製剤のウイルス不活化の評価は、B型肝炎ウイルス(以下HBV)の培養系を改良し、有機溶剤/界面活性剤(S/D)処理や液状化熱による不活化効率をモデルウイルスと比較検討する。また、M痘が潜伏期の感染者から検出されたことから複数のウイルス株について液状加熱や酸処理による不活化を評価し、血漿分画製剤の安全性を評価する。さらにM痘診断のための核酸増幅試薬の感度も評価する。
研究方法
・蚊媒介性ウイルスのウイルス学的特性の解析では、欧州で問題となっているウスツウイルスの病原性を解析した。また、デングウイルス の発生情報を収集した。
・国内採血の原料血漿プールを用いて抗パルボウイルスB19V抗体による中和活性と新型コロナウイルスに対する抗体価の推移を経時的に測定した。
・HBVのin vitro感染系を改良し、有機溶媒/界面活性剤 (S/D)処理や液状加熱による不活化の効果を評価した。
・BSL2での新型コロナウイルス感染等の解析のために水疱性口内炎ウイルスを用いた代理ウイルス系作成のためにSタンパクを発現する組換えウイルスを作成した。
・3種類のM痘を用いて60度の液状加熱による不活化と酸処理による不活化の効率を検討した。
・献血血液に影響する可能性のある人畜共通感染症等の情報収集とリスク評価及びその検査法の開発のために WHO、CDC、ECDC、国内の感染症発生状況、等から報告を集め精査した。また、Mpoxの核酸増幅試薬の精度を評価した。
・国内採血の原料血漿プールを用いて抗パルボウイルスB19V抗体による中和活性と新型コロナウイルスに対する抗体価の推移を経時的に測定した。
・HBVのin vitro感染系を改良し、有機溶媒/界面活性剤 (S/D)処理や液状加熱による不活化の効果を評価した。
・BSL2での新型コロナウイルス感染等の解析のために水疱性口内炎ウイルスを用いた代理ウイルス系作成のためにSタンパクを発現する組換えウイルスを作成した。
・3種類のM痘を用いて60度の液状加熱による不活化と酸処理による不活化の効率を検討した。
・献血血液に影響する可能性のある人畜共通感染症等の情報収集とリスク評価及びその検査法の開発のために WHO、CDC、ECDC、国内の感染症発生状況、等から報告を集め精査した。また、Mpoxの核酸増幅試薬の精度を評価した。
結果と考察
・ウスツウイルスは、マウスでは脳内接種で病原性があったが、腹腔内投与ではなかった。
・原料血漿プールに存在する抗B19V抗体は、B19V抗原スクリーニング検査をすり抜けたB19Vを充分に中和可能であることを明らかにした。また、新型コロナウイルスのSタンパクに対する抗体は、ワクチン接種や感染によって増加するが維持できず低下することを明らかとした。
・代理ウイルスの作成のために変異株を含めた新型コロナウイルスのSタンパクを組み込んだ代理ウイルスを作成したがウイルスは産生されなかった。
・HBVの感染性評価法を改良することで精度良く評価ができた。その結果、有機溶媒/界面活性剤 (S/D)処理では3時間処理によって検出感度以下にまで不活化された。これらは、HBVのモデルウイルスとして用いられている仮性狂犬病ウイルスと同様な結果であった。
・M痘はPBSやアルブミン溶液中で60℃の液状加熱によって容易に検出感度以下にまで不活化できた。また、酸処理によっても容易に不活化することができた。
・2022年〜2023年度はSARS-CoV-2の流行は収まりつつあるが、デングウイルス を始め様々な新興・再興感染症のアウトブレイクが確認された。中でもM(サル)痘に関しては、血中からウイルスが検出されることがあり、不活化法の評価に加えて検出試薬の精度管理を行い、充分な感度を有していることを明らかにした。
・原料血漿プールに存在する抗B19V抗体は、B19V抗原スクリーニング検査をすり抜けたB19Vを充分に中和可能であることを明らかにした。また、新型コロナウイルスのSタンパクに対する抗体は、ワクチン接種や感染によって増加するが維持できず低下することを明らかとした。
・代理ウイルスの作成のために変異株を含めた新型コロナウイルスのSタンパクを組み込んだ代理ウイルスを作成したがウイルスは産生されなかった。
・HBVの感染性評価法を改良することで精度良く評価ができた。その結果、有機溶媒/界面活性剤 (S/D)処理では3時間処理によって検出感度以下にまで不活化された。これらは、HBVのモデルウイルスとして用いられている仮性狂犬病ウイルスと同様な結果であった。
・M痘はPBSやアルブミン溶液中で60℃の液状加熱によって容易に検出感度以下にまで不活化できた。また、酸処理によっても容易に不活化することができた。
・2022年〜2023年度はSARS-CoV-2の流行は収まりつつあるが、デングウイルス を始め様々な新興・再興感染症のアウトブレイクが確認された。中でもM(サル)痘に関しては、血中からウイルスが検出されることがあり、不活化法の評価に加えて検出試薬の精度管理を行い、充分な感度を有していることを明らかにした。
結論
これら成果は献血由来の血液製剤の安全性確保のために大いに役立つと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2024-06-12
更新日
-